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開戦

元ナデラート伯爵領が、バーラン国軍の後方駐屯地となった。

軍医などの別部隊が、元伯爵邸に待機することになり、物資もそこに保管された。


前線の砦では、ショーンが説明をしていた。

国境は山岳地帯である。

山の森林の中を軍が進行するのは厳しい、必然的に山越えではなく、裾野の街道から軍が国境突破してくるだろう。

トルストもバーランも、山岳地帯にある僅かな裾野に砦を設けている。

普段は人々が行き交う国境の街道は、両軍が集結していることで、誰も通行していない。


ショーンが指差すのは山だ。

街道の両側の山を爆破すると言うのだ。

大砲の照準を山の斜面に合わせて、崖崩れを起こす。

地図にX印が書かれる。

「ここと、ここと、ここ。」

ショーンの印は増えていく。

「トルストが国境線を越えたら、発射します。

先頭部隊は、難をのがれるでしょうが、後方部隊が巻き込まれます。

背中部隊も、これで多少は怯み隙ができるはずです。

王太子がどの位置で来るかが、問題ですね。」

ギリアンとは学友として過ごしたのだ、ショーンにとっても思いはあるだろうが、戦争は人を変えざるを得ない。


「先に言っておく。」

ダリルがその場にいるものに話し出す。

「アレクザドルは出てくるだろう。

王太子がくるか、第2王子が来るかで戦況は変わる。」

ダリルが地図に線を書いていく。


「陛下が第2師団軍と出陣予定だが、前線に出るのは難しいだろう。」

前線に王族が出れば、士気が上がるのはわかっている。

「こちらの戦況が有利なら、僕はアレクザドルとの戦闘に駆けつける。 」

トルストとの国境から、アレクザドルとの国境までは、隣国ヌレエフを越え、どれ程の体力がいるのだろう。


「殿下の負担にならないよう、トルストを早期に撃破しましょう。」

まずは、とショーンが大砲の配置を明記する。

夜があける前に、配置を終えるようにダリルが指示する。


トルストも大砲を打ってくるはずである。

損壊を推定し、陣形のパターンを考える。



国境を挟んで緊張が高まる。

お互い、大砲が届かない位置に軍隊を配置してあるが、均衡は長くはもたない。




突然の地響きと共にトルスト軍が進軍した。

同時に、トルスト側から大砲の砲弾が飛んできて、バーランの大地をえぐる。


「まだだ、もっと引き付けてから。」

ショーンが砲撃隊に指示する。

「まだだ。」

先頭部隊ではなく、本体が山崩れに入る位置を待つ。


トルストの先頭部隊は、バーラン領地で交戦に入った。

マックスが戦陣で迎え討つ。

怒声と蹄の音、両軍入り乱れての乱戦に爆音が響いた。


ダーン。ダーン!!

十数発の砲弾が山の斜面で爆発する。


一瞬の静寂の後、斜面は崩れ落ちる。

山崩れの爆音に叫び声も悲鳴もかき消される。


「ゾーテック!」

ギリアンは山崩れに飲み込まれた軍に叫ぶ。

目の前で崩れた斜面が、トルスト軍を飲みこんでいく。

「ゾーテック!!」


山崩れは裾野を埋めて止まった。

バーランとトルストを結ぶ街道は土の中に姿を消し、完全に切断された。

バーラン側に取り残されたトルストの先兵隊は、バーラン軍によって討ち取られる。


トルスト側では、土を掘り返して救出作業が始まっている。

5000を超える兵が埋もれてしまった。

この一瞬で、トルストでは兵の士気が落ち、残された3万の兵がひるんだ。



「このまま、山越えだ。」

ダリルが選抜兵に指令をだす。

「狙うは王太子。行け。」


200の兵が、混乱に乗じて山の中に入っていく。

トルスト側に感知されずに山に入れるだろう最大数だ。

トルストの3万の兵に、200のバーラン兵がたちうちできるはずもない。

バーラン兵は、トルストの駐屯基地が見える地点から、火矢を放つように指令されている。


「こちらから斥候(せっこう)部隊が出たように、トルスト側も出してくるだろう。」

警備兵に森を巡回させろ、とショーンが叫ぶ。

戦争は始まったばかり、最初の一戦はバーランが勝利したが、このままで終わるとは思っていない。


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