11話:過去
四十四年後。時空間暦で言う二百年。私は、飛天総会合に参加するため、飛天王の下を訪れていた。
「やあ、無双ちゃん」
「《蒼刃》」
蒼天が既にやってきていた。そして、もう一人参加者が居た。アカハだ。
「アカハ、何でここに?」
「ひゃ、ひゃい?あ、無双さん。えっと前回あったのは、百年くらい前でしたっけ。お久しぶりです」
そう、会うのは実に百年ぶりだ。剣の贈呈のときは、それぞれに、別々で渡されたため、最初に渡された私のみ、他の人物の剣を見ることが出来たから知っている。
「久しぶり。アカハ、それで何で?」
「僕が呼んだんだよ」
蒼天がそういう。
「《蒼刃》、あんたが?」
「うん、そろそろ、僕とキミが契約する頃だし、彼女にも出生の秘密を知ってもらおうと思ってね」
そうか、それもそうだ。あの話は、アカハにも関係ある話なのだから。
総会合が半ばまで終わった頃。
「えっと、すみません。王、話が」
「話?ぼくにかい?」
「ええ、それと緋葉さんも」
そういって、アカハを入場させる。
「ふむ、聞かせてもらおう」
話は、三百年前へと遡る。かつて、管理局ができる前、ある世界を中心に、数名家が集まって、その世界と周りのいくつかの世界を統治していた。その家々は、|《翠華》《すいか》、|《葵雛》《あおいびな》、|《蒼刃》《あおば》、|《朱天》《しゅてん》、|《白王》《はくおう》、|《紫雨》《むらさめ》、そして、|《死宮》《しのみや》だった。その家々は各々に、突出した能力を持っていた。
《翠華》は、自然と心を通わせ、あらゆる動植物どころか自然をも操ることができる能力を持っていた。
《葵雛》は、何よりも早い速度を持っており、その速さは、光をも超えたと言われているほどである。
《蒼刃》は、強力を持つ家で、世界を片手で破壊することすら可能だったと言われている。
《朱天》は、最も凄い回復力とそれを人に分け与える力を持っていた。現に、アカハは、その一族の子孫だが、同様の力を持っている。
《白王》は、独占欲の強い一族で、最も多くの部下を引きつれ、最も多くの世界を統治していたという。
《紫雨》は、最も鋭い攻撃性を持っていたといわれている。
最後に《死宮》。最も強く優しい一族と称される。《葵雛》並みの速度、《蒼刃》並みの力、《紫雨》並みの鋭さ、《朱天》並みの回復力(あくまで回復力だけで他人への譲渡は出来ない)を持ち、さらに、《死宮》固有の、ある能力を持っている。まさしく最強。まさしく、全てを滅ぼせる。悪魔のごとき力。《その力、死の宮へと導くもの也》。だから、《死宮》。
この合計、七つの一族が、戦いを始めたのだ。正確には、《白王》と残りの六家である。壮絶な戦いは、様々な世界への影響を及ぼし、合計二十八世界を滅ぼし、《死宮》以外は壊滅的状態で、《白王》が滅んで勝負が終わったのである。《蒼刃》、《朱天》は壊滅的ではあるものの、何とか生きていた。しかし、《翠華》、《葵雛》、《紫雨》は完全に消滅してしまったと思われる。そして、《死宮》は、《篠宮》と名前を変えた。
その後、《篠宮》は、内部分裂を起こし、本家の《死宮》の直系《篠宮》と分家の《東雲》が対立を起こした。もう一つの分家、《西野》は、《篠宮》につく形となり、激しい戦いの後、自分達の世界を滅ぼしつつ、《東雲》は壊滅したのであった。
《蒼刃》は、復興を試みるも失敗。数少ない実力者を管理局に派遣することで、復興を狙っている。
《朱天》は、各世界に行き、紛争地で、自分達の能力を存分に発揮しているようだ。
コレが、私たちの家の歴史。過去だ。
コレを知った王の反応は、
「そ、そんなことがあったのか」
などというあっけないものだったが、仕方ない。唖然としていて、言葉を失った状態なのだろう。理解が追いついていないようだ。もっと理解が追いついていないのはアカハのようだが。
「つまり、あなたたちは、ものすごく強いってことですか?」
王の質問に答えたのは、蒼天。
「ええ。といっても、強いの種類は別ですがね」
こうして、長い話をし、会合を無事、幕を閉じた。
(補完部分)
今回の話で、私の他作品「Si Vis Pacem, Para Bellum 」に登場する東雲と篠宮について昔起きた出来事がここで書かれている形になっています。




