第49話 ア~イ・キャ~ン・フラ~イ♪
前回までのあらすじ!!
突然もきゅ子が騒ぎだし、死亡フラグを立て犠牲となって後ろのドラゴンを止めてくれるのかと思ったのだが、実際はこのオレに「犠牲になりやがれっ!」と勝手しやかに死亡フラグを立てていたのだという……
「静音さん……本気でオレだけを置いて、その……二人だけで逃げるつもりなのか? (裾くいくい)」
オレはしょんぼりとしながらも、言葉だけでありもしない静音さんの服の裾を掴んでいるのを表現して、すごく落ち込んでしまう。
「ああああ、アナタ様。そんな落ち込まないで下さいよ~」
「きゅ~っ」
そんなオレのしょんぼり具合を真剣に受け止めたのか、酷く動揺する静音さんととても悲しそうな声で鳴くもきゅ子も互いにしょんぼりとしてくれていた。
「……が、がああああっ」
パサパサッ、パサパサッ。そして何故だか少し離れた空中で後ろから追いかけてきたはずのドラゴンこと『ジズ』までも一緒に落ち込み、羽音もまるで数日経ち干乾びたパンのような食感の音を元気なく奏でていた。
「な、なんでアイツまで落ち込んでんだよ……」
襲う時には意気揚々なのにオレが落ち込むと、共に落ち込んでくれる敵役ドラゴンの『ジズ』さん。……だからどんな感性の持ち主のドラゴンなんだよ!?
オレは次第になんだか居た堪れなくなったが、「もしや……今がチャンスでは?」っと思い「そろりそろり……」とSE音をセリフとして口にしながら、すぐ背後まで迫っているドラゴンに気付かれぬようにゆっくりとロープを引っ張り坂を歩み進めた。
「…………」
(もうちょっとだけ……気付くなよぉ~、そろ~り、そろ~り……)
ギ……シッ……ギシッ! ロープを少し強めに引っ張ったせいか、棺から僅かに音が出てしまった。
「(大声)あーーっアナタ様この隙に逃げるおつもりなんですかーーーっ!? (さらに大声)アナタ様にしては、それは良きお考えですねーーーっ!! (特大大声+感情ナッシングのセリフ棒読み仕様)それならきっとーっ、あのような馬鹿で敵役のドラゴンにもきづかれませんよぉーっ!! (語尾↑↑アゲアゲ)」
「(大きな鳴き声)もっーきゅっもきゅっ!!」
「(もちろん大声)オマエらそんな大声出してどっちの味方なんだよ!? あと静音さんはなんで段々声を大きくしてんだ! crescendoでも意識してんのか! どうせそのうちフォルティッシモとかダ・カーポも出してくるんだろっ!!」
俺達は何故だか小声どころか大声を張り上げながら、音楽用語を意識して叫んでいた。
「(今世紀始まって以来の超棒読み)何を仰っているのですかー、ワタシはいつでもアナタ様の味方ですよー?」
「 (今作登場以来の超棒読み)もーきゅっー」
「それはぜってぇー嘘だよっ! だってオマエらいつもと違った『棒読みしまくってますぜ!』って馬鹿にした棒読みしてんだもん!! それと静音さんのセリフ、最後が疑問符だったよな!?」
静音さんともきゅ子の棒読みに俺は逃げるのも忘れて、ツッコミを入れるのに大忙し。本来ならばその間に逃げるべきなのだろうが、これもツッコミ役としての勤めなのだろう。
「があっ??? きょとん……っ!?(大地を揺るがすほどの叫び)ぐわあああああーーーーっ!!!!」
バサバサバサッ!!!! 最初ドラゴンはきょとんとして可愛らしい顔をしていたのだが、すぐにオレが逃げる事に気付くと同時に羽を激しく羽ばたかせ、その大きな口を開け狂ったように迫り来たのだ。
「やっべっ!? 気付かれたのか!! ……何で気付かれたんだよっ!?」
「いやいや、あんだけ大きな声を出せば誰でも気付きますって。何ボケかましてんですか(笑)」
「きゅーっ(超腹いてぇー)(笑)」
「……オマエらのせいだろうがっ!! たまにはオレがボケたっていいだろうがっ!! それと今のボケはわりと面白かっただろう!!」
オレもそろそろツッコミだけでは飽きたので「たまにゃ~ボケてみようかな♪」などとほんの軽い気持ちでボケたにも関わらず、仲間内から総スカンを食らってしまう。そして自己を正当化するため、すべったボケを自ら擁護した。
「いえ、超つまんねぇっすよ(笑)」
