第29話 ヒト成らざるモノ
「妾の名は……『サタナキア』。大魔導書に記載されし魔神ナリ!!」
天音らしきモノはそう言い放った。
「ま、魔神!? 静音さん『魔神』とか『グリモなんとか』ってのは一体……」
「早い話、ヤバイモノが天音お嬢様に憑りついた……。つまりはそうゆうことですね」
「あ、天音にヤバイモノが憑りついただって!? ……いやいや、ラノベでその説明は絶対にNGでしょが!! 何、その感想を求めたら「面白かった!」「つまらなかった!」みたいな単純な説明は!!」
「ですがアナタ様、それが真理ではございませんかね? ワタシにはそれ以上の言葉は必要ないと思いますけど……『面白いから続きを読みたい』『つまらないからもう読みたくない』果たして、小説の感想を述べるのにそれ以上の『言葉』が必要でございますでしょうか?」
「ぐぬぬっっ!!」
オレはその有無をも言わせぬ静音さんの説得力に、それ以上口を開けなかった。
「ん~……どうやらこの場には『ヒト成らざる不純物』が2コほど雑じっておるようじゃのう」
そんなオレと静音さんのやり取りを流し、その天音らしき『モノ』が自分の周りを見渡した。目の前にいるオレとその隣にいる静音さん、農夫のおっさんとクマBを順々に見ながら、そんな言葉を口にした。
「ヒト成らざるモノ不純物???」
(それは『クマB』と……『魔神』のことを指しているのか?)
オレがそんなことを思っていると、静音さんがその魔神サタナキアとやらの解説をしてくれた。
「『サタナキア』とは『大魔導書』に記載されし、上級精霊の魔神です。プルスラス、アモン、バルバトスら3人の精霊を配下に持つ|大将(総司令官)でもあります。ま、早い話『目の前に悪の四天王の一人が目の前に現われた!』とでも思って下さいませ! ちなみに倒すと『お馴染みのセリフ』を言ってくれますよ(笑)」
そう静音さんが詳しく説明してくれるのだが、毎回最後をオトすのでやや緊迫感に欠けていた。そもそもお馴染みのセリフってなんだよ? ってアレか? アレなのか? 確か……「私を倒しても、私はまだ四天王の内の1人で~……って定番のヤツかな?
「わ、私を倒したら他の4人の四天王が黙ってないんだからねっ!!(照)」
「(……んんっ!? な、なんかオレが知ってるのと違うぞ!? そもそもそれだと自分は『四天王』じゃねぇじゃねぇかよ!! あと何で静音さんはツンデレながら、魔神っぽいセリフを言ったんだよ!? そもそも自分で『悪の四天王~』ってオレに言ってるのに、速攻それを否定してんじゃねぇよ。いわゆる反義語強調かよ!)」
静音さんはまだまだオトしたいようだった……。
「はぁ……おぬしらは、一体いつまで夫婦漫才を繰り広げる気なのじゃ?」
天音らしきモノ、サタナキアと呼ばれる魔神はそう呆れながらにオレ達に対して、ため息をついた。
「ふ、夫婦だなんてそんな……ぽっ」
(ま、魔神にすら呆れられるとは……。あと何で静音さんは『夫婦』って言葉に照れてるんだ? 擬音まで自ら口にしやがって)
「そなたたちは本当に、勇者の仲間なのかえ? 妾はちと心配になってくるぞ」
「……っ!? そ、そうだった!? サタナキア……だったっけ? 天音を、オレの仲間を返せ!!」
「ぶふっ。さ、三文芝居もここに極まれりですねアナタ様(笑) くっくっくっ」
静音さんが笑いを堪えながらオレをディスりまくる。
「(う、うるせーよ、大体だな静音さんがそれを言うなよな。……誰のせいでこうなったと思ってんだよ、ったく)」
「ふむ…そうしたいのは山々なんじゃが……それはちと無理な相談じゃな」
「も、もしかして既に天音の存在や人格が消されたんじゃ……」
(ま、本気かよ……。それもよくあるシチュだけどさ! それはあんまりにも……)
「いや、この小娘は無事じゃぞ。ただ単に妾も喋りたいだけのことじゃ」
「あっ、なあ~んだ。天音が無事で、ただ単にサタナキアさんが喋りたいだけ……いやいや、喋りたいだけで天音の人格乗っ取るなよな!?」
まさかまさかの、新キャラ『魔神サタナキア』でさえ『ボケ役』だったとは。もうこの世にツッコミ役はいないのかよ?
「(お手手ぶんぶん)」
何か……クマBが手挙げてるんだけどさ。うん、まぁね。確かに木で出来たリヤカーでオレに対して突っ込んだよな。前話のガンジースタイルはオレも悪かったと反省してるわ。あんなんじゃリヤカーで轢かれても仕方なかったよな……。…ってだからさ、静音さんだけでなく、みんなしてオレの()閉じで括ってる心の声を拾わないでくれるかな? クマ公にまでオレの心の声が筒抜けなのかよ!?
