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ユリシア誘拐事件

サンベール公爵夫妻は程なくして到着した。

娘が殺されかかった、と聞いてきたのであろう。

ユリシアを見て、夫人が涙を流して喜ぶ。

「恐かったでしょ。

無事で良かった。」

「まさか、ボルドがこんなことをするとは。」

一人娘のユリシアの婿にとまで、考えていた時もあったのだ。


「王妃殿下、私は王太子殿下にお礼を言わねばなりません。

ラーニア、ユリシアと先に帰っておくように。」

そう言って、サンベール公爵は夫人とユリシアを残し、王太子の執務室に向かった。





王妃にアデレードを任したダリルは、執務室で報告を受けていた。

「殿下、この度は娘を助けて頂き、ありがとうございました。

なんと感謝していいか、言葉では表しきれません。」

公爵は、ダリルの顔を見るなりきりだした。


ダリルは、公爵を執務室の椅子に誘導すると、自分は正面に座り、報告途中のウォルフが横に立った。


「公爵、紹介しようウォルフ・キャストレイ。第1師団第3部隊長だ。この2年程、極秘任務で国を離れていたが、任務完了した。」


サンベールも名前は知っていたが本人に会うのは初めてだ。

フランドル第2部隊長とキャストレイ第3部隊長、王太子の時代を支える人物と言われていた。

しかし、軍とは部外者の自分に極秘任務と言っている。

「殿下、私どもに言ってよろしいのでしょうか?

もちろん、秘密は守りますが。」


「今は、サンベール公爵は無関係ではなくなったからな。」

ダリルがニヤリと笑うのを見て、公爵は今回の事と関係あると察した。

サンベール公爵は貴族議員の議長であり、内務大臣だ。だからこそ、ユリシアが王太子妃候補の筆頭となっている。


「今回、拐われたのは、大事な姫だ。

王太子妃にと思っている。」

ダリルの言葉に、アデレードの存在をしらない公爵は、ユリシアの事と思っている。

先ほどの部屋の奥に、アデレードが眠っていたのだか、居間にいたユリシアと王妃しか見ていない。


「名をアデレード・キリエ。ユリシア嬢と一緒に誘拐された。

父の妹のロクサーヌ姫を覚えておられるか?

その娘になる。」

ダリルの言葉に、サンベール公爵は驚きを隠せない。

初めて知るアデレードの存在、若き日に想い焦がれた美しい姫の娘。


「その令嬢が、娘と一緒に拐われたと?」

「そうだ。

ユリシア嬢はアデレードと一緒だったからこそ、助かった。

アデレードに付けた護衛が直ぐに拐われたと気付いて、行動したからだ。」

ダリルはウォルフに報告を促す。


「サンベール公爵、僭越ながら説明させていただきます。」

ウォルフは、公爵に礼をして報告を始めた。



「ボルド・ガルダンが、全てを白状いたしました。

少々手荒な事をしましたが、直ぐに口をわりました。

フルーラ・ボナペリの方は、私は悪くないというばかりです。」

ウォルフの言葉に、公爵は肩を落とした。

「信じたくはなかったが、ボルドなのだな。

私の弟の次男です。

我が家に、男の子が生まれなかったことから、ユリシアの婿にと考えていた時期もありました。

その為、ユリシアには婚約者を決めませんでしたが、成長するにつけ、ボルドの素行が悪くなり、公爵家を任せるのが不安になったのです。」

17歳の公爵令嬢ならば、婚約者がいることが多い。

だからこそ、ダリルが婚約解消になった時に、候補の筆頭になったのだ。


ウォルフの報告は続く。


ボルドは、公爵がユリシアを王太子妃にしようとしている事を知って、自分が養子になり公爵家を継ぐと思っていたらしいのです。

ところが、ユリシアが産む子供の一人に継がせるつもりだと聞いて、ユリシア暗殺を企てた。

そこで、旧知のフルーラが王太子妃の座を狙っており、ユリシアを邪魔に思っている事を知り、話を持ちかけた。

フルーラ・ボナペリは、高位貴族の男性を狙い、頻繁に王宮を訪れていたようです。

そうして知り合った一人が、ボルド・ガルダン。

他にも、数名の男性の調べがついています。

その中に穀物庫を管理する役人がいて、今回、その倉庫が使われました。


ボルドは、夕方には公爵家に連れ帰る予定でユリシア嬢を、王宮庭園のバラ園に誘いました。

だが、実際は、大量の蜂を放ち、人々が混乱している間にユリシア嬢とアデレード姫を拐った。

アデレード姫は身分を隠していた為に、爵位のない貴族の娘と思われ、一緒に拐われました。

アデレード姫に、ユリシア嬢殺害の罪を被せる為にです。

二人とも殺害し、アデレード姫の手にユリシア嬢殺害のナイフを持たせる計画だったらしい。


夕方までにユリシア嬢が帰らなければ、騒ぎになるだろうが、時間は十分にあった。

蜂騒ぎで離れてしまったユリシア嬢を探して、穀物庫でナイフに刺されて倒れているのを見つけるという予定だったらしい。


ところが、一緒に拐った下級貴族の娘と思ったアデレードは王家の姫で護衛が密かに付いていた。

蜂から姫を守る為に離れてしまったが、すぐに姫に異変があったことに気が付き、緊急体制がしかれました。

フルーラ・ボナペリは調査で表向きの令嬢とは別の姿があり、複数の男性と交友関係もあり、王太子妃になりたいと言っていた事がわかってました。

フルーラ周辺のいくつかに的を絞って捜索が行われ、穀物庫の鍵を役人がフルーラ・ボナペリに渡してあることを突き止めました。

我々が倉庫に駆け付けた時に、中から姫の声が聞こえたのです。

我々が飛び込んだ時には、アデレード姫とユリシア嬢は、今にもナイフで刺されそうな状態だったのです。


ウォルフが報告を終えると、ダリルが公爵に言った。

「ウォルフ・キャストレイは、この2年、密かにアデレードを守る任務に就いていたのだ。」




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