「きゅ~っ(笑)」
「……オマエらさっきから草生やしまくりだからな!!」
「あ~これは笑っているのではなく、アナタ様をあざ笑っているのですよ……つまり『馬鹿にしてる?』みたいなみたいな~。ははははははっ」
「きゅっきゅっきゅっ(笑)」
すっっげえ馬鹿にされまくるこの物語の主人公のオレがいる。
「オレもう本気でコイツら大嫌いだわーーっ!! っとと、ここが頂上かっ!?」
最後の掛け声と共に、いつの間にか坂の頂上まで着いていたようだ。そしてすぐさま天音の棺に飛び乗ると、坂を下る準備をする。
「静音さん! もきゅ子! 早く棺に乗っ……」
「あっワタシ達は最初から乗ってましたよ~、ね~」
「もーきゅ~っ」
「だよねぇ~!! すっげぇークソ重かったもんねー」
オレ達は一様に「ねー」っと語尾を揃えて……
「があああああっ!! ガキンガキン!!」
説明文の途中にも関わらず、後ろにいるドラゴンが「俺も仲間外れにしないで交ぜてよ~♪」っと言った楽しげに大きなお口を開け放ち、そのするどい牙の威力を見せ付けるように音を立て迫り来ていた。
「(さっきから『背後から迫り来る!?』とか言ってるのに全然来ないのはアイツの移動速度が遅いからだよな? 別に物語の尺を引っ張ってるわけじゃないよね?)」
などと件の長さについてを遠まわしにツッコミながら、オレ達は坂を下り始めた。
ガタタタタタタッ、ガタン!! ガタタタッ、ガタン! ガタン!!
「うわぁ~お~っ♪ マジかよぉ~このスピードぉうぉ~~ぅっ!!」
オレは先程とは比べ物にならない程の速さと爽快感を得て坂を下っていた。だがやはり石などが多いせいか、オレ達が乗る棺はガタガタと派手な音を立てて飛んだり跳ねたりしていた。
「アナタ様ぁ~、早い早いですぅ~!! こんな時スピードは控えめなくらいが~ちょうど良いのでは~~?」
「きゅきゅきゅ~~っ♪」
静音さんは『早い! 早いよ棺さん!!』とモブ語で諭してくれていたが、ハイテンションなオレの耳には届かなかった。
「…………がああああーっ」
オレ達の急速な加速について来れないのか、後ろのドラゴンがどんどん離れていく。そもそも人力にすら追いつけない羽力なのだから、下りで重力加速度を得ている棺に追いつけるわけがないのだ。
「静音さぁ~ん! このままならきっと振り切れるかもしれないよぉ~!!」
「果たしてそう上手くいくでしょうかねぇ~!! ……あっ! アナタ様あれを!! あれを見て下さいませ!!」
「もきゅっ?」
静音さんは何かのフラグを立てるように、これから待ち受けるであろうモノに対して指差していた。
なんとそこには農道の真ん中だというのに、ご丁寧にもジャンプ台のような石が3つも直線に出っ張っていたのだった。「あれ? ここって暴走族でも通るの?」などと思ったのも束の間、それは目の前に迫っていた!
「……もしかして、いや……もしかしなくてこの展開はぁ~っ!?」
「ですね~♪」
「きゅ~っ♪」
そしてまるで狙い済ましたかのようにオレ達を乗せた棺は吸い込まれるようにそこを目指していた!
「静音さん! もきゅ子! このままコフィン・ストリーム・アタックを決めるぞ!! 準備はいいか!!」
「了解です!」
「もきゅっ!」
ズサササササササッ!! …………バシューッ!!
3つの石>オレ達を踏み台にしたというのかっ!? x3
……その瞬間、オレは『空』を飛んだ。まるで鶏やペンギンにでもなったように、どこまでも広がるこの大空の世界を不自由に、だ。
えっ? なんで不自由かだって? ……それはこれから起きる(落下する)ことを考えると、怖くて身動き1つできないからだ!
「飛んでる! オレ空を飛んでるよ静音さん! もきゅ子!! あっ……」
そう言った瞬間、オレの右のポケットからティッシュが飛び出してしまった。
「ティッシュ! オレノガ!? ……すまん!! (ビシッ)」
オレは飛んでいったティッシュに対して、何故か主語と述語を入れ替え敬礼をしながら謝ってしまった。
コフィン・ストリーム・アタックを決めつつ、お話はなんと大台の第50話へとつづくのだった。




