第48話 ただひたすら走れっ!!
前回までのあらすじ!!
ちょい役のモブモンスターのクセに、挿絵及び『ジズ』という名前までもらった悪いドラゴンに追いかけられながら、オレは棺を引っ張り回し逃げていたのだった……
ガタタタタタッ!!
地面には泥濘やら小石やらが多い農道なため、初期微動もビックリするほどずーっと、ガタガタガタ……。っとうるさいくらいの振動と文字数稼ぎが続いていたのだ。
「ま、まじでぇっ!! ……こんなに走ったの人生で初めてかもぉ~っ!! っとと!!」
「がああああっ! ぼわっ!」
「うわっ! っとと、あっぶねーなぁ~もうっ!! って、くっそマジかよ……」
オレは辛うじて地面を転げながらも、追いかけてくるドラゴンのファイヤーボールを避けた。だが、熱風で服がチリチリと音を立てコゲていたのだ。
「(か、カスっただけでこれかよっ!! あんなのまともに当たった日にゃ即死確定事項だよなっ!?)」
そんな事を思っていると、
「アナタ様準備ができましたよ!!」
「きゅっ♪」
「……な、何のっ!?」
いきなり「準備ができた」と言ってくれたが、静音さんが何をしていたのか逃げるのに必死でさっぱり分からなかった。
「静音さぁ~ん! 何ができたっていうのさぁ~っ?」
「アナタ様もこの棺にお乗りになり、スケートボードの要領で地面を蹴り走れば、あのようなドラゴンなど振り切れるはずですよ!」
「お、オレもそれに乗るの!? 後で怒られないかなぁ~っ?」
「……たぶんすっごく怒られるかもしれませんが、今はそれどころではないでしょう!!」
「た、確かに! こちとら命がかかっているのだもん。それに比べたら怒られることなど怖くはないかもしれないね!!」
オレは叫びながら、少し走るのを緩め後方にぴょんこ♪ っと可愛らしく飛び仰けて棺に乗ることに成功する。
そうして先ほど静音さんが刺してくれた何だか分からない棒に付いたハンドルを握りしめ、左足で落ちないよう棺を踏ん張り、必死こいて地面を右足オンリーでローラースルーゴーゴーの要領で蹴りまくり逃げ出した!
その必死さと言ったら、もう1955年と1985年のスケボーで逃げるヤツに匹敵するかもしれない状況にあった。
ガラララララ~~~ッ♪
「ひゃっほぉ~~~っ♪」
勢いがつくと、ロープで引っ張っていた時には得られなかった爽快感がそこにはあった。そして尿漏れパッドでは収まりきらないほどの脳内麻薬がドッパドパっとだだ漏れで提供され、オレは楽しいやら恐怖やらでハイテンションになっていた。
タイヤもまた景気良く爽快な音を立てて回り、もはやオレを止めるモノは存在しない。
「アナタ様ぁ~命の危機だというのに~何だか楽しそうですねぇ~♪」
「もきゅきゅ~っ♪」
「ほんとだよなぁ~♪ ってそう言ってる静音さんやもきゅ子だって、すっごく楽しそうにしてるだろうがぁ~っ♪」
静音さんは被っている帽子が飛ばないよう右手で押さえ、左手にはもきゅ子を抱き抱え笑顔になっていた。
「………………がぁ~っ」
オレ達を追いかけていたbif……いや、ドラゴンがどんどん離れてゆく。ファイヤーボールなんかを飛ばしていたが、こちらにはまったく届かない。
「アイツ羽生えてるクセにおっせぇ~な! ほんとドラゴンなのぉ~?」
「ドラゴンにもぉ~、ピンからキリまでいますしぃ~」
「きゅ~~っ」
かなりの速度が出ているせいか、さっきから語尾が伸び伸び仕様になっている。……決して文字数稼ぎではないのであしからずに。
だが、そんな楽しい時間も長くは続かない。
「うげぇっ!?」
オレは目の前に広がる光景から、普段口にすることのない漫画ばりの驚きの言葉を口にするのだった。
なんと進む道の先には坂があったのだ。来る時には平坦なまっーすぐの農道だったのに、である。
「静音さ~ん、さっき来る時に坂なんかあったっけ~?」
「坂ですかぁ~? あぁ~それなら、たぶん作者の方がぁ~『あっ、ネットで良い挿絵見つけたわ。あと楽すんじゃねぇぞお前ら!』って事だと思いますよぉ~」
「きゅ~~っ」
がらららららららっ……がらがらぁっ? まるでそんな状況に応えるように、坂の傾斜のせいか次第にタイヤの勢いも語尾に?が付いてしまうほどになくなっていた。
『…………』そして、地面を蹴ってもタイヤから音がしないほどに傾斜はキツくなっていたのだ。
「…………マジで?」
「マジマジ(笑)」
「きゅきゅきゅっ(笑)」
