最終話 あなたの目の前に野生のお嫁さん候補(お嬢様)が現れた!!入力コマンドは!?……だがしかし、コントローラーにシカトされてしまったようだ。~
ピン、ポーン♪
そして運命のその日は家のチャイム音から始まるのだった。
「……ぐぅ~……すぅ~……むにゃむにゃ~……」
未だ主人公のオレは夢の住人となり、布団の温かさと春風の暖かさに夢心地で眠っている。
ピンポンピンポン♪
しつこいほど何度もチャイムが鳴らされると毛布を被ったままのオレは片目を開ける。
「……んっ? だ、誰か来たのかよぉ~。ふぁあ~っ……ってまだ朝の5時だぞ!? こんな時間に誰だよ一体……」
オレの隣で同じく惰眠を貪り転がっていたスマホを手に取り時間を確認するとまだ朝の5時だった。
いくら春になり日が伸びたとはいえ、まだ周囲には影を落とし決して明るいとは言えない時間帯である。
ピピピピピポンポンポン♪ ドンドン! ドンドン!
いくら押しても誰も出ない事に苛立っているのか、滅茶苦茶早くチャイムのボタンが押された挙句ドアを何度も叩かれ、けたたましい程の騒音と軽く頭に響く騒音でオレは目覚めた。
「はいはいはいはい、はーい! 今すぐ出ますってばっ!!」
これは埒が明かないと眠い目を擦りながら玄関へと向かうことにした。
もしかすると近所で火事でもあったのかもしれない。そうじゃなければこんな朝っぱらから連続してチャイムを鳴らし住人の機嫌を損ねる来客はいないだろう。
「ふぁあ~~い。どちらさん?」
まだ覚醒しない頭なりに一応警戒してドアを開ける前に誰がどんな用件なのかを確認する。
「タチバナユウキさんはオタクでしょうか?」
「はっ? お、オタク? オレが???」
一瞬『お宅』という所をカタカナの『オタク』と間違えたのかと思ったが、その言葉の前に『は』と付いていたため、間違いでないことを嫌でも理解してしまう。
「え、え~っと……」
(まぁ確かにオレは傍からオタクかもしんねぇけどさ……何でバレたんだ?)
オレは訳が分からず、何て返答すれば良いのか戸惑い言葉を詰まらせてしまう。
「あっしっかりと間違えてしまいました~。すみませ~ん」
「しっかりとって……ほぼ確信的じゃねぇかよ。で、何の用なんですか……こんな朝っぱらから!」
まったく反省していない声の主にツッコミを入れ、やや怒りながら再度用件を訪ねる。
「あっはい。実は宅配会社の者なんですが~、貴様宛の荷物が届いているのですよ~」
「はぁ荷物……ですか? ってか、『貴様宛』って何だよ。あまりにも無礼すぎんだろ……」
オレは宅配会社がこんな朝っぱらから宅配業務を開始していることに驚き、また荷物が届く宛てもないのになぁ~っと気のない返事をしてしまう。
「どうやら受け取る気ないようなので~、そこらのネギ畑に植えて不法投棄してもよろしいでしょうかね~?」
「何でネギ畑限定にして、宅配物を投棄する気満々なんだよ……ったく」
オレは仕方なし二渋々ながらもドアロックを外してノブを回すとドアを開いた。
「あっ、おはようございます。タチバナユウキさんご本人さんですよね? どうも『当たり屋運輸』の者です?」
「……いや、それはさっき聞いたからさ。って聞いたことねぇ運送会社だな。しかも自分が勤めてる会社だってのに疑問系で聞き返しやがって」
ふと視線をお姉さんの後ろにあるトラックへと差し向けると、車は所々ボコボコになっているのが目に入ってきた。
「ええ、そうですね。主な業務は一応お客様からお預かりした品物を運びつつ、そこらにいる気の弱そうなドライバーに当たり屋して、金を毟り取るまでが本来の仕事ですかねぇ~。あっ、ちなみに給料は歩合制でしかもお休みの日には入院し放題ですから安心して下さいね♪」
「……だから給料制度と福利厚生については聞いてねぇっての。何でオレをその道へと就職させる気満々に話してんだよ。ってかお姉さん、随分ヤクザな商売を生業にしてんだね」
オレはその冗談も本気とも思えぬ物言いに対し、不機嫌な顔つきで目の前にいるお姉さんと受け答えをする。宅配のお姉さんは若いのか、オレよりもやや身長が低く胸も無かった。
一応宅配業者の制服を着て深深と帽子を被っていたが、肝心の顔がよく見えない。
だがその容姿と声から美少女ないし美人さんだと推測できる。
「にしても来るの早すぎません? だって朝の5時になったばかりなんですけど……」
オレなりの言葉とまだ薄暗い外を指差しながら『宅配業者の人、早く来過ぎ問題』を抗議してみる。
「えっ? そうですかね? 実はあと1時間くらいは早く来ようと思ったのですが道が混んでまして、それでこんな時間になってしまったんですよ」
