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あな嫁~あなたの目の前に野生のお嫁さん候補(お嬢様)が現れた!!入力コマンドは!?……だがしかし、コントローラーにシカトされてしまったようだ。~  作者: 立花ユウキ/scarlet
第3章本編『そして、長い旅の始まり……』

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第38話 勇者死すとき……

「んっ…んっ……こ、ここは???」


 そしてようやく魔神サタナキアの呪縛から解き放たれたのか、天音が19話ぶりに意識を取り戻した。キョロキョロと辺りを見回し状況を確認しようとしている。


「あ、天音大丈夫か!! オマエは剣に……いや魔神に意識を乗っ取られていたんだぞ!!」

「……あ、ああ……覚えてる。そのことをちゃんと覚えいるぞ……」


 天音はまだ意識がはっきりしないのか、繰り返し同じことを言っていた。だが、サタナキアに意識を乗っ取られていても記憶は残っているようだ。


「(……にしても、天音のヤツもすっごい長期間意識を乗っ取られてたな~。オレとしてはこのまま物語が終わるまで、意思を乗っ取るのかと思ってたけど……)


 どうやらオレのその心配は杞憂に終わったようだ。


「それにしても、魔神の呪縛から逃れるのは剣を鞘に収める以外にも方法があったのか……」


 そうポツリと疑問を口にすると……


「あっ、どうやらこれは作者さんの後付設定のようですよ。ぶっちゃけこのシリアス展開を早く終わらせ、次のお話に行きたいみたいですし……」


 などと静音さんがネタバラシも兼ねて補足してくれた。


「…………だからそれを本編中にバラすんじゃねぇよ」

(『設定』『設定』と本編中にも関わらずバラすなんて、どんだけ自由な作風なんだよ……ったく)


「はい、天音お嬢様……冷たいお水です。これをお飲みになってください」


 静音さんはどこから取り出したのか、天音にペットボトルに入っている水を渡した。

「ああ……静音か。……ありがとう」


 ごきゅごきゅ……っと喉を鳴らし、500mlはあろう水を一気に飲み干してしまう。


「ぷっはぁ~……ふぅ~……冷たい水のせいか、やっと頭がはっきりとしてきたぞ!」


 天音はお水を飲んで、ようやく正気に戻ったようだ。


「静音そなたの気遣い大儀であるっ! 褒めて遣わすぞ、褒美にそなたにはコレを授ける! ほれ、もっと我にちこう寄るがよい……ドヤ!」

※訳:しずぽん冷たいお水ありがとう。美味しかったよ。ところでこれ空になっちゃったけど、捨てておいてくれる?


 天音は空になったペットボトルを静音さんに手渡そうと近くに呼び寄せ、ドヤ顔を決めつつ何故か腕組みをし始め、謎の偉ぶり(=偉そうな態度)をしていた。


「ははっ! 拙者感謝感激の極みに至り(そうろう)……ぶふっ…(くくくっ)あっとと、……あとでゴミ箱に捨てておきますね♪」


 っと静音さんは賞状を受け取る時のように、頭を下げつつ両手で丁寧にペットボトルを受け取った。

「(なんで互いに古風なやり取りなの? も、もしかしてこれがフラグとなって、そのうち戦国時代にでも飛ばされるんじゃないだろうな。あとだからさ静音さん、全然笑い堪えてないって。どうせやるなら最後まで通そうよ……)」


 そんなことを思っていると、静音さんが口パクでオレに合図を送ってくる。

「(えっ~と、何々……コノ、ペットボトル、イリマスカ? ……だとっ!?)」


 更にペットボトルの口を舐めるようなジェスチャーと共に口パクをした。


「(何々……イマナラ、カンセツキス、デキマスヨ……だと?)」


 オレがその合図を解読しているうちに、更にスッ右人差し指を1本を立てた。


「(イチ? ……って1万かよ!! 高っけぇなおい!!)」


 オレはその値段の高さから首と右手を横に振り、「無理無理いくらなんでも高すぎるよ……」っと合図を送ると今後は左指を1本、右手を2本挙げた。


「(イチとニ? ……1万2千!? なんで上がってんだよ!!)」


 オレは左指を5本、そして右指を3本足し、右指3本を叩きながら8つまり「8千が妥当だ!」と言い張る合図を送った。


「…………コクリ」


 そして『8』で納得したのか、静音さんは頷くと再び口パクして「本日は8万円でお買い上げありがとうございます」っと言ったように高級デパートの従業員のように手を前で組み、深々とした丁寧なお辞儀をした。

 オレはてっきり8千だと思っていたのだったが、後日静音さんから8万円も請求されようとは、この時夢にも思っていなかったのだった……。



「……あのキミたち、さっきから身振り手振りで何をしてるんだ?」

「「あっ!」」


 オレも静音さんも同時に、天音のその言葉で今のこの状況を思い出した。そもそもオレたちは何をするんだっけ???

