14話:神へと至る
アレから一年。白城は、どこにも見当たらず、目下捜索中であった。
だが、こちらから探す必要がなくなった。《白王会》が《烈火隊》に宣戦布告を叩きつけたのだ。
飛天から大分離れた世界。何百年か前に無人となった世界に、《白王会》は存在していた。そう、コレは、《白王会》と《烈火隊》の全面戦争である。
「無双さん、準備は整いましたよ。おそらく、雑魚がこちらにせめて来るでしょう。それは、すべて私たちが受けます。ですから、強敵を潰してください」
「分かっているわ。この戦いでは、私も、蒼天も、アカハも、全力で戦うって決めているから」
そう、やはり、「実際問題使うことはない」とか蒼天は言っていたが、やはり、アレが必要になるに違いない。
「そう、じゃあ、私も、《翠華》として戦わせて貰うわ」
そう言った瞬間に、敵地に竜巻が巻き起こる。
「頼むわ、ハルカ」
「生きて帰ってきてくださいね」
私は、それに、あえて答えなかった。ハルカは、《死宮》を知っているのだろう。だから、こんな質問を……。
私は、この戦いで全力を出すと決めた。だから……。
徐々に天気が悪くなってきた。黒い雲が立ち込めている。だけれど、私の居る部分だけは、晴れている。何故か、それは、私が全力を出すと決めたから。
《葵雛》並みの速度、《蒼刃》並みの力、《紫雨》並みの鋭さ、《朱天》並みの回復力、その全てをフルに解放している。二本に分かれた《琥珀白狐》を持ち、全速力で、全力で、敵を葬る。
蒼天も出てきた。あいつも、全力のようだ。敵の二割をまかなっている。だが、おされ気味だ。アカハも回復役としてでてきているが、かなり危険な位置に居る。いつ死んでもおかしくはないだろう。
蒼天は、結果的に言うと死んだ。部下を庇い、全方位からの攻撃を受け、死亡したのだ。随分あっさりした反応かもしれない。だが、それが《死宮》なのだ。私は――死の宮へと導くもの。
アカハも死んだであろう。この戦いは、被害が大きすぎる。だが、私は、二人が死んだせいであろうか、おされている烈火をフォローしなくてはならない。コレに関しては、筋力、速度だけではどうにもならない。だが、私には、アレがある。
――絆の魔法
私の唱えたその一言により、戦場の様子は、激変した。
絆の魔法。《死宮》が、最も強く優しい一族と称される所以。特に優しさという部分だ。この魔法により、巻き起こる様々な現象。
フェアリーライフ。竜の力。自然を操る力。黒星天。様々な力たち。それは、私が今までに触れたものたちの力。
それが絆の魔法。
そして、戦場に残ったのは、白城一人。空には稲光が。
紫色の光が空を輝かせる。先ほどから、何度も、大きな音を立てあちらこちらに散るように、紫電が落ちる。まさに世界の終わりを髣髴とさせる暗雲と雷。そんな中、私は、一歩、また一歩と足を踏み出す。腰に携えた二本の剱をいつでも抜けるようにして。
敵も、一歩、また一歩とこちらへ向かってくる。白城という名前とは反対の真っ黒な髪を持ち、身の丈を裕に超える太刀を構える少女。
――ゴロゴロォ!
そんな雷鳴を合図に、私達は、同時に剱を抜き残りの距離を駆け抜ける。
――無双流秘奥義《絆》
それに対して、
――藍那流《椛咲乱》
この技は……。
「隊長……。やっと、やっと完成しました。貴女を超えるための剣。藍那流。椛が散るように消えてください」
私の体から血が飛び散る。
「昔、言っていましたよね。相討ちでも殺せればいいって。でも。隊長。貴女は、私と相討つことすら叶わなかった。つまり、私が最強と言うことで……」
そこで、彼女の言葉は止まる。
「なにっ、コレ……」
足からだんだんに凍り付いていく。それを見ながら、私は、息を引き取った。
――そして、契約は動き出す。
飛天王との契約。それは、魂の固定。コレにより、蒼天、私、アカハの魂は、永遠の時を生きることとなった。
蒼天との契約。それは、肉体の蘇生。コレにより、蒼天とアカハの肉体は元に戻る。……私の体?戻らない。そう、白城を殺すために、既に、固定化された魂を次の体に移していたから。そう、私は、私たちは神となった。
蒼天は、|《蒼海空逆巻立之神》《あおみそらさかまきたつのかみ》。全てを捻じ伏せる神。
緋葉は、|《朱光鶴希狂榧之神》《あけみつるきくるがやのかみ》。全てのものに癒しを与える。どのような者にも癒しを与えることから狂と言う言葉が記された。
そして、私は、|《天辰流篠之宮神》《あまたつるしののみやのかみ》。全てをつなぎ、何者とも戦う武神。篠宮の名にちなみ、この名となった。
そして、物語は、移り変わる。私の次の体。《氷の女王》へと……
三神物語、完
補完用の作品でしたので、話が飛びまくりの上に、短い話でしたが、お読みいただきありがとうございました。