「い、1時間早くって……築地のセリ市じゃねぇんだぞ」
(どうせだったらもっと道が混めば良かったのに……)
そんな事を目の前にいるお姉さんに聞こえぬよう、心の声として突っ込む。
「最近は留守の家も多いですからね。なるべく再配達業務が生じないよう、お客様が確実に在宅していると思われる時間帯を狙い撃ちしながら各家々を回りに回って仕方なく宅配いるんですよ」
「ね、狙い撃ちしてたのかよ。そりゃ朝の5時にはみんな家にいるだろうけどさ、それにしても早すぎだろうが……」
確かに昨今では宅配ドライバーさん不足と再配達が重荷になってるとは聞いていたのだが、まさか自分のところにそのしわ寄せが来るとは思いも寄らなかった。
「あれ? 受け取ってくれないのですか? そうですか……ならこの荷物は水田に放り投げて水没させておきますね♪」
クルリっとお姉さんは回れ右をするとそのまま帰ろうとしていた。
「待て待て待て!! 誰も受け取らないなんて言ってないだろうがっ!! しかも何で畑とか水田とか農業推しばかりしてんだよ。しかもお姉さんさ、さりげな~く器物損壊と環境破壊しようとしているよね?」
オレは帰るお姉さんも必死に言葉で引き止め、どうにかその荷物とやらを受け取ろうとする。
「ちっ……なら文句ばかり言ってないで、さっさと早く受け取ってくださいよ。ワタシも忙しい身なんですからね!」
「おっとと!?」
お姉さんはこれ以上の問答が面倒になったのか、再度こちらを振り向くと手に持っていた茶色の小さな小包らしき物をオレの胸に押し付け、踵を返してそのままトラックに乗り込み走り去ってしまった。
「えっ? 今の人……どこかで……」
お姉さんが振り返った瞬間、帽子が少しずれてしまい束ねてあった後ろ髪が解けてしまい、長く美しい黒髪が風で靡きどこか懐かしい匂いを思い出させてくれた。
その匂いを確かにオレは知っていた。
だがしかし、匂いフェチ非属性のオレでは誰の匂いだったかまでは思い出せない。
そしてふっと気付くとどれくらい外に突っ立っていたのか、いつの間にか辺りが明るくなっていることに気づいてしまった。「誰だったかなぁ~」などと首を捻りながら、家の中に入るとその小包とやらの宛名部分を見てみることに。
明細には『本一冊同封』とだけ記されたシールが貼られているだけで宛先も、また宛名も記されてはいない。そもそも宅配物だというのにオレはハンコどころか、受け取りのサインすらしていないことに今更ながらに気づいてしまうが後の祭り。
「もしかしてマレーシアの親父からかな?」っとつまらないお土産ばかりを送りつけてくる父親に苦言を示すと共に、その本が一冊入っているという小包とやらを開けてみる事にした。
外は茶色の厚手包み紙で止め所は紙のガムテープで止められていた。
ベリッ。ガムテープ特有の剥がれ音と粘着部分に少し剥がれた包み紙がくっ付いてしまう。
「普通、こういう本とかってダンボールに入れて送るよな?」
簡易なりにも包装に気を使ってるのだが、このような紙の包みでは雨に濡れると中の本もダメになってしまう。やや文句を言いつつもようやく幾重にも巻かれた包み紙を剥がし、その本とやらが顔を見せる。
「これは……小説……なのか?」
表紙には可愛らしい女の子が3人描かれており、赤い髪をした勇者に白い髪の武道家、そして最後に……あの人が描かれていた。
「これって……もしかして静音さん……か?」
そこには全身黒色のメイド服に魔女が被るような大きめの帽子を被り、そして右手にはモーニングスターを持って男の人をぶん殴っていた。
「ははっ……これがオレなのかよ。ったくいつもながら酷い扱いだよなぁ……」
そうそこに描かれ静音さんのモーニングスターの餌食なっていたのは何を隠そうオレ自身だった。
よくよく表紙を見れば端の方にジズさんやもきゅ子そしてサタナキアさんまで描かれていた。
そして裏返すとそこにはアルフレッドのおっさんやクマB、アリッサや門番のおっさんら二人とあのメインヒロインに成れなかったクラスメイトなどなど……あの異世界で出逢ったすべての人が描かれおり、みんな楽しそうに笑顔になっていた。
「ぐすっ……なんだよこれ……っ」
そして本の中身を確かめるように1ページ1ページ捲って読んでゆく。
そこに描かれていた物語はすべてオレが体験した内容だった。入学式に天音や静音さんと出逢い、義理の妹の葵ちゃんが出来てみんなに告白され、次の日学校に行くと異世界に転移させられて……。
そしてふと気が付くと読んでいるそのページに小さく丸いシミのようなモノ付いていたのだ。
