第43話 これが今風の棺なのか?
前回までのあらすじ!!
オレは教会までの農道を延々歩いていたのだが、どうやら道に迷ってしまったようだ。クソメイドが言うにはそもそも最初から逆方向へと進んでいたらしい……。
それを早く言いやがれ!! 「(急急)ええもちろんですよそもそもアナタ様は……」だから早口じゃねぇっての!! あらすじにまで強引に捻じ込むだなんて、どんだけそのネタ引っ張る気なんだよ……ったく。
「さっアナタ様。早くしないと、この炎天下ですのでお嬢様方が腐ってしまいますよ!! ほ~らぁ~いつまでも自分の行いを悔いてないで、さっさと教会まで引っ張り下さいね♪」
「ヒロインが腐るだなんて言葉、初めて聞いたわ……ただし、腐女子を除いてだけどなっ!!」
オレは読者の心理を読み、先読みツッコミを入れてみた。
「???」
だが、静音さんは「えっ? 何言ってるのこの人は?」っと不思議そうな顔でオレを見ている。
「……い、いっその事笑ってくれよ!! むしろその反応の方が悲しいだろ!!」
オレの新作先読みツッコミは、静音さんの不思議そうな顔で消失させられてしまったようだ。
「あの……アナタ様。急がなくてもよろしいのですか?」
「……そうだね。早くしないと腐るよね……」
この炎天下なのだ、既に腐っていても何ら不思議ではない。そもそも葵ちゃんなんて随分時間(体感では数時間ほどだが、執筆的には数ヶ月)が経っているのだから既に……いや、怖い考えはよそう。そんなことは教会の神父共がなんとかしてくれるはずだ。……してくれるよね? まさかまさか、意表を突いて拒否ったりしないよね?
オレはそれを考えると怖くなるので考えるのを止め、諦めて来た道を戻ることにした。
「また数時間コースかよ……」
オレはロープを引っ張り、円状に周ると再び棺を引っ張りながら歩いていく。
ズサーッ、ズサササッ。ズサーッ、ズサササッ……。
小鳥の囀りと共に棺を引っ張る音だけが辺りに響いていた。まるで世界がその音だけのような感覚に陥ってしまう。
「(……いや、オレと静音さんもいるけどね。……静音さんいるのよね?)」
オレはちらりと後ろを見ると、今度はちゃんと自らの足で歩いていた。
「(何でわざわざルビ振りで、静音さんがただ歩いている文字描写を強調せにゃならんのだろうなぁ……)」
静音さんが歩いている。ただそれだけだったが、先ほどの蛮行を鑑みれば至極当たり前の事だろう。
「(……だよねー。さっきなんて天音の棺の上でお茶してるくらいだもんねー)」
オレはまるで本文説明文と会話するように、そんなことを心の中で声にしていた。
「あーマジかぁー。何で異世界に来てまで苦労せにゃならんのかね……」
誰に言うでもなく、文句を言ったが歩みは止めない。いや、止められないのだ。何故ならオレにとって天音は婚約者である、そして葵ちゃんは義理の妹にあたるのヒロイン共を死んだままにしておけるわけがなかった。
「(あと元の世界に戻りたいし、そもそもオレは主人公なんだからこの3人のヒロイン達とイイ事もあるだろうしな!!)」
オレはそんな邪な思いを抱きつつ、棺を引きずる。
「(ふふふっ。きっと宿屋に泊まってたりして、読者念願の入浴シーンなどに遭遇できるかもしれないし、きっと夜も1つのお部屋できゃきゃうふふワールドが待ち受けていたりも……ぐへへっ)」
オレはこれから起きるであろう『今夜はお楽しみですね♪』イベントを考えるだけでぐへぐへっと不気味な笑いをしてしまう。
「あ、アナタ様……」
「……っとと。な、何かな静音さん? キリッ」
「いえ、アナタ様が何やら楽しそうにしていらっしゃったので……あと、その……心の声漏れてますよ」
若干引き気味に静音さんが声をかけたくれた。どうやら、心の声までジャボジャボ漏れていたようだ。
「……だ、大丈夫なのですか?」
「あ、ああ!! 大丈夫!! よっしゃイッチョ頑張りますか♪」
静音さんの引きをかき消すように、オレは気合を入れなおして棺を引っ張った。……のだったが、
「……はぁはぁ。こ、これは無理じゃねぇ……」
だが、オレのやる気とは裏腹に体力は正直者で、数分もせずに息が切れてしまい今にも死にそうになってしまう。
「(こ、このままだとオレin棺になっちまうぞ……)」
さすがにそれはマズイ。もしそうなったらもう……静音さんの独壇場になってしまうではないか!? オレは打開策を考えつつ、静音さんへと話を振った。
「あのさ、静音さん。何か良い方法ないの? このままだと教会まで無事に辿り着けない可能性もあるんだけど……」
オレは打開策と言いつつ、そんな弱音を吐いてしまう。
「ああ……ちゃんとありますよ」
「……そっかぁ~。やっぱりあるのかぁ~……」
(そんな都合の良い方法が…………あったーっ!!)
