第41話 やっぱり現実《リアル》はゲームのようにはいかないな……
前回までのあらすじ!!
オレと静音さんは魔王を倒した暁には『王様を襲撃する』という共通の目的を得たことで、40話目にして初めて意気投合したのだった。
こんなんでこの物語は本当に大丈夫なのだろうか……
「静音さん。オレも前回はノリで言っちまったけど、こっちは腐っても勇者一行様なわけだよね? 一応は魔王とやらを倒して『英雄』になる予定なのに、王様を含む住む城なんかを襲撃したら、マズイんじゃ……」
オレは1話挟む事により冷静となり、いくらムカついたからと言って『王様襲撃』はさすがにやりすぎだと考えた。それにリスクがデカいのに対して、メリットがまったく何もないことも要因の1つとなった。
「アナタ様。……アナタ様はお優しいのですね~」
静音さんは優しげに目を細めながら、オレが今更になって怖気づいたのを『優しさ』と勘違いしていた。だが話が拗れるので、あえては否定はしなかった。
「いや、オレが優しいとかじゃなくてさ……」
「それでは、こうお考えになったらいかがでしょうか? 例えば相手が『王様』という認識だからいけないのです! いっそのことブタ野郎だと思えば良いのですよ。極悪非道人畜無害のオークと、ね」
「(……なんか色々と静音sなn言ってたけど、結局王様は無害じゃねぇかよ!)」
そもそも相手は少ない金額(子供の小遣い程度)とはいえ金をくれたのだ。それに相手はこの世界の『王様』なのだ。媚びへつらい寝首を掻く予定だったとしても、一応は敬うべき相手なのだ。オレはどうすれば静音さんの怒りを静められるかを考えていた。
「うーん……」
オレは唸りながら考えたが、何も思いつかなかった。
「アナタ様……まだお悩みなのですね。……それではこうすればいかがでしょう? 今の王様を魔王へと設定変更してしまうのです。そうすればアナタ様も気兼ねすることなく殺れますよね♪」
「なるほど。確かにそれは良いアイディアだよね……じゃねぇよっ! 危うく納得して殺る気満々になるとこだっただろ!! そもそも勝手に設定変更しちゃダメでしょうが! そもそもそんなことできるのかよ!?」
オレは危うく王様を襲撃して、逆賊になるところを理性とツッコミ補正で盛り返した。
「えっと、ダメ……でしたか? このワタシが一声かければ、二つ返事でブタ野郎も喜び狂いながら『魔王』になるよう納得も設定もさせられますのに……」
「いや、そんなしょんぼりした顔をしても……って、そんなこともできるのかい!? アンタ、一体何者なんだよ……」
※主人公は1度死んでますので、自動記録地点以後の記憶は引き継いでおりません。
「アナタ様お忘れですか? ワタシはこの世界の管理人なのですよ! えっへん♪」
静音さんは自分のチート設定をフルセクションで活用できることを自慢し、無胸をめぇーーーーいっぱい張り偉ぶっていた。
……でも悲しいかな、静音さんのお胸はちっとも出っ張ってくれていなかったのだ。
「(何故だろう……静音さんの(自称)お淑やかと囁かれているお胸様を見ていると、自然と涙が溢れてきてしまう……)」
オレは「下手すりゃ自分の方が胸囲あるのかな?」と思ってしまい、目から冷たいモノが流れ出し自らの乾いた頬を潤してしまう。
「もうアナタ様ったら♪ 泣くほどそんなにワタシの悩殺ボデーが気になるのですね♪ アナタ様も男の子なんですから♪ キャッ♪」
静音さんはオレの熱い視線に気付くなり、恥ずかしがりながらもより胸を張り、その悩殺ボデーとやらを自慢気にしている。
オレはより静音さんの胸に熱い視線を送るざろうえなかった。何故なら文字ばかりで挿絵がない読者の方々は気づいてないだろうが、恥ずかしがりながら胸を張ってポーズを決める静音さんの背後には「ワタシの胸に注目しやがれ! さもないと撲殺すんぞ……」っと書かれた立て札を持ったクマが立っていたのだ。
「(カンペ持ち)」
「(撲殺とか怖すぎんだろ……ってかクマ公よ、アイツ森に帰ったんじゃなかったのか……)」
オレは静音さんの足元にあるモーニングスターに恐怖しつつ、強引に話を本題へと戻した。
「えっとさ、王様のことは魔王を倒してからにしない? まずは天音と葵ちゃんを復活させるのが先決だとじゃないかと思うんだけど……」
オレは王様襲撃予定を棚上げして「まずは物語進めてみてから考えない?」っと静音さんに提案した。
「……まぁアナタ様がそういうなら……仕方ありませんね……」
その三点リーダーの使い方どこか含みがあるようで、すっげぇ怖いっす!!