「いや、オマエら笑ってる場合じゃねぇよっ!?」
「…………があああああっ!!!!」
まだ遠く離れてるとはいえ、後ろのドラゴンは確実に迫ってきていた。
オレはすぐさま棺から降りると、先頭に立ちロープを引っ張り棺を引き始めた。
ガ……ラッ、……ガラ……ッ。棺の重みと傾斜のせいか先ほどの勢いが嘘のようになくなり、移動速度が目に見えて遅くなっていた。
「ぐごごごごごっお~~~~っつ!! ぐがががががっ~っつ!!」
オレはまたもや棺を引っ張ることになってしまい力なき力を入れるため、まるでイビキのような音を口にしながら懸命に坂を登っていた。
「……アナタ様、もしや寝ているのですか?」
「きゅ~っ! (殴り)」
どうやら静音さんもその音がイビキだと勘違いしたようだ。もきゅ子に至っては「そんな寝ているヤツは修正してやるぅっ!」っとペチペチとオレの背中を叩きやがっていた。
「こ~の~状況でぇ~~~っ!! だ~れが~寝れるかぁ~~っと、馬鹿ヤロぅ~~っが~~っ!!」
オレは文句たらたらにしながらも、懸命にロープを引っ張る。
もしもこんな状況で寝れるとしたら……それは永遠の眠りになってしまうだろう。
「うーんそこいら辺りに、肥料を積んだ台車でもないですかねぇ~? (キョロキョロ)」
「きゅ~っ? (キョロキョロ)」
静音さんともきゅ子は何故だか『肥料を積んだリヤカー』とやらを探していたのだった。
「肥料がぁ~、今必要なのかよお~っとっ!!」
オレはそんな言葉を口にしながらも、ロープを引っ張る。引っ張るっ! 引っ張るぅぅぅぅっっっ!!
「いや、上手く利用すればあの勢いのまま肥料に突っ込ませる事も可能なのでは? っと思いまして……」
「きゅっ!」
「そ~~んなご都合しゅ~ぎはぁ~、映画のぉ~~っ中ぁっ、だけだぞぉ~~~っと!!」
オレは静音さん&もきゅ子のそのアイディアを蹴飛ばし、セリフ伸び伸びで必死に返答する。
「もきゅっ! もきゅもきゅもきゅっ!!」
そして突如としてもきゅ子が騒ぎ始めた。
「な、なんだよ突然!? ほんとに肥料のリヤカーでも見つけたのか???」
「えっ? で、ですが……本当に良いのですか? それは噂に聞く『死亡フラグ』というやつですよ!?」
「(し、死亡フラグ……だと!? もしかして、もきゅ子が『ここは私に任せて先に行け!!』とでも言ったのか?)」
オレはもきゅ子が口にした言葉が気になり、静音さんに問いただす。
「し、静音さん! もきゅ子は何て言ったんだ!? もしかして……」
「え、ええ……。アナタ様が今お考えのとおり……です」
「マジかよ……もきゅ子」
「……もきゅっ! (ビシッ)」
もきゅ子はまるで根性の別れのようにオレに対して敬礼をしていた。
「もきゅ子。本当にありが……」
「さあっ、アナタ様っ!! 心の準備ができましたら、そこらにぼへぇ~っ、などとアホな子のように口をдとあんぐり開け放ち、突っ立ってて下さいね! あとは後ろから追いかけてくるドラゴンが頭から足首あたりまで、ガブリッと食してくれるはずです! その隙にワタシともきゅ子は全速力で逃げますので! よろしくお願いいたします」
「もきゅっ!」
「……to?」
(い、今さ静音さん何って言った? Q.もしかして「オレを置いて逃げる……」とか言わなかったよな?)
A.言いましたね(笑)
オレは受け入れられない言葉を耳にしてしまい、相も変わらず「とう」を「to」と良き発音してしまうほどに動揺していた。
「……このオレっすか?」
「……アナタ様っす(笑)」
「……きゅ~っす(笑)」
同時に草を生やされ、ダブル指名を受けてしまうほど大人気の主人公このオレ。
「相変わらずオレが犠牲になるのかよ! あとそれになんで、オレの足の部分だけ絶妙に残しやがるんだよ!? そんなの道の真ん中にあったら、通りがかりの人が『ここで自殺したのかなぁ~?』って思っちゃうだろうがっ!!」
「もちろんですよ! アナタ様は何を仰っているのですか!! そもそもあのbef……じゃなかったジズというドラゴンは、最初からアナタ様しか標的にしてないのですよ! 犠牲になるならアナタ様しかいないでしょうが(笑)」
「きゅっきゅっきゅっ(笑)」
クソメイドと悪代官のように笑い草生えまくりのクソドラゴンにディスられまくる主人公のオレ。……そんな小説前代未聞だわっ!!
主人公の足だけを農道の真ん中に残しつつ、お話は第49話へとつづくであります(ビシッ)




