表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/78

ダリルの捜索

雨の中を白い鬣の馬が疾走する。

陽が弱い、雨空はロビニーゴルにとっては得意な空だ。


泥が跳ね、アデレードの雨をすって重くなったドレスにかかる。

アデレードの体力が限界なのは、誰もがわかっていた。



アデレード達が戦場に着いた時、ヌレエフ王国が右陣営、左陣営をバーラン王国でアレクザドルと対戦をしていた。


ショーンは指揮本部のテントに飛び込むと叫んだ。

「地図をくれ。

土石流が起こった時の風と場所を教えてくれ!」

そのまま武官達と奥に入って行った。


「陛下。」

ルドルフは、アデレードの姿を認めると口を開いた。

「そなたを引き取ったのは、こんな事をさせる為ではなかった。」

女の子らしい生活をさせてやりたかった。


「いいえ、私が望んだのです。」

言いたい事はこんな言葉じゃない。ダリルは?

ダリルはどこ!?


「陛下、アデレードを頼みます。」

ショーンが飛び出してきた。

ダリルが濁流にのまれてから、3日が経とうとしている。

「ウォルフ、ベイゼル、来てくれ!」


「お兄様、私も行きます!」

アデレードが駆け寄ったが、ショーンは首を横に振る。


「ダメだ。

アデレードは足手まといになる。

分かっているだろう?

信じて待っていてくれ。」

その言葉が言い終わらないうちに、男達はテントを飛び出した。

その後を数名の兵士と衛生兵が後を追う。



「アデレード、こちらで休みなさい。」

後ろから、ルドルフが声をかける。

「陛下、眠るのが恐い。

少しだけ休んだら、救護室でケガを負った兵士の看護に参ります。」

眠って起きたら、訃報が届くようで恐い。

思いだすのは、遺体になっていたギリアン。


これが戦争。

アデレードの中で一つの思いが強まっていく。

愛する人を守る為にも、戦争のない時代を作りたい。

期せず、父親が戦争を避ける為にしてきた事をしようとしている。


「陛下、休戦は出来ないのでしょうか?」

アデレードは、椅子に座り武官からお茶を受け取ると尋ねた。


「両国が王太子を欠いた今が、タイミングがいいのだろうが、戦争を止めるきっかけが必要だ。」

きっかけ、ルドルフの言葉にアデレードが考え込む。


ダリル、お願い生きていて。

目を閉じるとダリルの顔が浮かぶ。




既に何度も、捜索隊がダリル達を捜していた。

僅かな生存者と多くの遺体を見つけたが、ダリルを探し出す事は出来ずにいた。


「探すところが違うのだ。」

ショーンは、ウォルフとベイゼルに説明する。


「アレクザドル軍の後ろから迫った土石流は、多くを流したが、大軍のアレクザドル軍を吸収するときの抵抗力で、かなり弱まったはずなのだ。

アレクザドル軍の前を走っていたバーラン軍は、逃げる事が出来たはず。」

わかって駆けていたバーラン軍と、知らずに駆けていたアレクザドルでは対応も違うのだ。

バーラン軍は土石流の流路から外れるタイミングを見計らっていた。

それでも巻き込まれる程とは、予想していた以上の大きな土石流なのだろう。


「本流である国境となっているスレンダー河に流れ込んでいるが、支流を逆流しているはず。」

風向き、土石流が流れ込んだ地点からすると、考えられる支流がある。

ヌレエフ側に支流が多いのは、ヌレエフに雨期があるからだ。

風の向きから支流の逆流を考える。


国境のスレンダー河は細い河だが、ヌレエフが雨期の時に水量が増える。

広い河原が戦闘地帯となっている。


アレクザドル側は河原の先は草原になり国内部に広がる。

ヌレエフ側は山がそびえ立ち、自然の要塞となっていたが、気候も変えていた。


ヌレエフ国では雨期だが、山脈を越えたスレンダー河では雨が降っていない。




ショーン達はヌレエフ側の支流を遡っていた。

そこにも、遺体が散乱している。

土石流の威力で木の枝に引っ掛かっているものもある。


全てがアレクザドルの兵士だということに気がついた。

バーラン兵士の遺体も、生存者もいない。

同じように流されたはずだ。もちろん、圧倒的にアレクザドルの兵士の数が多いのはわかっている。

土石流から3日も経つと、遺体からは腐臭がしている。


ショーン達は、土石流で運ばれた全てのものを避けながら進む。


大きな岩の陰に何かを見つけた。

それは、ダリルだ。

ダリルだけでなく、何人かの存在を見つけて、駆けつける。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