そしてオレはあな嫁名物・棚上げ放置理論を構築して、今回第41話のメインである話を進めることにした!!
「それでさ静音さん。仲間を復活させるには教会に行けばいいんだよね?」
「ええそうですよ……」
「ほっ」
(よかったぁ~。静音さんもとりあえずは納得してくれたんだ♪)
オレはまだ含みがある静音さんの三点リーダー使いを放置しつつ、天音と葵ちゃんの棺を見つめた。静音さんも棺を見ていた。
「……」
「……」
(……あれ? 何か会話続かないんですけど。……どうする?)
『静音さんと会話が弾まないので、選択肢を選んでください』
『とりあえず、教会を目指そうか』無難な選択。
『あれ? 自動で教会には行かないの???』すっ呆け
『静音さんも入りたいとか(笑)』逆に入れられます(笑)
『では、ここは選択肢であるワタシが3の…』
「し、静音さん!! RPGとかって死んだら自動で教会とかに飛んで行ったりしないの!!」
オレは選択肢が勝手に危険なのを選ぶ前に2を選んだ。すると……
「えっ? ああ……でもあれはパーティ全が全滅した場合のみですよね? アナタ様は全滅……したいのですかね?」
そういう静音さんは自分の武器であるモーニングスターを手に取るとわざとらしくも鎖をジャラリッと鳴らして、今にもぶん回す体勢をとろうとしていた。
「い、いやいいよっ!! オレ今日は何か棺を教会まで引っ張りたいお年頃だからさっ!!」
選択肢を間違えたオレは慌てて言い繕い、仲間から全滅させられるのをなんとか回避した。
「……そうですか。それならばお一人で天音・葵両お嬢様の棺を二棺、教会まで引っ張っていかれるのですね」
「…………ま、マジぃ?」
あぁ~そうゆう展開図ですか。まさかオレ一人で棺を2つも引っ張らにゃいけんことになるとは夢にも思わなかった。
「ま、RPGなどでは生き残った最後の一人が最大3人分の棺を引っ張ったりしますしね~」
「あーうん知ってるー。でもこれはゲームじゃないんだよねー」
オレは現実逃避したくて、語尾を延ばすアホな子を演じようとするが、
「それでは教会までお願いしますねアナタ様♪ これロープですので……」
そそくさと静音さんから棺を繋ぐロープを手渡されてしまい、退路を絶たれてしまう。
「あ、ああいいさ!! オレは男の子だから一人で棺を2人分だろうと3人分だろうと、教会まで引っ張っててやるさねっ!!」
オレは半ば逆ギレのように「男の子だから!」っと強調してから、棺同士をロープで繋ぐことにした。
「でも……どうすりゃいいんだこりゃ???」
静音さんからロープを手渡されたはいいが、そもそもどうやって繋ぐか問題が発生していた。
「あっ、それなら棺の頭と足元の方に引っ掛けるフックがありますので、そこに通せば2つを連結できますよ」
静音さんは手伝いはしなかったが、アドバイスとロープを短く切るナイフだけは貸してくれた。
「(……そもそもこの棺って、最初から仲間が何人も死ぬこと前提で作られてるのかよ。それはちょっと駄目すぎやしないかい?)」
オレは現実の厳しさと棺を作った職人の配慮に感謝しつつ、静音さんの指示通りナイフでロープを短いロープと長いロープとに切り別けた。まずは棺の先頭を天音、そして後ろを葵ちゃんの棺に並べることにした。幸い2つは近くにあったので、苦労はせず……いや、実は苦労しました。なんせ女の子とはいえ人間一人プラス木で作られた棺の重量が加算されるのだ。その重量は軽く5~60キロはあるのだろう。棺の足の部分を引っ張ったり、頭の方を持ち上げ引きずったりしてなんとか2つを並べる事に成功した。