「オレにとって個人情報の保護はないのかよ……」
「そんなものあるわけないじゃないですか(笑)いきなり面白いことを言いますねアナタ様(笑)」
「ぶっ」
などと嘆くオレに対し、速攻で静音さんとクマ公にまで笑われてしまう。
「してじゃ、小娘を助ける方法なのじゃが、妾のことを……」
そうさらっとサタナキアさんがやや強引にと話を進めてくれている。オレもそのノリに乗っかろう♪ もしかして倒せと言うのか!? ここに来て農夫+クマBそのうえで、さらに魔神の相手もしなくてはならないとは……)。
「妾を……剣を鞘に収めればよいだけのことじゃ」
「うぇ゛……ってそれだけ???」
「うむ」
え、えらく単純だなそれは! 単純すぎて逆に怪しいわ!! そもそも天音の人格を乗っ取ったサタナキアの方から、その解決法を教えちゃダメだろが……。オレはサタナキアさんって実は良い人なのかも……と思ってしまう。まぁ人ではなく魔神なんだけどね。もう下手したらサタナキアさん自ら剣を鞘に収めてくれるんじゃないかと錯覚を起こしてしまうほどだった。
「アナタ様お遊びはここまでですよ! 今からワタシが言うことをちゃんと聞いて下さいね!」
(むしろ遊んでんのはオレ以外の全員だろうがコノヤロー……)
「アナタ様! ちゃんと聞いてらっしゃるのですか!!」
「あ、ああ……聞いてる、聞いてるよ」
今までとは打って変わった真剣な顔で、宇宙の歌姫っぽく『ワタシの話を聞け!!』と静音さんがオレを怒鳴りつける。
「これからワタシが話すことはとても重要なことです! 今天音お嬢様の人格を乗っ取ってる『魔神サタナキア』これは大変危険な存在なのです。これよりサタナキアが口にする『言葉』や『行動』などは絶対に信用なさらないようにして下さいませ!! 相手は魔神と言われるほどの悪いヤツなんです。その巧みな話術により、アナタ様の意識を無意識下の元に操作し、天音お嬢様のようにアナタ様の『意識』まで乗っ取ってしまいます! ですから気をしっかりと持って何を言われても決して動揺なさらぬようにお願いします! いいですかアナタ様!! これは例え何があろうとも絶対ですからねっ! 解かりましたか!!」
これだけ真剣な静音さんを見たのは初めてかもしれない。つまりこれから起きる出来事はそうゆうことなのだろう……とオレも身構える。
「ふふっ、これは随分な言いようじゃのぉ傀儡の分際で。これではまるで妾が悪者扱いではないか。ならば聞くが、おぬし今は何と名を名乗っておるのじゃ? アイギスか? ダリアか? それとも前回と同じくエリカなのかえ? それとも、もっと別な名を騙っておるのかぇ? ほれほれ早く妾に申してみよ」
天音の中にいるサタナキアさんは、静音さんに尋問するようにそう言い寄った。いや、それは…まるで母親が娘を諭すように言ったのかもしれない。静音さんは何かを我慢するように下を向きスカートを握り締め、そしてこう言葉を絞り出した。
「…………い、今のワタシの名は静音です。今のワタシは、それ以上でもそれ以下でもありません…………」
二人が何の話をしているのか、オレにはさっぱり解からなかった。ただ静音さんの名前が『本当ではない……』ただその『事実』だけは二人の会話から知ることができた。
「しずね……しずね……静かなる音の音と書いて『静音』じゃな。本当におぬしは名を騙るのだけは上手じゃの~。正直モノの妾にはとても真似できぬ芸当だわ」
「(ま、魔神なのに正直モノだって? これは一体どうゆうことなんだよ??? 何が真実で、また何が『嘘』なのか……)」
「おいそこの小童!」
「へっ? お、オレ……ですか???」
今の今まで話の蚊帳の外だったのに、サタナキアさんにいきなり声をかけられ、あれだけ静音さんから注意されたのに動揺してしまう。
「あ、アナタ様いけません! ワタシの言葉をしっかりと思い出し動揺なさらないでください!! お願いです!!」
静音さんが大声でそう叫ぶのだが、次のサタナキアさんの言葉でオレはそれを聞き流してしまう。
「おぬしはこの女に騙されておるのじゃぞ……そのことをしっかりと自覚しておるのかえ?」
「だま……されてる? このオレが? ……静音さんに?」
そうサタナキアさんに言われ『嘘だよね?』とオレは静音さんの方を見るのだが、静音さんはそれを避けるように視線を下に逸らした。
「やはりな……、おぬしの記憶は何度もこの女に削除されておるのじゃよ!!」
第30話へつづく




