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あな嫁~あなたの目の前に野生のお嫁さん候補(お嬢様)が現れた!!入力コマンドは!?……だがしかし、コントローラーにシカトされてしまったようだ。~  作者: 立花ユウキ/scarlet
第5章本編『終わる世界』

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第216話 お揃いのリボン

「なぁ葵ちゃん。こんなこと聞いたら悪いけどさ、静音さんはその……天音の身代わりになって死んだのか?」


 オレは明け透けもなくそんなことを聞いてしまった。

 そんな不躾なことを言われた葵ちゃんはというと一瞬だけ驚いた表情を見せ、慌ただしく否定する言葉を口にした。


「い、いえ! 静音お姉様はその、去年交通事故で亡くなったんです。決して天音お姉様の身代わりになったわけではありませんわ!」

「交通事故……静音さんが?」


 オレが夢の中で見た記憶では確か実の父親が静音さんに対して「天音の身代わりに、ドナーになれ」と言っていたと記憶しているのだが、違うのかな?

 それとも事故に見せかけて……いいや、その考えはあまりにも怖い考えだよな。首を左右に激しく振ってその変な考えを払拭する。


「えぇ。確かに天音お姉様はドナーが必要なほど、重い心臓病を患って入院していました。天音お姉様と適合するドナーが見つかったのですが、その……」


 葵ちゃんは顔を伏せると言葉を濁しながら、ポツリポツリっと説明を続けてくれた。


 静音さんは天音に自分が適合するドナーだと明かしたのだと言う。

 当然天音はその理由を問いただした。


 普通ならば親近者(家族)でも適合するドナーになれないことがあるからだ。

 そこで静音さんは自分が天音の双子の姉であると明かして「妹の……天音ちゃんのためならば……」と再度申し出をしたのだが、天音は『まだ生きてる人(・・・・・・・)を、何より実の姉を犠牲にはできない!』っとその申し出を断わった。


 だが天音の病状は日に日に悪くなり、ついには明日をもしれぬ日々を病院で過ごしていた。

 そんなとき静音さんが買い物に出かけた際、運悪くトラックに跳ねられて亡くなってしまったのだと言う。


 それがただの不運だったのか、それとも自殺だったのか、今となっては分からないが天音は静音さんによって命を救われたのだと言う。


「静音さんはさ、最初から自分が天音の実の姉だって知ってたのかな?」

「ええ。そのようでした……。で、ですが天音お姉様はドナーである事を打ち明けられるまでそのことを知らなかったんです。それに静音お姉様が買い物に出かけたのだって、天音お姉様の誕生日プレゼントを買うためであって決して……っ!」


 そう語る葵ちゃんはオレが天音のことを責めると思ったのか、必死に弁明していた。


「そっか。そうだったんだ……」

(天音の誕生日ということは双子なんだから自分の誕生日でもあったわけだよな? きっと姉として病院に入院している天音に何かプレゼントを買って喜ばせたかったんだろうなぁ。金だって無かっただろうに……)


 皮肉にもそのことが自分の命を奪い、天音を助ける事になるとは……それはあまりにも可哀想すぎる結末だった。


「これがその……静音お姉様がプレゼントにと残した品です」

「それはピンク色の……リボンなのか?」


 葵ちゃんは自らの右足に巻かれたモノをオレへと見せた。

 確か天音にも同じく右足に赤色のリボンが巻かれていたと思う。


「きっと天音お姉様と姉妹になれた記念として、お揃いのリボンを身につけたかったんだと思いますわ」


 それはどこにでも売っている安物のリボンだった。

 お金の無い静音さんにとって、このリボンを2本買うのでさえ精一杯だったんだと思う。


 小さい頃からメイドとしてこき使われ、また満足な食事も与えられず暗くホコリが被ってる屋根裏部屋なんかに一人で住まわされた挙句、実の父親から「天音のために命を差し出せ!」なんて言われてもなお笑顔を浮かべて素直に従い、皮肉にも事故でそれが叶ってしまった。


(こ、これが真実だって言うのかよ……本当はこっちの方が()とかじゃなくて? なぁ……静音さん……)

「……っ……ほんとなんだよ……あの人……自分ばっかりさ……犠牲にしやがってよ……ぐすっ……」


 葵ちゃんから聞かされたの話はオレが知っている静音さんとは真逆の性格であった。

 そしてあまりにも不幸すぎる彼女の事を思うと目から涙が溢れ出してくる。


「葵ーっ! 何をしているのだーっ! 早くウチに帰るぞーっ!」


 来るのが遅い葵ちゃんに天音は痺れを切らしたのように怒鳴ると葵ちゃんは「もう失礼しますわね……」と去り際に言葉を残すと、そのままリムジンへと走って行ってしまった。


 そしてポッポッ、ポッポッ……と音がすると地面が濡れてゆく。

 一瞬自分の涙が落ち地面を濡らしているのかと思いサッと頬に手を当てたが、今度は手の甲に冷たいものが当たり雨だと気付いた。


 雨はまるでオレの心を表しているかのようにサーッと次第に強くなっていった。

 だがオレにはこれ以上どうすることもできず、ただ雨に濡れ突っ立ってることしかできなかった。


「がっ……なん……だよ……この頭の痛みは……がはっ……しず……ね……さ……ん?」


 突如としてキーンっと甲高い耳鳴りと共に頭が割れんばかりの痛みが襲ってくる。

 ついには立っていることさえ困難となり、そのまま前のめりに地面に倒れ込んでしまった。


 そして意識が途切れるその間際、誰か女性のような足が見えたような気がしてそのまま意識を失ってしまった……。


 第217話へつづく

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