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罪のあがない

ダリルは、オロオロするばかりの家令に指示をだす。

「バーラン王国王太子ダリルである。

ナデラート伯爵家は没収となり、私の指揮下にはいる。

直ちに、子供を連れて来い。」


物々しい様子から、ただ事ではないと察していたが、伯爵家没収という言葉に意識さえ飛びそうである。

代々、ナデラート伯爵家に仕えてきたのだ。

家令は、ダリルに深く礼をすると答えた。

「昨年、奥様と離縁されたおりに、お子様は奥様が引きとられて出て行かれました。」


「忠義な家令だな。

離縁届は出ているが、廃嫡届は出ていない。

この家にいるだろう。連れてまいれ。」

ダリルの代わりにフランドルが言う。

「謀反の(とが)により、ナデラート伯爵家は断絶となる。」


守れないと悟った家令は、頭を下げて屋敷の奥に入っていった。

連れて来たのは10歳に満たない男の子二人。


アデレードに絶望のごとくの言葉を叩きつけられたハイデルは、歩く気力もないぐらいである。

呆けたように、抵抗もしない。

「父上。」

子供が呼び掛けても返事することもない。

二人の子供と共に馬車に乗せられ、王都に向かう。


ダリルは、兵士達に他に協力者がいないか、屋敷の中の捜査を命じて王都に向かった。


王家の姫を拉致するには、お粗末な計画であった。

大胆な拉致のわりに、王家と戦う準備もなく、武装兵士さえいなかった。

アデレードを拉致した後、誰にもわからず、屋敷に連れ込めると思っていたらしい。


それでも、他国の協力の可能性がないとはいいきれない。

王都での拉致の手際が、鮮やか過ぎた。

この男にあれだけの事が指示できるとは、思えないのだ。

恋に狂った男のなせる技か。


ダリルはアデレードの後を追うように馬を駆け出した。

ナデラート伯爵を乗せた馬車は、兵士達に任せ、ダリルの軍馬は風をきる。

後をフランドル、マックスが追う。




アデレードは気力だけで、騎乗していた。

拉致され、休む間もなくナデラート伯爵領に行ったのだ。

体力は限界を超えている。


逃げれなかったら、あの館に閉じ込められたのであろうか。

アデレードの脳裏に浮かぶ、情景。

この身を(けが)されたとしても、決して屈しない。

「私を手に入れる為に、罪もない人々の命を奪った。

絶対に許すものか。」

漏れいずる言葉。

「力づくで身体を手にしようとした、最低の男。

負けるものか。

心まで手にはいると思ったか、(おろ)かな人間。」


アデレード、ウォルフ、ベイゼルの馬が王宮の門をくぐる。

正面入り口に着いたアデレードは、馬から降りると、馬の顔に手をあてなでる。

「よく頑張ってくれました。

ゆっくり休んで頂戴。」

出迎えた兵士に馬を預け、自室に向かう。


「しばらく眠ります。

貴方達も休養をとって。

明日、午後に迎えをお願い。」

自室の扉を開け、侍女に外套をわたしながら、アデレードがウォルフ、ベイゼルに言う。


「食事はいりません。

オレンジジュースをサイドテーブルに用意しておいて。」

アデレードは侍女に指示を出すと、ベッドに横になった。

興奮していて眠れないかと思っていたが、疲れのあまり、すぐに眠りに落ちた。




ダリル達は、アデレードからずいぶん遅れて王宮に戻ってきた。

直ぐに王への報告に向かう。

すでに、国家反逆として、取り扱われている。

王の執務室には、第一司令官も来ていた。


「ただいま戻りました。

ナデラート伯爵が犯人と確証し、確保しました。」

「ご苦労であった。」

ダリルの報告に、王が言葉をかける。


ダリルが王の執務室を出て、自身の執務室に戻る頃には、報告が届いていた。

ナデラート伯爵邸の近くに、まだ新しい多数の馬の痕跡があったと言うのだ。




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