第110話 アリッサの親切と、その裏に潜む思惑
前回までのあらすじ!!
アリッサが元盗賊の頭と知らず担保に剣を預けてしまい、そのまま盗まれてしまうと思い急ぎアリッサの店に向かった。だがそれもオレ達の勇み足だと分かり、アリッサに謝ると互いの誤解が解けた。
そしてアリッサは何故今の自分になったかを、ジャスミンとの馴れ初めと一緒に語ってくれたのだった……
「ならアリッサは『貴賊』だったわけか……」
「貴賊だなんて、そんな大げさなもんじゃないさね。ただ善人から物を盗むのに気が引けて、悪い盗賊から奪っただけさ」
アリッサはそう言うと、照れを隠すように帽子で顔を隠してしまう。
「(アリッサって美人さんなんだけど、カワイイ女性だよなぁ~。まぁ怒らすとすぐ手っていうか、剣が出てくるから怖いんだけどね)」
オレはアリッサを見る目が少しだけ変わっていくのを感じていた。
「それでアンタら金が必要だったね。担保の剣もちゃんと受け取ったし、あとは……金額さね。で、いくら都合して欲しいんだい?」
そうそうすっかり忘れていたが、そこでオレ達は金を得るため長々と物語を紡いでいた事を思い出した。
「そうだったな!! でも、いきなりいくらと言われても……」
この世界の金銭感覚がないオレにとっては、いくら資金が必要なのか皆目検討もつかない。
そこであの人に相談することにした。
「静音さん。いくら借りればいいのかな? 今のオレ達に必要な額って……」
我らが知恵袋である僧侶・静音さんへと話を振り、知恵を借りることにした。
「そうですねぇ~。今のワタシ達は無一文です。まず当面の宿屋の代金と、それと武器や防具・回復草などの道具も必要になってきますしね。さてさて……」
そう言うと静音さんは、いくらあれば事足りるかと考えて悩んでしまう。
「ちなみになんだが……アリッサは私の剣を担保に、いくらぐらい金を貸し付けてくれるのだ? そこから考えるのも良いのではないかな?」
天音は必要な資金もそうだが、借りられる限度額を聞いてから考えてはどうかと提案してくれた。
「そうですわね。ある程度資金に余裕がないと、後々困ることになると思いますし、後から追加で借りるのも……難しいですわよね?」
「もきゅもきゅ」
葵ちゃんともきゅ子も、賛同するように頷き思ったことを口にした。
「そうさね。この場で決めてから後日また貸す! な~んてのはあたいも勘弁して欲しいさね。何せあたいの店の『運転資金』も含んじまっちてるしね。後から追加で言われても、出せない可能性もあるかもしんないね!」
「う、運転資金~っ!? あ、アリッサそんなことまでして大丈夫なのかよ!? それってほんとは店に使う金なんだろう? それでやっていけるのかよ!?」
オレはアリッサのその言葉に耳を疑ってしまった。
何故なら運転資金とは、お店を維持するために必要なお金で商品を仕入れる際はもちろん、アリッサの日々の生活費だってそこに含まれているからだ。
通常お店と個人とは資金は別々にするのだが、それは大手企業の場合だろう。アリッサのように個人で経営しているお店では、アリッサが生活するのに必要な食事代なども当然含まれているのだ。それをアリッサは、まだ会ったばかりのオレ達に貸し付けてくれるのだという。むしろ驚かない方がおかしいだろう。
もちろんそれには同等の対価である担保は差し出すわけだが、それにしても……である。
「そんなことまでしてくれるのか!? オレ達にはとてもありがたい事だけどさ、でも……」
オレは余りあるアリッサの好意に対して、少しだけ疑いを持ってしまう。まぁ今まで言葉を交わしてきた限りでは、それがアリッサの好意からくるものだとは理解していた。
「ま、まぁ……ね。あたいだってアンタが言ったように思惑がないわけじゃ~ないんだよ」
「あっ、やっぱり?」
(ほらきた、きたよおい。大体オレがフリをすると必ず『落とし』にくるんだよなぁ~。もうパターン化してるから次にくるのが分かってるんだぜ!)
オレは「やっぱりなぁ~」というような分かり易い表情をしていたんだと思う。アリッサもそれを察して、とても言いづらそうにしていた。
やはりアリッサの好意には『裏』があるようだ。けれどもオレ達は金を借りないことには何もできない。
いや、何もできないどころか……そうしてオレは覚悟を決めてアリッサに言い放った。
「アリッサ! 遠慮せずに何でも言ってくれ!! さもないと……さもないとオレ達は、メインキャラなのに餓死しちまうんだ!! ほら見て見ろよアレを!!」
オレはそう言いながら葵ちゃんの方を指差した。それに釣られるようにアリッサも目を向けた。
「葵ちゃんなんか腹が減りすぎて、頭からもきゅ子に丸齧りしてやがるだろ? しかも『生』でだぜ『生』で!! 生で食べたら絶対腹壊すと解ってて齧ってやがるんだぞ! もうヒロインにあるまじき行為だろ?」
「少し変な味してますが……お腹に入れば同じですわよね♪ (カジカジ)」
「も、もきゅ! もきゅ~っ!!」
(い、痛い! 痛いよぉ~っ!!)
葵ちゃんはオレ達が見ているのもお構いなしに、空腹に耐えかねてもきゅ子を頭から齧っていたのだ。
そんな葵ちゃんから逃げようと、もきゅ子はジタバタっと短い手足を懸命に動かしたりしているが、葵ちゃんから後ろから抱えられて逃げられない様子。
まぁ懸命というか……まさに己の命がかかってるのだ。もきゅ子だって文字どおり、懸命にならざろう得ない。
「そ、そうなのかい? な、なんだか大変なパーティなんだね……アンタらも」
そしてアリッサから引かれ……もとい憐れられてしまう。
そうしてアリッサもそんなオレ達を不憫に思ったのか、ようやくその重い口を開き理由を口にするのだった……
「お腹が減ったらもきゅ子を齧ろう♪」と、実は非常食であるもきゅ子を頭から丸齧りしつつも、第111話へとつづく




