第34話 オレは仲間を信じる! いや、信じたい!!
「何故なら……この静音はのぉ~、何も知らぬ者を別の世界から召喚し、やれ『勇者』だ! やれ『武道家』じゃ! っとこの世界の設定じゃと甘言し祭りあげた挙句に、その者の『記憶』そして『心』を強引に奪い自分の魔力としてこの世界での存在を維持し続けておるのじゃ」
「何も知らぬ者を……別世界から召喚…しただって!?」
じゃあ天音や葵ちゃん、そしてこのオレのことも……静音さんがこの世界に召喚したっていうのか!? 動揺するオレを尻目に、魔神サタナキアはさらに言葉を続ける。
「さよう。そもそもこの静音が、妾の本体である『聖剣フラガラッハ(その中に封印されし魔神サタナキア)』を勇者と設定した別世界の女人に『伝説の剣』として毎回渡しておるのじゃ。そうして『この世界を救うために魔王を倒すためだ!』っと旅をさせ『記憶』、そして『心』がある一定に達すると、この世界の最終目的である魔王を倒させたその後に、聖剣を意図的に暴走させ、そうして妾に勇者の意思を乗っ取らせ最後には……勇者自ら、仲間を殺させておるのじゃ。前回の勇者であるユキネの時もそうだったのじゃ。だがユキネの場合、自らを犠牲にすることにより妾の暴走を止め仲間を救ったのじゃ。そこで妾は封印されてしまい、それ以降の記憶はないのじゃが……。どうやらあの後に何かが起こりパーティの仲間達はこの静音に記憶も心も抜き取られてしまったようじゃのぉ~」
「し、静音さんが…そんなことまでしただなんて……」
(この世界にオレたちを呼んだのも…勇者だなんだと『設定』したのも、ぜんぶ、ゼンブ、全部っ!! 静音さんが仕組んだことだったのか!? しかも魔王を倒した後にサタナキアを意図的に暴走させて…そして……そしてっ!!)
オレはサタナキアの話を聞いているうちに、もう静音さんのことが何もかも信じられなくなっていた。
「ひ、酷いですアナタ様!! アナタ様はサナ……魔神の言うことをだけを信じて一切ワタシの事を信用してくれないのですね。アナタ様がいつも困った時にはこのワタシが助けてきましたよね(ぐすっ)」
今にも泣き出しそうな静音さんがオレにしがみつき、オレの胸元で小さな声を絞り出し、そうオレに訴えかけてきた。
「っ!?」
その言葉を聞いてオレは「ハッ!」とした。
「(そうだよ、そうだよなっ!! サタナキアと対面した時、初めに静音さんはオレに何って言ってた? 『魔神はその話術でヒトの心を操ります。決して動揺なさらないように……』って言ってたよな! オレはいつのまにか、サタナキアが語る静音さんの話を事実と思い込まされ動揺して魔神サタナキアの言うことばかりを信用してしまっていた。いつも困った時に助けてくれる静音さんを疑ってばかりいて……オレは一体何を迷っていたんだ! 魔神の言葉よりも、仲間である静音さんのことを信じるべきじゃないのか!?)」
オレは今頃そのことに気付き、仲間である静音さんを信じる、いや信じたい!! そう決意すると敵である魔神サタナキアに対してこう叫んだのだった。
「オレは仲間である静音さんのことを信じる! だから『聖剣フラガラッハ』に封じ込まれし、魔神サタナキアめっ!! もうオレはオマエの言葉には惑わされないからなっ!!」
それはもはや『叫ぶ』というよりは、『怒鳴りつける』に近かったかもしれない。魔神サタナキアに対してというよりは、仲間を信じず魔神に惑わされた自分自身に対して「仲間を、静音さんを信じろ!」と憤った結果だったのかもしれない。
「あ、アナタ様!! わ、ワタシの事を信じてくれるのですね!!!!」
今にも泣きだし暗く沈みきった表情をしていた静音さんに、その瞬間少しだけ笑みが戻った。どうやら魔神の言葉よりも、自分を信じてくれたのがよほど嬉しかったのだろう。
「小僧! お主は既にその悪魔に心を操られておるのじゃ。それが……それが何故わからぬのか!? この愚か者が!!」
「うるさいうるさいっっ!! 魔神のクセに説教を垂れるな! オレはオマエの言葉なんか…」
サタナキアはオレの言葉を遮るように、こう言い放った。
「ならば何故その女はいくつもの名前を持っておるのじゃ!! それにもし妾がいうた話が事実と違うならば、何故その女は妾の言葉に一切反論せぬのじゃ!? どうした小僧!! お主、その女を真に信頼しておるのなら、これらにしっかりと応えてみよっ!!」
サタナキアはもはやオレに反論させぬほど、畳み掛けるように、その絶対的な質問を投げかけてきた。
「っ!?」
オレはサタナキアのその質問にまったく反論できる余地がなかった。それはオレ自身でさえも疑問に思っていたからだろう……。確かに静音さんはあの時無言で、一切の反論しなかった。それに静音さんのたくさんある名前の時も、だ。……いいや、ダメだ!! オレはまた魔神の言葉に惑わされているんだ!
そしてサタナキアのその言葉を振り払うように、「いいや! 違う!! 惑わされるな!!」と首を左右に激しく振り、冷静さを取り戻す努力をする。
「し、静音さんだって……何か、何か事情があったに違いない!!」
オレは魔神を信じず、頑なに静音さんを信じていた。
「何故…何故なのじゃ、お主は一向に妾の言葉を信じぬのじゃ! …んんっ!? 待てよお主のそれは……」
サタナキアはオレの事をじっと、見つめていた。それはまるで品定めするかのように……。
どれだけ天音の姿をした、魔神サタナキアに見つめられていた事か……。言葉を発せようにも、それすらもできない、そんな雰囲気だった。
1分? 2分? そうこうする内にサタナキアは何かに気づいたようにこう言葉にした。
「……そうか! そういうことか!! アイよ…お主は。どれだけ罪を重ねるつもりなのじゃ……」
「っ!?」
静音さんはそのサタナキアの言葉に、これまでにないくらい酷く動揺していた。
「(な、なんだ? 一体なんだっていうんだ……これ以上何があるっていうんだ?)」
オレは何の話をしているか解らず、ただ酷く動揺している静音さんと、サタナキアを見ているだけだった。そんなオレを尻目にサタナキアはこう口にする。
「小僧……お主…お主は……お主の記憶はまだ消されておらぬぞっっ!!」
またもやお話の良いところで、第35話へとつづく。




