表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/78

ジェリーが繋ぐ関係

ジェリーはサザランド商会を出た後、行方不明になることはなかった。

ダリルの部下が見張っていたからだ。もちろん、助けも手出しもしない。


ジェリーは、いくらかの金を持って出たようだが、贅沢に慣れてしまったジェリーには幾日も持たなかった。

王都から少し離れた街の宿に泊まった時には、ロビンを連れていなかった。

途中の修道院に置いてきたからだ。


安宿の部屋で、遺体となってジェリーは発見された。

昨夜連れ込んだ男に殺されたのだろう、と言われたが、男はすでに逃げており、誰かもわからない男を捕まえる事は難しいだろう。





「これが、君の望みだったのかい?」

ダリルがアデレードに報告書を渡す。

アデレードは小さな種を撒いて、放置したのだ。

バーラン王宮の静かな部屋には、穏やかな光が差し込んで、窓からは小鳥のさえずりが聞こえる。


「正しい答えなどないわ。許せなかった、それだけよ。」

ジェリーが幸せに暮らしている事も、ジェリーを保護したスミスも。

私の苦しみを知らない、なかった事のように暮らしている。

人の罪を許すのが人だというのならば、人でなくていい。


「君はまた重荷を背負ってしまったのだね。おいで。」

そう言ってダリルは、アデレードを引寄せる。

強い瞳のアデレードは涙を流さずに、心の中で泣いていると知っているから。




ショーン・サンベールは、トルスト王国の王都には頻繁に来ている。

新しく領土となった鉱山の開発のこともあるが、捕虜となった兵士達の引渡しの調整など、代理大使と共にトルスト側と会議する為である。それも決着がつき、もう訪れる事は少なくなるだろう。


数人の警護と共に街を視察するのがショーンの仕事の一つだ。

サザランド商会を訪れることにしているのは、敗戦国で急な成長に疑いを持ったことが要因だが、今はジェリーの動向を探るためでもある。


サザランド商会の本店の奥が、私宅に続いている。

それで、ジェリーを見つけることが出来たのだ。

ショーンだけでなく、ダリルも探していたであろう。カーライルも探していたかもしれない。

それでも、見つける事がかなわなかった。王都にはいないと思われていた。


スミス・サザランドが隠そうとせず、元貴族の妻といっていたことと、商会の平民ということが不審に思われないことでもあった。


サザランド商会は、活気にあふれていた。

「失礼、サザランド会長に面会したい。」

ショーンは店員に声をかけた。

「申し訳ありません、会長は予定のない方にお会いできません。

予約を取っていただいて、こちらで調整させていただきます。」

店員は、ショーンを若い男と見ているが丁寧に言葉を選んでいる。


ざ、と警護がショーンの前に出るのに驚いたようだ。警護がつくような人物に思えなかったらしい。

「大丈夫だ。下がってくれてかまわない。」

ショーンが警護に声をかけて、自分の後ろに下げる。


「僕は、ショーン・サンベール。バーラン王国の者だ。

この名前をすぐに伝えてくれ、きっと会長も会いたがっているだろう。」

ショーンが穏やかに店員に言うと、ショーンの名前は知らなくともバーラン王国と聞いて店員が飛び上がる。

少しお待ちを、と言って他の店員に場を預け、店員が奥に駆けて行った。


店員をはじくように走って来たのが、スミス・サザランドだ。

お忍びで店に来ているショーンは何度か見かけた事がある。彼は時々、店頭に顔を出すのだ。


「貴方様がショーン・サンベール様ですか!」

肩で息をしながらスミスが、ショーンの確認をする。


「様つけはよしてください。ずっと年下です。

ショーンと呼んでください。もしかしたら、義父上と呼んだかもしれないのですから。」

ショーンの言葉に、周りの客も店員もぎょっとする。すでに注目の的だったのだから。

スミスが慌てて、ショーンと護衛を奥の部屋に案内する。



「来られたのは、ジェリーの事ですね。」

スミスがショーンにソファーを勧めながら尋ねる。

「そうです、あの女の事です。

スミス会長もそう思っておられるのでしょう? 遠慮はいりません。」

幾戦も経験したショーンは、見かけの若さに似合わず堂々としている。ソファーに座り、足を組む様は威厳があり、貫禄がある。

「そして、ロビンの事です。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