第55話 仲間の復活にゃ金がいるわけよ……
前回までのあらすじ!!
オレの目の前にいきなり教会と森が現れ混乱したのだが、どうやらこれもクソメイドが世界観を捻じ曲げたのが原因だった……
「(だったらさ、もういっそのことその管理人の力とやらを生かして、魔王も倒して欲しいところだよなぁ~)」
オレは言ってはいけない滅びの思惑を心の中で呟いた。
「アナタ様……ワタシにはそんな造作もないことは簡単にできますが、もしそんなことをしてしまってはこの世界の『摂理』というモノが壊れてしまいますよ。やれやれまったくこれだから、なんちゃって主人公は……はぁ~っ」
「もきゅもきゅっ」
相変わらずコイツらはオレの心の声を読解しているようだ。
「……できるのかよ」
オレは改めて静音さんの能力に呆れながら……って!?
「いやいや、オレってば『なんちゃって主人公』だったのかよ!? じゃあ正式な主人公はどこにいるんだよ!?」
「……アナタ様が何を仰ってるのかよく分かりますが……さぁっ!! 仲間を天音お嬢様と葵お嬢様のお二人をお助けしましょう♪」
「もきゅ♪」
静音さんともきゅ子は『なんちゃって主人公』であるオレの事を完全に無視する形で、両手を大きく広げまるでオペラ歌手のように「さっさと次に行くぞ♪」っと強引に物語を進めようとしていた。
「(よく分かられちゃったよ……どうするよおい)」
「相変わらず無茶苦茶な物語だよなぁ……」っと思いながらも、オレは天音と葵ちゃんを復活させることにした。うん。した。……したのだが、
「いやいや、中に誰もいねぇじゃねぇかよ! それっぽい神父とか修道女とかこの教会にはいないのか?」
オレは「中に誰もいませんね♪」っとちょい古いツッコミを入れつつ、辺りを見渡しナイスボートならぬナイスシスター一味を探してみる。
「静音さん。どうやらこの教会は無人みたいなんだけどさ……どうするの?」
中は小綺麗だし手入れもしてある。もし使われてなかったとしたら、こんなに綺麗ではないだろう。たぶん定期的に掃除をしている? ……ということはこの教会は無人ではなく、たまたま留守にしてるだけなのか? そんなことを思っていると、静音さんがオレの脇を通って教壇の前へと歩いて行った。
「うん? えっ? なんで???」
オレは静音さんの突然の行動に疑問符で頭がいっぱいになっていた。だが、静音さんの言葉で更に驚いてしまう。
「こほんっ。……さぁ迷える子羊よ。この教会に何か用でもあるのですか?」
「え、え~っと……」
オレは状況がまったく理解できず、何も口できない。
「ほらアナタ様セリフセリフ……」
「はっ?」
っと静音さんは教壇の置かれていた聖書っぽいモノをオレに見せつけ、セリフを喋るよう促してきた。よくよくその聖書っぽいモノを見ると、表紙は聖書なのだが、中身は役割やいつどのセリフを言えばいいのかなどが書かれた台本だったのだ。
「(い、良いのかよこれで……)」
っと思いつつも、そこに書かれたセリフを口にした。
「覚悟しろオーク野郎が!! このオレがオマエを……ってこれセリフ違くねぇか???」
「あっ……す、すいません。場面が違いましたね~」
ヘラヘラしながら静音さんはペラペラと聖書っぽいモノを捲っていた。
「あっ、これですね。はいどうぞ♪」
「え~っと、何々……あのー仲間を助けたいのですがー、どうすればよいのですかー?」
オレはとりあえずそこに書いてあるそのままを読んでみる。
「アナタ様……。セリフすっげぇ棒読みなんですけど。あのぉ~……もう少し真面目に演じてもらえませんかね?」
「(お、オマエに言われたくねぇよ!!)」
オレは強く握ったコブシをプルプルさせつつ、今度はちゃんと感情を籠めてセリフを言うことにした。
「あのっ!! 仲間を助……」
「はい。それならお1人様につき、10シルバーのご寄付をいただきます。そちらは2人のようですので、合計で20シルバーのご寄付になっちゃいますね~」
「…………」
静音さんから真面目に演じろと言われ、オレはすっごく真面目に演じたのにまだセリフの途中で邪魔されてしまい、怒りとも悲しみ共思えない感情から無言になってしまう。
「(アナタ様。セリフセリフ)」
「(んっ? ……って、ああセリフか)」
オレは色んな事を棚上げしながらも、自分のセリフを続けた。
「そ、そんな20シルバーだなんて!? 今のオレ達の手元には……10シルバーしか持ってないんですよ!!」
オレは力の限り役割を演じてみた。
「そうなのですか……それなら半分だけ生き返ることになりますが……どうなさいますか?」
だが、静音シスターはしれっとした態度でセリフを言う。
「は、半分……ですか!? それってどういう……」
オレは考えあぐねてしまった。要するに人を復活させるには『1人につき10シルバー』が必要になるわけだ。こちらは天音と葵ちゃんの『2人』が死んでるわけだから合計で20シルバー必要になる。だが、今の段階でオレ達の手元にあるのは……農夫の家から盗んだ5シルバーと、ブタ野郎こと王様がくれた5シルバーの計10シルバーしか持っていないのだ。
つまりその半分とは『天音』か『葵ちゃん』そのどちらか1人しか復活させられないことになってしまう。果たしてどちらを生き返らせるべきなのか……。
「うーん。天音か葵ちゃんのどちらかを選べだなんて……」
オレは腕を組みどちらか選べずに凄く悩んでしまう。
「……さてと。準備も整いましたし、そろそろお2人を復活させますかね~」
ガチャガチャ、ガチャガチャ……。静音さんが何かやってるかと思ったら、どうも復活させる準備をしていたようだ。
「えっ!? 2人も復活させてくれんの!? マジで!?」
オレはこのとき内心「1人分のお金しかないのに2人も復活させてくれるなんて、静音さんも案外良いとこあるよな♪」などと安易に喜んでしまっていた。……のだが、
「よいしょっと!」
ダダンッ!! そんな音を立て、教会の木で出来た床に穴が開いていた。
何を思ったか静音シスター、いや静音さんは武器であるはずの『モーニングスター』を手にとると、2つの棺の前へと立っていたのだ。
「な、な~んか嫌な予感がするんですけど……」
オレはこれから起きるであろう展開の予想ができてしまい、少し……いやかなり不安になっていた。
「あっそぉ~れ~っ♪ (ぶんぶん、ぶんぶん)」
オレのほぼ予想通り、静音さんはモーニングスターをぶん回し始めていた。
ビューンビューン。風切り音が聞こえ、更に勢いを増していた。
「あの……これってさ、ほんと2人を復活させる儀式か何かなんだよね?」
オレは誰に問うでもなく、そう呟いた。
「もきゅっ?」
隣にいたもきゅ子は「そうなの?」って不思議そうな顔をしていて、更にオレの不安心を煽っていた。
常に読者の予想を裏切ることだけを考えつつ、お話は第56話へとつづく。
※ウインドーショッキング=あな嫁独自の語句。口を『Д』と四角窓のように大きく開け驚く様を指す