最初「新品なのに汚れてるのか?」っと思い指でなぞっていると、また一つまた一つっとそのシミは序々に数を増やしていった。
「オレは……泣いているのか……」
そこで初めて自分が泣いている事が気が付いた。
それは悲しさからくるものなのか、それとも懐かしさからなのか、はたまたその両方なのか……自分自身の事なのにそれすらも分からない。
そのまま時間も忘れその本を読むことに没頭してしまう。そして今現在オレが置かれている状況のページまで差し掛かるとある事に気が付いた。
「まだページが……続きがあるっていうのかよ!?」
オレは現実世界に帰って来るまでが描かれているものとばかり思っていたのだったが、まだ後には数ページ程残されていたのだ。
そしてそれはこれから起きるであろう未来の出来事が書かれているそれを読んでゆく。そして……。
「ぐっ……チクショーッッ!!」
オレはまだ続きがあるそのラノベを閉じると乱暴にも抱き掴み、パジャマのままだというのに靴も履かず外へと飛び出してしまう。
「はぁはぁ、はぁはぁ……ふふっ……あはっはっはっ。マジかよマジかよ。ほんとにも~うっ!!」
全速力で走ったせいか数分もしない内に息が上がってしまう。
顎が上がり口を開き酸素を欲しているせいなのか、喉がカラカラに乾いてしまい唾を飲み込むとまるで針でも指されているような痛みを引き起こす。
だがそれほど苦しいというのにオレは笑っていた。
傍から見たらさぞ変なヤツに見えるだろうが決して頭がおかしくなったわけではなく、これから行く場所にアイツらが待っていると知っているからこそ喜び笑っているのだ。
「っわぁ~っと!! や、やっとで着いた」
そして転がるように桜の花びらが咲き乱れる校門の前に倒れてしまう。
……去年と同じく地面には散った桜の花びらで埋め尽くされていた。
「みんななどこだ???」
オレは本に書かれていたそのとおりの行動を取ったのだが、何故だかそこには誰もいなかった。
そして本に書かれていた内容を確かめるため持っていたあのラノベを開いていると、いきなり影が伸び読むのを邪魔する。オレは瞬時にその影の正体があの人だと思い、顔を上げてこう叫んだ。
「し、静音さんっっ! ……じゃないですねー、はい」
やや笑いを浮かべているオレの前にいたのは……真っ赤な色をしたドラゴンだった。
奇しくもお腹が空いているのか、口を開け涎を垂らしながらオレの事を見ていた。
「いやぁ~あの人違いのようでした……はははっ」
「があぁぁぁぁぁっ」
オレのジョーク空しく、目の前にいるドラゴンには一切通用していない。
また咆哮と共に排出された唾液により、オレの顔全体は唾まみれとなってしまう。
ダンダンダン……。
そして大きな足音がすると巨大な咆哮と共にソイツらはやってきた。
「ゴオオオオオオッッッッ!!」
「おや、アナタ様にしては随分お早いのですね。もしかして待たせちゃいましたかね?」
「静音さん……そ、それは何? 何に乗っていらっしゃるの?」
そう現れたのはオレが捜し求めていたあのクソメイドその人だった。
しかもご丁寧にも白色が目立つドラゴンの頭に載ってのド派手なご登場である。
「ああ、これですか? これは葵お嬢様役ぽいのです。で、こっちの赤いのが天音お嬢様役っぽいのですね」
静音さんは何事も無かったかのように白色のドラゴンは葵ちゃん、赤色のドラゴンは天音だと言い張った。
「ぎゃあああああっ……ぼわぁ!」
赤色のドラゴンは自分が呼ばれたと勘違いしたのか、狂ったような鳴き声をあげながら炎の息を吐いて傍にあった桜の木を燃やしていた。
桜の木>メラメラメラメラ♪
「おい……桜の木燃えまくってんぞ。アレはいいのかよ……」
そんな些細な出来事よりも、もう一つ気だけになる事があり聞いてみる事にした。
「静音さん一つだけ聞きたいんだけどさ、いいかな?」
「あ、はい。どうぞ」
紛いなりにも頭を使い状況分析するため静音さんに質問をする。
「こっちの赤くて桜の木燃やしまくってるドラゴンが天音役ってことなんだよね?」
「はい」
「ぎゃあああああっ……ぼわぁ!」
再び自分を呼ばれた勘違いした赤いドラゴンは、またまた炎の息を吐いて今度は反対側にあった桜の木を燃やす。もはや学校にあった桜の木はすべて燃えたと言って良いだろう。いや燃えた花びらが落ち、地面に敷き詰められた花びらにも燃え移り既に学園全体が火の海と化していたのだ。
「……この白いドラゴンが葵ちゃん役なんだよな?」
「ええ」
「ゴオオオオオッッッ!!」
パリンパリン。
こちらも赤いのに負けてまいと咆哮している。何か学校の窓ガラスが全部割れた気がするんだけど、気のせいだよね?
