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あな嫁~あなたの目の前に野生のお嫁さん候補(お嬢様)が現れた!!入力コマンドは!?……だがしかし、コントローラーにシカトされてしまったようだ。~  作者: 立花ユウキ/scarlet
第5章本編『終わる世界』

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第208話 気づきの理論構築と守銭奴静音さんの本領発揮

「そ、そうだ天音お嬢様! みやびさん! 実は先程、屋根から雨漏りの滴見ていたらこんなことを思いついたのですが、もしかしたら会社の……ひいては旦那様のお役に立てるかもしれません!!」

「雨漏りの滴を利用するのか?」

「雨漏り……ですか?」


 二人とも不思議そうな顔をしながら静音さんを見てしまっていた。当然といえば当然である。何ら説明なく、いきなりそんなことを言われても……との表情を誰しも浮かべてしまうだろう。

 だが、静音さんはそんなことはお構いなしに言葉を続ける。


「ええ、そうなのですよお二人とも! みやびさん……須藤グループでは小規模の水力発電装置を開発していましたよね?」

「へっ? ああ……あの用水路で発電できるようにと開発した代物でしょうか?」


「それが何か?」とみやびさんは更に不思議そうな顔をしてしまっていた。


 水力発電には『大規模』『中規模』『小規模』などいくつか種類がある。それぞれ規模は違うが『水を通してタービンを回すだけ』と仕組みはどれも同じである。

 大規模なものはご存知のとおりダムを利用した水力発電で、大きな水瓶(いわゆる貯水池式)を用いていて雨を貯蔵し放水する際の落下時にタービンを回す。


 次にダムほど大きくはない中規模の水力発電は、夜間に水を汲み上げて貯め(調整池式)、日中必要な電力を得る際に水を落下させタービンを回し発電をする。

 そして昨今注目されている田んぼなどの農業用水路を活用した小規模水力発電(マイクロ水力発電)などがあるのだ。これは水の流れや落差により羽根車を回し発電する。簡単に言えば田舎などで見かける水車と同じ原理である。


 また石油・石炭・天然ガスを利用する火力発電や原子力発電なども水を沸かし沸騰させ、その蒸気でタービンを回すので水力発電と原理は同じなのである。

 要は電気を生み出すには何かしらの力を用いてタービン回せばいいわけである。


「……それでその発電方法をこの東京(都会)へと持ってくるのです!」

「「はぁ!?」」


 ドヤ顔を決める静音さんを他所に天音もみやびさんも「何言ってるんだ?」と同じリアクションを取っていた。


「か、仮にですが、都会に用水路用の水力発電を設置するとアイさんは言うのですか? そんな無茶苦茶な……第一設置する場所がありませんよ。まさか地面を穿(ほじく)り返してやるわけではありませんよね?」


 みやびさんは呆れながらにそう反論したのだったが、当の静音さんはニヤリっと笑うとこう切り返した。


「ええ、もちろんそれは理解しております。ですから……『都会のダム』を使うのはどうでしょう?」

「都会のダム……ですか? あっ……」


 そこでみやびさんは先程静音さんが言っていた『雨漏りの話』と結びついたのか、何を言いたいのか察したようだった。

 そう都会のダムとは……


「そうです。雨水などが流れゆき地下にある生活排水を流す通り道、つまりは『下水道』を使うのですよ! これならば太陽光のようにあまり天気に左右されず、地方の農業用水路よりも水量が安定的ですので太陽光よりも安定した電力を得られるはずです。またビルなど高さがある場所でも応用できると思いますしね。それに何よりウチの製品を売りつつ環境保護を謳うこともできますし、またモーターを使うので自動車産業、主に電気自動車の技術やエアコンなどの家電に使われている技術を……」


 静音さんはそれからも言葉を続けてゆく。きっとニュートンが林檎の落下から万有引力説を思いついたように、彼女も雨漏りしている滴の落下からその着想を得たのかもしれない。もっとも電気を一般庶民に普及させたエジソンも最初はダムを用いた水力発電だったので、その意味では原点回帰とも言えよう。


「……というわけなのです。この考えはいかがでしょう、みやびさん?」


 静音さんは長い説明を終えるとみやびさんへと話を振った。


「確かに面白い着想ではありますが……果たしてそんなことができるのですか? そもそもダムのように数兆円の予算はかからないにせよ、半端な額ではありませんよ。その資金は一体どこから……そもそも話が長期的すぎてあまり建設的な意見ではないような……」


 みやびさんは静音さんのアイディアには一考する価値はある。

 だがしかし、予算や今現在須藤家が直面している問題の解決策にはならないと突っぱねた。


「ええもちろん。ですからその資金は第一に『個人の小規模投資』として募るのです。それこそ今の太陽光つまりソーラーパネルのようにです。ソーラーパネルは年数による性能劣化と廃棄する際の環境問題がこれからの課題ですが、ウチの製品である水力発電にはそれらがありませんからね。そこからエコロジーや環境保護を訴えれば協賛してくれる企業や自動車・家電産業などからも技術を提供していただき、そこから銀行や政府などが繋がり、どんどん規模が広がっていけると思われます。幸いウチには既に用水路用の発電システムがありますので一から(・・・)開発する必要もありません。むしろ更に小規模ですので製造費削減(コストカット)も計れ、銀行に融資をお願いする際に提出する事業計画を練る上でも容易なはずです。それに今の時代エネルギーは新興国でも必要ですしね、設備費用を低く抑える意味でも新たな市場(マーケット)を開くこともできるはずです」

「…………」

「…………」


 天音もみやびさんも静音さんが広げる大風呂敷の規模と発想に呆気に取られてしまっていた。


「あの……ダメ……ですかね?」


 沈黙に耐えかねたのか、静音さんは先程の自信に満ちた顔がやや曇り、不安そうに二人を見ている。


「いや……ダメではないのだが……個人とはつまり『一般家庭』を指すのだろ? このような話を信じてくれるかどうか……」

「ええ、もちろんそれはありますね。ですが紛いなりにもウチには用水路用の水力発電システムがありますし、少ないながらも発電や売電、環境を意識した取り組みをした実績は確実にあります。ただそれを『売り込む先』と『設置できる場所』がなかっただけなのです! 今までは『行政』単位でしか商売をできませんでしたがそれを企業や個人に販売し、また資金の面では個人規模にまで引き下げます。個人の方々には出資金に対する配当や利子でも良いですし、売電の一部からの利益還元などの方法で十二分かと思われます。それに今の時代、銀行に1000万円を1年預けても利息は100円にもなりませんからね。年に数%の利息とその上で個人の方々には元本保証でもすればすぐに食いつくはずですよ。それに今はネットの時代ですからね。ネットを上手く使い、例えば個人間の小規模資金によって配当金を得られるような仕組みを作るのも『市場活性化マーケット・スクランブル』とウチの会社の名前を売り込む良いきっかけになると思います」


 天音の質問にも一切動じず、静音さんはただ淡々と説明していた。


 静音さんが考えたその仕組みとは、今で言えば『クラウドファンディング』そのものであったのだ。

『名』と『実』とで取捨選択するのではなく、その両方を……いや、そこにプラスして昨今の地球環境問題に取り組む企業の心を(くすぐ)る『エコロジー』という大義名分までくっ付け、すべてを総取りする考えに至るとは……なんともはや、実に静音さんらしい発想であった。



 第209話へつづく

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