10話:飛天王
私が無双流を完成させてから五十二年。時空間暦で言う百五十六年。私は、ある会合に参加するに当たり、飛天王に会うことになった。飛天王、噂には聞くが、実際に会うのは初めてだ。噂に聞く限り、飛天王は、明るい金髪と炎のような瞳が特徴の美男だという。剣の腕も達人級で、列火隊の深紅の部下でも手が出ないらしい。それほどの実力者で王なのだから余程統率力があるのだろう。
しかし、王との話をする前に妹さん(ようは姫)に会ったのだが、その反応がどうにも引っかかる。
「あの、本当に、兄に会われますか?」
「え、そうだけど」
「気をつけてくださいね……」
というやり取りをしたのだ。一体王に何があるというのか。
王の間に入る。すると、手掛けのついた回転椅子に座り、私のほうに背を向けていた。
「よく来たね。篠宮無双く……」
そして、言いながら振りかえり途中で動きが止まった。どうかしたのだろうか。
「う、う……」
う?
「うつくしぃいい!ご、ご婦人!ぼ、ぼくとけ、結婚を前提に、お付き合いしていただけませんでしょーか!」
き、きもい。なんだ、コイツ。マジでコイツが王か?まあ、いい。コレなら、利用できるかもしれない。
「ねえ、結婚は無理なんだけど、協力してくれない?」
「きょ、きょ、協力ですか?」
「そう、契約」
「け、契約ぅ~。何か淫靡な響き」
全然淫靡じゃないけどな。
「手を貸して」
「は、はい!」
手を伸ばしてくる飛天王。私は、その手の甲にキスをする。この契約を、契約した相手は忘れる。ただし、例外も居るが。飛天王は、例外ではなく、契約については忘れるだろう。さて、落ち着かせてから、会合の話をするとしよう。
会合の話をするのは、それから五時間と二十八分後になった。
「さて、取り乱してしまって申し訳ない。改めて、飛天王、アリオリスだ」
「篠宮無双よ」
「さて、会合についてだが、ぼくと無双さんと蒼天で行います」
そう、飛天総会合というらしい会合は、列火隊のトップの私と天宮塔のリーダーの蒼天、そして国王。この三人の会議だということは分かっていた。
「開催は四十四年後、日時は、まだ詳細が決まっていません」
「四十四年、か」
かなり先とは聞いていたが、まさか四十年も先だとは思っていなかった。
「それで、話す内容だが、互いの軍力についての集計だ」
軍力。例えば、列火隊。一門部下は十四人。私を含めれば、十五人が一門のチームに居る。三門も同じ人数が所属しているが、戦力換算すれば、一門隊が百、三門隊は一となる。ちなみに一門隊の九十一は私、六が白城、残りが他の子だ。
こういった換算した戦力を総称して軍力という。それを話すと言うことだろう。
四十四年後。それは、蒼天が示した予言の年。そのことに気づいたのは、もっとずっと後だった。