 長い長いほんっとぉーに長い件から、オレは本来の目的を忘れてしまっていた。


「キミ……まさか忘れたんじゃないだろうな!? いいか私の妹が……葵が殺されたのだぞ!!」

「……っ!?!?」

(やっべ、すっかり忘れてた! 大体それはいつ振りの話なんだ???)

※約14話(67日)ぶりのお話です


「あ~確かそれで、天音お嬢様が敵である『農夫アルフレッド』と『野生のクマB』を倒すべくして、伝説の『聖剣フラガラッハ』を抜いたのでしたよねぇ~(正直そんなのすっかり忘れてましたよ……)。アナタ様! アナタ様は義理とはいえ妹である葵お嬢様を殺されて、何故そのような大事な事をお忘れになっているのですか!? 人としての恥を知りなさい、恥を!!」


 静音さんもオレと同様その事を忘れていたにも関わらず、お得意の『自分棚上げ(たてまつ)り理論』を構築しながら、すべての責任をオレへと移行することに成功した。


「オレへの扱いが、今作最大級に酷すぎんだろうが……」


 この第37話の内容について作者に苦情を言いたかったが、そもそもまだ本題に入っていなかったので、やめといた。


「ふわぁわぁ~~……うーん、ようやくオラ達の出番がきたんべぇ~」


 敵役の農夫アルフレッドは家のすぐ外にも関わらず、草木が生える地面に布団を引いて寝ていたのだった。


「(しかもご丁寧にちゃんとパジャマに着替えてやがるしな!)」


 見ればアルフレッドは青を基調とし、色んな野菜が描かれている上下お揃いのパジャマを着ていた。しかもその隣にはクマBもいた。……ってかまだ寝ていた。


「ほれ、クマB。仕事だべ。おきろおきろ……」


 ユサユサっとアルフレッドがクマBを揺すり、起こそうとしていた。


「??? (キョロキョロ)」


 クマBは寝ぼけているのか、状況を確認するため辺りを見回していた。


「(……今すっげぇチャンスじゃねぇのか?)」


 オレは奇襲をするチャンスだと思い、先制攻撃をしようと思ったのだが……オレの武器は『自称無線(ワイヤレス)コントローラー』だったのを思い出した。


「(そもそもこれは武器じゃねぇよな? 攻撃できないし……)」


 ほんと今更ながらに再びそのことに気付いた。だが、同時に別のことにも気付いた。それは武器を持っている人にその事を言えば良いだけのこと。そう思いオレは勇者である天音に進言する。


「(天音天音! 今アイツら隙だらけだから、攻撃したらいいんじゃないか?)」


 ヤツらに悟られないよう、小声で天音に進言したのだが、


「(何を言っているんだキミは! コイツらも敵役とはいえ、今の今までずっと(何ヶ月も)待っていてくれていたのだぞ。しかも私たちの都合で、だぞ! そんなことできるわけがないだろう……)」

「ぐぬぬっ……」


 天音の正論すぎる正論にまったく反論の余地がなかった。


「ほら脱いだらちゃんと畳まねぇと後で叱られんべ」

「(コクコク)」


 アルフレッドとクマBはパジャマを脱ぎ丁寧に畳み、地面に敷いていた布団なども丁寧に畳み始めていた。


「(おいおい……このチャンスを逃すのかよっ……オレだけでもやっちまうか?)」


 そんなゲスい事を考え、そこらにある木や石など武器になるモノはないかと探そうとするのだったが、


「いつまでかかっているのですか!! そんなにモタモタしていると、誰かに先制攻撃されてしまいますよ!!」


 っと何故の空気感を醸し出したのか、それとも偶然にも静音さんがオレの心情を察したのか、余計なことを言ったせいでせっかくのチャンスを逃してしまった。


「そ、僧侶様すみません。……っと私共の方は準備できました! クマBもできたよな?」

「(コクコク)」

「(相変わらず静音さんには標準語なのかよ……)」


 敵のおっさんらの準備が整うと、天音は名乗りをあげる!