そして天音の棺の足元のフックと葵ちゃんの棺の頭部分のフックへとロープを外れないよう、しっかりと短めにしてから繋ぎ留め連結させた。これが長いと引っ張る途中でロープが垂れたりして、どこかに引っかかったり、また引く力が余計にかかってしまうのだ。
そうして天音の棺の頭部分のフックは自分で引っ張り易いよう長めのロープを輪っか状にした。これで準備が整った。あとは教会まで一人で引っ張るだけだ。
それまで傍観していた静音さんに対してオレは「もしかして、なんやかんや言ってても引っ張るのを手伝ってくれるんじゃないか……」と謎の期待をしていた。
そんな期待をしてちらっと静音さんの方を見たのだったが、当の静音さんは「ふぁ~。だるぅ~っ」などと退屈そうに欠伸をし明後日の方向を向いて素知らぬ感じでその場に佇んでいた。
「(おいおい……コイツマジで手伝わない係なんですか?)」
文化祭などでクラス単位の行事で、1人や2人は『何も手伝わない係』がいるものだ。まさに静音さんはその典型的係ともいえよう。
オレは静音さんの態度に呆れながらに思いつつも「まぁ静音さんだしね……」っとまたもや謎の納得をしてからロープを一人で引っ張ることにした。
……したのだったが、
「……クッソ重っ! なんだよこれ!! こんなの一人で引っ張れんのかよ……」
そのあまりの重さからオレはそんなことをボヤいてしまう。
「あ~女性の対して『重い』って言葉は厳禁なんですよ~(ふぁあ~っ)」
「いや、確かにそうなんだけどね。でもさ、この重さはヤバイって……」
すっげぇのんびりした感じで欠伸をしながら、静音さんがオレのボヤ気に突っ込む。オレは静音さんに重さを確かめてくれと言わんばかりに、ロープを差し出すのだったが、
「あっ、ワタシはいいですよ。結構です。基本金にならないことはしない主義なので……」
などと自らの守銭奴ぶりをアピールして引っ張るどころか、重さの苦労さえも拒絶されてしまう。
「……あのさ静音さん。静音さんって、一応はこの二人のお世話係なんだよね? ならちょっとはお手伝いしてみる気はございませんか?」
オレはやんわりと言葉を選びに選び「オマエも引っ張りやがれ!」っと主張するのだったが、
「ええそうですよー。でももうお二人とも亡くなってますしねぇ~」
っと言いオレの申し出を拒否する。
「(……えっ? それだけ??? おいおいヒロインがそんなんでいいのかよ……)」
っと思ったが、言っても手伝ってくれそうもないのでオレ一人で引っ張ることにした。
ズササッ、ズサッ……。少しずつ引きずりながらではあるが着実に、オレと棺2つは教会までの道のりを進んで行く。
「くっそぉ~っ!! げ、ゲームだとぉ~、いとも簡単そうにスイスーイ♪ とかって棺を引っ張りやがってぇ~か~ら~にぃ~っ!!」
オレは棺2つのクソ重さからゲームの楽さに文句を付け、全力でロープを引っ張る。だがやっぱり現実はゲームのように簡単にはいかないのが常のようだ……。
現実とゲームの違いを実際に体感しつつ、お話は『第42話 それを早く言いやがれ!!』へとつづく。




