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和平に続く道

食事の後は、アデレードとグレッグは庭の木陰に場所を移した。

庭で遊ぶ子供達の姿が見える。

もちろん、オットーやベイゼル、ディラン達護衛は付いている。



「このまま、帰したくないな。」

グレッグが横目でアデレードを見ると、ベイゼル達に緊張が走る。

「姫は我が国でも、休戦に導いた女神と呼び名がある。

しかも、孤児院で奉仕していたとなると、是非とも王妃にとの声も高まる。

姫が我が国に嫁ぐ事が和平になる。」


「そして、飽きて新しい寵妃ができたら和平も無くなる、未来が見えそうですわ。」

アデレードは、嫌そうに言う。


「バーラン王太子にそれがないと言うのか?

私は、姫は代わりのいない唯一の姫と思っているぞ。」

心外だな、とグレッグは言うが、アデレードの表情は緩まない。


「王家の婚姻が有効だとわかっています。

でも、私に普通の王妃を求められても困るわ。無理だもの。

ダリル王太子が永遠に私だけを愛してくれるかなんて、わからない。」

アデレードは目をつぶり、深く息をする。

「ただ、私が、生きていけないの。ダリルでないとダメなの。」

ふふふ、と目を開けたアデレードが笑う。

「恥ずかしいけど、キチンと答えようと思って。」

私が選んだのだと伝える。


ダリルに初めて会った時は、痩せ衰え死に近かった。

ダリルが生きる希望だった。

ジェリーに復讐をして、ダリルにもう一度会うために生きたかった。

ショーンや、ミュゼイラ、ウォルフ達たくさんの人に助けられてここまできた。

「私が、幸せになる事が、私を助けてくれた人達へのお礼だもの。」


「きれい事だな。」

グレッグが、つまらなそうに言う。


「ええ、きれい事してみたいでしょ?

私、命根性は凄いの。だから、汚い事だってするわ。

死にたくないから、和平を願っている。ただそれだけ。

ダリルも、殿下も死んで欲しくないわ。

死ぬ相手を選びたくない。」

美しい鳥だと思っていたアデレードは、籠には閉じ込められないとグレッグは知る。



「私が願うのは休戦ではないわ、終戦よ。」

「終戦ではなく、休戦が終わり、姫を得るために進攻するかも知れんぞ。」

グレッグの目はアデレードをとらえる。


「私は無謀で浅慮でした。周りに心配ばかりかける。今もそうです。

あの時、私の休戦の申し出を受け入れてくれた殿下こそが、誉めたたえられるべきです。

それがどれ程難しい事かは、今はわかります。」

アデレードの言葉に、グレッグは戦場でドレスをたなびかせて向かって来る1頭の軍馬を見た瞬間が甦る。


アルビノの赤い眼の馬に乗っているのがアデレードだと確信した時、何故に戦場にいるのかという思いと、ただ美しいという思いだった。

無我夢中で駆けだしていた。

アデレードを亡くしたくなかった。


「殿下はすでに、戦死した何万もの命を背負っているわ。それを増やすより、生きている国民を背負う方がいいと思うの。」

「きれい事だな。」

グレッグが、立ち上がる。

「オットー戻るぞ。」


バーラン王太子に飽きたら来るがいい、その言葉はグレッグの胸の中に消されていく。

唯一無二の姫、今は離れよう。

アデレードの手を取ると甲にキスをする。

それは、親愛の証か騎士の誓いか。


「今度、会うときは着飾ってルビーを着けてくれ。」

アデレードにそう言うと、グレッグは馬に乗った。



遠ざかる一軍を見送ると、アデレードはシスターや子供達に別れを告げる。


心配して待っているダリルに会いたい。

「バーランに戻りましょう。

ヌレエフもアレクザドルも見れてよかった。」

アデレードは、ベイゼルに告げる。


「この街で目立ったかも知れないけど、わずか3日で王太子が来るとは、アレクザドルは怖い国ね。」

こんな国とは戦争をしたくない。

武力だけでなく、情報力も格段なのであろう。


好戦的な国であるのは、民族的なこともあるだろうが、勝利する為に準備しているのだ。


孤児院の子供達も男の子は、兵士の訓練のような遊びで育つ。次々に兵士が育っていく。


漠然とした和平への思いが強い思いになる。

まずは、バーランに戻ろう。

結婚式が近づいてきた。



ダリルに会いたい。アデレードを乗せた馬はバーランへ向かう。


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