「で、葵ちゃん役の上に乗っているのが静音さん……で合ってんだよね?」
「ええ、そうですね。一体それが何なのですか?」
「何? この期に及んで文句でもあるのかよ?」っと、でも言いたげに少し顎を引き渋い顔をしている静音さん。
「いや、ね。ならこっちの方は……一体どなた役なんでしょうか?」
そしてオレは静音さんの登場以来ずっと無言を貫いているお方を指差して聞いてみた。
「…………」
そう一切喋らず、まるで死神のような方がいらっしゃったのだ。そもそも天音役と葵ちゃん役をドラゴンに挿げ替えるのはこの際だから由としよう。でも何で静音さんがいるのにこんな死神チックな方が余計にいるのか、そこが問題だったのだ。しかも死神のカマ持ったまま宙に浮いて佇んでいらっしゃるし。
「ああ、この方ですか? ここに来るまでの間、何故か寂しそうに空に浮いていらっしゃったので『貴方も来ますか?』っと訪ねたら勝手にくっ付いて来たんですよ。ワタシのファンか何かですかね???」
「……そ、そうなんだ」
(いや、ファンとかそうゆう類じゃなくて普通に『死神』さんだろ? 大丈夫なのかよ、そんなの引き連れてきてさ?)
「さぁアナタ様! 気を取り直して新たな仲間と共に新しい冒険の物語を紡ぎに参りましょう♪ 準備はいいですね?」
「ま、マジかよ。今度はコイツらがヒロインなのかよ……」
そしてオレは新しい仲間だと言う連中に目を向ける。
「がるるるるるる」
「しゃあああああ」
「…………」
新たな仲間を得て各々喜んでいるのか、オレのことを獲物か敵認識しているかのように威嚇している。
「ちなみにここにいる皆さんは各部族の『お嬢様』であり、アナタ様の『お嫁さん候補』でもあります……まぁほんとはそこらをうろついていた『野生』ですけどね(笑)」
静音さんがそんなことを付け加え、タイトル回収を謀ろうとしていらっしゃる。
「まさかまさか、最後の最後でタイトル回収が入るとは思わなかったぜ。おいこれを読んでる読者さんよ、オレは一体どうすりゃいいんだ? どれか選択肢を選んでくれやぁぁ!!」
『もう一度最初から始める』再び70万文字コース
『新たな嫁を攻略してみる』ちょっw その前に食われますよ(笑)
『作者に物語の続きを促してみる』そういうのは感想欄にお願いします
「最後だってのに相変わらずロクな選択肢がねぇし……って、あれ? 選択肢を選ぼうにもコントローラーが動かねぇぞ!? 何でだよ!? 動け動かねぇと死んじまうんだぞ!!」
だが空しくも読者からは無視をされ、コントローラーにすら馬鹿にされているのかシカトされてしまい、迫り来る命の危機に対し何も出来ず、オレの目の前には新たな野生のお嫁さん候補(お嬢様)が目の前に現われた!!
もしかしたら、オレの物語はそもそも始まってすらいなかったのかもしれない……。
【愛と勇気の物語】
『あな嫁~あなたの目の前に野生のお嫁さん候補(お嬢様)が現れた!!入力コマンドは!?……だがしかし、コントローラーにシカトされてしまったようだ。~』 fin
???につづく