「では……こほんっ。よくも私の妹である葵をやってくれたな!! 勇者である私がこの『聖剣フラガラッハ』で成敗してくれる!! 葵の仇め覚悟しろよっ!!」

挿絵(By みてみん)

 そして天音は剣を抜く動作を…いや、既に抜いて右手に持ってあるのを忘れてたのだろう「あっ、既に持ってたわ」という表情をしてから、しれっと右手の剣を掲げそっと左手をそえて両手で持ち、ようやく攻撃態勢に入った。


「(オレさ、そんなドジな天音さん大好きだわ……)」


 そんなことを思っていると天音は敵である農夫のアルフレッドに向かい、気合を入れかけ声と共に全力で走って行った!!


「はっ! いやぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」


 敵に向かって走る! 走る!! 走るぅぅっ!!!! ……っが、


 天音は前しか見ていなかったのか、地面にあった小石に足をとられ(つまず)きコケてしまった。そしてその瞬間、オレと天音の声が重なる。


「「あっ!」」


 あっ! と言ったのも束の間、天音がコケると同時に『棺』になってしまった。



「……う゛え゛っ゛? 何々……どゆことなの、これは???」


 コケたのもビックリしたが、いきなり天音が『棺』になってしまったのには更に吃驚仰天して、状況がさっぱり解からなくなってしまう。


「……た、たぶんですが、天音お嬢様がコケた瞬間その…鞘がお腹に当たりそれがダメージ判定になってしまったのかと思います。た、たぶんですがね……」


 静音さんは「たぶん」を何度も強調し、説明してくれたのだが……、


「……はぁ。ま、まぁそれは納得……いやあんまり納得できないけど、何で天音いきなり『棺』になっちまったのさ?」


 オレのそんな疑問は尤もだと思う。だって葵ちゃんが死んだ時にはもっとこう時間をかけて死んだし、何か体が光ったり色々あって『棺』になったのに天音の場合はいきなり『棺』になってしまったのだ。……読者もそう思うよね? ね?


「たぶん……作者の方の手抜きかと……た、たぶんですよ! たぶんですからね!!」


 嫌に「たぶん」を強調する静音さん。


「(……もはやそれは『たぶん』じゃなくて『駄文』の領域だぞ!)」


 そもそも手抜き感満載にして勇者である天音を殺すんじゃねぇよ! もしかしてずっ~~と引っ張ってこの体たらく? おいおい冗談も大概にしろよな作者のヤツめ!!


「ま、まぁ作者の方も『第23話あたりからのこのシリアス展開あんま面白くないよね? よっしゃ早めに終わらせとこ♪』って言ってましたし、それがどうやら時間差交じりに今頃出てきたようですね」

「い、今更それを?」


 静音さんはコクリと頷いた。


「だったらくだらない内容部分を削れや!! そっちの方が断然健全的だぞ!!」


 オレははぁはぁっと息を切らせながらに憤るのだったが、物語に住むオレには為す術がなかった。


「ま、所詮ワタシ達は物語に登場するキャラですしね。仕方ありませんよ……」


「……オラどうすればいいんだか?」

「???」


 敵陣営もいきなりの展開で混乱していた。


「(そりゃそうだわな。いきなり敵が剣掲げて走ってきたかと思ったら、コケて棺になっちまったんだからな。もしオレでも対応に困るわ……)」


 そう心の中で思ってたら、気づいちゃいけないことに気づいてしまった。


「(も、もしかして……オレがコイツらと戦うハメになるのか?)」


 そこで背中に冷たいモノがツゥーっと流れた。


「……オレ、もしかしてまた死んじゃう感じですか?」


 オレは誰に言うでもなく、そう呟いた。


「あ~、とりあえず農夫さんとクマさんには……帰ってもらいますか? ちょうどチュートリアルも終わったみたいですし……」


 静音さんがそう言うや否や、


『勇者天音が死亡しました。これにて『戦闘チュートリアル』を終了いたします(ぺこりっ)』


 っと表示された。


「…………こんなんでほんとにいいの? 『戦闘チュートリアル』なのに、まったくチュートってないんだけどさ……」


 そう疑問を口にすると、


「まぁまだチュートリアルですしね。そもそも勝っても負けても影響はないですし、そもそもRPGなんて『たたかう』のボタン押してりゃ勝てますよ(笑)」


 っと笑いながら静音さんが言いやがる。


「…………じ、じゃあ、やらせるなや!! どんだけ引っ張ったと思ってんだよ!?」



 常に引っ張りまわしつつ、第39話「……ああ、こりゃ確かに茶番だわ」につづく。

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