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鍵屋の倅と付与術師  作者: 藻翰
16/19

夜の戦い


 何にも当てがないので本来はこういう時に色々な情報を後手になりながら集める必要があるのですが、


「急ぎだし、許可も出ているからいいぞ」

「ん。わかった」


 アイツが許可も出ているというので頷きを返して、鍵を生成。

 何もない空間に鍵を刺して右に回して鍵をあけるのはアイテムボックスの場所情報。


「こんなことされているって国民が知ったら暴動でも起きるだろうな」


 家の中から親父がそんな事を言うのですが、


「それすら記憶から消えてしまうのですから、問題ないんでしょう?」

「そりゃまあそうだな」


 アイツと親父は軽口を言い合っていますが、こっちは集中しながらしっかりと探し物。

 今やっているのはアイテムボックスを無理矢理こちらから繋ぐ行為。

 子供の頃に大体アイテムボックスの魔法を習うのですがその登録という作業は凄く簡単で、その代わりに闇の魔法の一つであるアイテムボックスを授けるという事になっているのですが、登録したという事はしっかりと記録に残るわけで。

 そこへ無理矢理マスターキーを使ってつなぐような行為を今、しているわけで。


「見つかったが……」

「ほら、場所が分かったんならさっさと行きな。家の戸締りはやっておくから」


 親父にそう急かされて、自分は少しだけ急ぎ足になりながらローブを着込みます。


「お前は来るのか?」

「余計な目撃者は居ないほうがいいだろう?」


 アイツはアイツで面倒臭いのか他に何か予定があるのか。

 一緒に来る気はなさそうで。


「じゃ、戸締りよろしく」

「はいはい」




 親父に戸締りを……任せていいのか正直言うと微妙ですがとりあえずお願いして自分は急いで家を出て向かう先はクリスの行っている学校から少し離れた位置にある訓練場。

 元々は人が多く住んでいたこの地域の集合住宅地だったのですが、人が都市部へ移動するにつれて周辺に当たるこの辺りに人が住むことは減っていき、一度捨てられた場所だったのですが、それをそのままの形でアイツや王宮の人間が買い取って市内を守るための訓練施設に。

 あえて壊れやすいまま残しているのは災害救助等を想定しているとアイツはよくいっているのですが、正直、直す金がもったいないという程度だという事は分かり切っていて。

 そんな訓練場にいつも人が居るわけもなく。

 さらに言えばこんな遅い時間に人間なんて普通は居ない訳で。


「格好の隠れ場か」


 アイテムボックスの位置情報を確認すると訓練場には複数の人間が居ることがわかる状態。情報通りであれば攫われた子供が居るはず。


「一、二、三……離れた場所に一、二……。となればこっちの二人が攫われた方か?」


 クリスの父親が居る方は三人分のアイテムボックスの反応で、少し離れた位置に二人分。

 普通は人質にもなる為攫われた子供達を優先して逃がすべきというところなのでしょうが、今自分は一人でここへ突っ込んでいるわけで。

 子供を抱えて戦えるかと言われると……まあ出来ないこともないけど、わざわざそこまでの危険を冒す必要性は感じないという所。


「多分……殺すなだろうし、多少の対策もされているかもしれないから……どうするかな」


 このローブを着ている時は結構色々と権限もあって、かなり自由にやりたい放題やってもいいのですが、結局その尻拭いをするのは自分。

 出来るだけ穏便に、事を荒立てることなくサクッと終わらせておいた方が本当は良いわけで。

 そんなことを考えて訓練場の近くまで来たのですが、


「ありゃ、やっぱり色々と対策されちゃったか」


 脳内のマップでアイテムボックスの位置が今まで分かれていたのに五人纏めて集まった状態に。

 こうなって来るとやはり少し面倒なので思わずため息をついてしまいますが、それは相手も同じだったみたいで、どうやらそのまま投降してくれるわけもなさそうですが五人で一度こちらへ出て来てくれるみたいで。