「いやいや、マジであったの!?!? そして何故それを言わない!!」
「そりゃ~ありますよ。こんなクソ重い棺を人力で引っ張るだなんて正気では出来ませんし。それにアナタ様から聞かれませんでしたし……」
「なんだその、役所で補助金申請に自ら出向き職員に詳細を聞かないと教えてくれないような枕言葉わっ!?」
だがしかし、クソメイドに文句を言っても何も始まらないのはご承知の通りなので、続きを促すことに専念する。
「……えっと、どんな方法があるの?」
「ちょっと待って下さいよ……」
そう言うと静音さんは足元の方、つまりは棺の下の方へ歩いて行った。
「確かこの辺に……」
「……なにしてんの???」
静音さんは棺を触り何かを探しているようだが、オレには何をするのか分からない。
ガチャンガチャン、ビーーーーッ。
「……な、何の音だ???」
突如として聞こえてきた正体不明の機械音にオレはきょろきょろっと周囲を見回してしまう。
「あっやっぱりこのボタンで良かったんですね」
「へっ? 今の静音さんが何かしたの? ……ってかこの音は???」
「アナタ様下をご覧下さい」
「はぁっ? 下ぁ~?」
静音さんが棺の下を見るようにと促した。
「棺の下に一体何があるって……ってなんじゃこりゃ!?」
そこには信じられない光景第2弾が広がっていた!!
なんと棺の下には変な支え棒みたいなのが4本飛び出しており、棺を地面から浮かせていたのだ。
「し、静音さん……これは一体?」
「まぁまぁ、そのまま見てて下さいな♪」
そう静音さんが言うと、棺下の四方がカパリっと開き、中からは小さなタイヤのようなモノが出てきた。
グィーーーーーン。そうして地面にタイヤが接地すると、支えていた棒が引っ込み始めた。
「……これ何???」
オレはそれの正体が分かっていたが読者への説明の為、静音さんに聞いてみることにした。
「アナタ様知らないんですか? これはタイヤですよ。これがあればラクに棺を引けますよね~」
「あーうん。そうかもねー」
オレは生返事をし、棺をノックをするように叩いてみた。
コンコン……キツネの鳴き声のような反射音だが、明らかに木とは違う金属の軽い音がした。
「静音さん……これって『木』じゃなかったの?」
「えっ? 誰が木だと言いました? これは燃えにくいことで有名なチタン合金で出来た棺なのですよ。しかもハイテクですよ、ハ・イ・テ・ク♪」
「マジかぁ~……だからクソ重かったんだな……。そもそも棺にハイテク機能とかいるのかよ……。これってさ燃やしたり土にそのまま埋めたりするんだろ? なのに燃えにくくしてどうすんだよ……」
もうツッコミ所が満載だったので、突っ込む気力がなくなっていた。そんなオレに対して静音さんは、
「それではアナタ様、これをどうぞ♪」
「……はっ?」
静音さんが手渡してくれたのは……ハンドルだった。
「……わ~おっ♪ 嫌な予感がビンビンしてきたぜ♪」
オレの第7感はビンビンになり、もういつでも発射できる態勢に入っていた。
「さっアナタ様、お早くせねばお嬢様方がマジで腐りますよ……」
そう言いながら静音さんは自分が持っていた魔法の杖みたいなもの……いやたぶんモーニングスターを天音の棺の上の方へとぶっ刺したのだ。
「あらよいしょっと、これで準備が整いましたね。ふぅ~っ」
「……おいおい、大丈夫なのかよ」
オレは死んでいるはずのメインヒロインこと、勇者天音の心配をしてしまう。何故ならあの部分の下には天音の顔があるはずだから……
「さっ、アナタ様お早くコレに乗ってくださいませ!!」
っと静音さんが天音の棺の上に乗ると「オマエも乗りやがれ!」っと言ってきた。
「大人2人乗ってもだいじょ~ぶ?」
「はい、10人乗ってもだいじょ~ぶ? ですので♪」
オレは遠慮しつつも、天音の棺に足をかける。
ギシッ……ミシッ。やはりというか嫌な音がしたのだったが、どうやら乗っても平気のようだ。
「(そもそも、棺の上に乗ってもいいのか?)」
っと疑問に思っていると、
「さっ、アナタ様。先ほどワタシが手渡したハンドルをその棒だかなんだか分かんないのに付けて下さい。そうすればすべての準備が完了いたしますよ♪」
オレは静音さんに言われるがまま、杖だがモーニングスターだか分からん棒に丸っこのハンドルを付けた。
すると、ドドドドッ……。っと謎のエンジン音が聞こえてきた。
「あのさ……静音さん。もしかしなくてもこの棺エンジン付きなの?」
「イエス!! 今話題のツインターボ+スーパーチャージャー付きなんですよ♪」
……棺にそんなもん付けんじゃねぇよ!! 排気ガスと車軸から動力得てんのかよ。
ツインターボ+スーパーチャージャー付きの棺に乗りつつ、お話は第44話へとつづく。