 訓練場の入り口の辺りへ一人出て来たのは予想通りにクリスの父親。


「まさかお前みたいなよく訳の分からない鍵屋が国の人間とはな。全く、世も末だよ」

「あのー、一応聞きたいんですけど、どうやったら記憶が戻ったんです?」

「…………」

「もう一度あなたの記憶に鍵をかけてこいと言われていまして」

「…………」

「あと、悪い事はやめろ?」


 そんな会話をクリスの父親としているのですが明らかな時間稼ぎというのは目に見えていて。

 アイテムボックスの位置はこちらを囲むように移動を済ませた状態に。


「怒りだ。私を馬鹿にして、騙して……お前もそうだ。そしてあいつ等も」

「あー、感情の起伏……。なるほど。勉強になります。次はそうならないように注意しますね」


 あえてこちらからも挑発するような言葉を投げると、


「次、次なんて無いんだよっ!!!」


 その言葉と同時にクリスの父親が何かを投げます。

 それはただの石ころですが、そんなものを投げてくるはずもなく。


「死ねっ」


 言うと同時に石ころは小さな爆発を起こすのですが、それは本当に小さな爆発。

 まあ目くらましにはなるかなという程度であまりにも弱いその威力にこちらが逆にあっけにとられてしまうのですが、


「ほら、付与魔法を施した武器は渡しただろっ!使いこなせるかは知らないが、欲しかったんだろう?対価は渡したんだから、頼むぞ。じゃあな、鍵屋」


 そんな捨て台詞を吐いて、残りの四人が苦笑いをしながらこちらへ。


「聞いていた威力よりかなり弱いんだが……、まあ現場判断でやれって言うのはこういう事だな」

「お金を貰うって……辛いっす」

「明らかに色々と間違えてるっ!」

「今から弓……遅いか」


 四人は少しだけ肩を落としながらゆっくりとこちらを囲むような形で出てきて。


「四対一ですまないが、死んでくれよ」


 リーダー格なのか、スキンヘッドの男が両手の拳を突き合わせて音を鳴らしながらそんな事を言ってきます。


「戦わないって選択肢は……」

「無しかなっす」


 最初に飛び込んできたのは語尾がちょっと面白い剣士。


「あの魔法の威力を見た後だとあまり期待は出来ないんですが、やるっすよ」


 そう言ってとりあえず剣をぶんぶんと十字に振ると風の刃がふわりと飛んできて。


「これじゃ切れないっす。そよ風の出る剣じゃ切れないっす」


 本人的には風の刃ぐらい出てくれると思っていたみたいですが、出てくる風は殺傷能力を持たないレベル。

 普通の剣と何ら変わりない状態で、そのままこちらへ向かってきます。


「得物が無いのに悪いっすね」

「なくても、無いなりに戦う事は出来るっ」


 あまりあれこれと開けると大変なので鍵を開けるのは自分の目と身体能力。

 敵の一人が言っていたいように遠距離武器を一人でも持っていればこうはいかなかったのでしょうが、幸いな事に拳、剣、槍、一人だけ同じようなローブなのでもしかしたら魔法を放つ場合もあるのですが、ローブの下にちらりと見えたのは盾なので多分それも微妙。

 そんなことを考えながら、鍵を開けたら一気に四人の制圧へ。


「剣士は剣が無ければそこまでじゃないよ……ねっ!」


 剣士の横薙ぎを後ろへ下がって避けると追いかけながら下から上への切り上げ。

 それをさらに後ろへ避けると、上に上げた手を下げるはずと読んでいた通りの行動を剣士がするので、地面を蹴って一気に前へ。

 内側に入ってくるとは思っていなかったみたいであまり腕に力が入っていない状態で剣を下ろすのですが、こっちの行動の方が一歩早く、内側に入ってしまえば肘鉄だけでも十分ダウンはとれるわけで。


「危ないので武器は回収しておきますね」


 肘鉄はみぞおちにしっかり入ったみたいで少しの間剣士の人は動けなくなったはず。


「二人で動きを止めてくれると刺せるぞ?」

「そういう行動は慣れているけど……連携ねぇ?」

「舐めてかかれる相手ではないみたいだしな」


 リーダー格は「ふんっ」と力を入れるとどうやら拳の周りに土……というかもう少しどうにかならなかったのかという様なガントレット。

 ローブの人も盾をギュッと握ると盾の周りに水がぽわわーと。

 正直その水に何の役割があるのかと言われると微妙な感じ。

 そんな二人を少し笑いながら自分の槍も同じようなものだろうと力を入れると槍は赤く火属性で結構コレだけいい感じに見えて。


「属性付与が出来るっていうから頼んだが……間違えたな」

「安いには訳がある……と」

「どうやら火はまあまあみたいだ」


 結局拳士はガントレットを捨て、盾を持つ男は微妙な顔をしながらこちらに向かってくるのですが、なんとなく本気な空気はもうない状態。

 そして何を思ったのか、


「殺さないでくれるなら適当に済ますが、どうだ?」


 いきなり殴りかかりながらもそんな事を言ってきて。


「ん。じゃあサクッと終わらせよう」

「「「は?」」」


 リーダー格の提案に自分としては乗ったつもりなのですが、二発目の殴りをそのまましゃがんで避けて体を反転させて伸ばした腕をつかんで投げつけます。

 投げつける先は盾を持った相手でいきなり人が飛んできてそれを避けることも受けることも出来ない状態。

 そのまま巻き込まれて盾の人も動けなくなって、そんな二人を唖然とした顔で見ていた槍の人は無防備。

 剣士の人の時と同じで距離を一気に詰めて肘鉄でみぞおちを抜いたらとりあえず四人が一気に戦闘不能の状態へ。


「悪いことするならもう少しダンジョンでいいから鍛えた方がいいっすよ。まあ、今回はこの良く分からない武器を貰うためだったという事で、武器類は全部没収。あと後ほど酒でも飲んでいたことにしますねーって……伸びていて聞いてないか」


 訓練場の中に入っていったクリスの父親を追いかけていくのですが、そこに生活感は殆どなくこんな場所に本当に人質である拉致された子供が居るのか怪しいと思っていると、奥から一人でクリスの父親が出てきて、


「なっ、あいつらは?」

「疲れていたんじゃないですかねー。寝ていますよ」

「く、くそっ役に立たない奴らだ」

「拉致した子供達、どこです?」

「は?」

「子供達は何処だって聞いているんだよ」

「それは、まだ、計画の段階で」

「え?」

「じゃあ、クリスは?」

「は?」




 ここにいるかと思っていたクリスはここに居なくて、計画していたはずのクリスの父親はここにいるのに拉致された子供も、クリスもここにいないなんて思っていなかったわけで。

 正直何が起こったのか良く分からないままぽつんと棒立ちすることに。





「さ、クリス……あなたはここでゆっくりしなさい」

「ねぇ、先生?今日は寮に帰らないでいいの?」

「ええ。いいのよ。あなたはここでこれからすくすく育ってくれればいいのよ」








スキル……ない人たちが集まっちゃってこういう事になっています。

スキルを封印できるとかそういうシーンが有ったらもう少しいい感じになったような気もするのですが、そうなってしまうとクリスの父親のショボい付与が見えなくなってしまって……。

あちらを立てればこちらが立たず。

噛ませ犬が普通に負けただけのような印象に。


そして、いきなり出て来た親父なんてやっぱり怪しいのは当たり前。


倅とタイトルにあるのに親父出ないと倅になれぬ。

さー一体、どこへ向かうのかしら?


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