第2章 第20話 [ゴースト退治①]
転がっている怪物の頭をしばらく眺めていると地面に大きく空いたクレーター内に漂う砂埃も消えていた。
そして、その穴からノソノソと大剣を軽々と片手だけで持つ者が此方に近寄って来た。
と、
ロゼがその大剣を持つ者の姿を指差しながら驚きの声を上げた。
「お、お前は……シャルール・ミスカ!!? なぜこんな所に!!!!?」
俺、慶一はシャルール・ミスカという者を知っている……『世界四大戦士』の一人だからな……逆に知らない者は珍しい。
シャルールは背中に持つ大きな赤い翼で空中飛行しながら手に持っている大きな漆黒の魔剣で真空波を起こし敵を切り裂くという……このバトルスタイルからきたのだろう……親は口を揃えて夜に中々寝付かない子供に向かってこう言う。
『早く寝ないとシャルールが来るよ』っと……。
ついでにだが、背中の翼の色は元々は純白だったらしく、数々の闘いの中で翼に血飛沫が掛かり過ぎてしまいその色素が色濃く染み付いてしまい、色が取れなくなってしまったという……それと彼は鳥人族だ。
鳥人族はそこまで珍しくはない。
世界の十分の一は鳥人族だからな。
この世界には、『人族』『鳥人族』『獣人族』『魚人族』『機械族』『森精霊族』と、その他諸々色々な種類の種族がこの世界に存在している。
中には希少とされている『竜神族』『天神族』『悪魔族』という三種族もいる。 希少とされている理由は一生に一度すれ違うかすれ違わないかというぐらいに出会う確率で存在が少ないらしいからだ……余談だが俺は『人族』でシスは『竜神族の末裔』だ……ロゼは前に人族だと自ら言っていたが、カジノ島で見た光景からして果たして本当に人族なのかと俺は疑っている。
慶一はそんなことを内心思いながらロゼに聞いた。
「なぁ、本当にあの人がシャルールなのか……? なんか金髪に全身黄金の鎧装備で普通の奴とはどう見ても周りを漂うオーラが違うことは一目瞭然だが……そんな知り合いがいるとは……」
「本当にシャルールだ。 考えてみろ、禍々しく黒光りする大剣と真っ赤な翼の両方を持つ者がこの世に二人いると思うか……?」
「ま、まぁ……そうだな」
そんな会話をしているうちにシャルールが目の前まで来ていた。
ヤバっ!? 目が合った、殺される!!?
俺は急いで目を逸らした。
すると視界の隅に大剣を持たない左手を此方に伸ばして来るシャルールの姿が映った。
と、
「久しぶりだな……ロゼ」
シャルールはロゼの右肩に左手をポンッと置く。
その後、ロゼは気にくわない顔でその手をはねのけながら……
「気安く私に触れるな……まだあの時のことは許していないんだぞ」
「まだ根に持っていたのかよ……」
「当たり前だ」
……え? 会話が成立している!?
ロゼの言っていたことは本当だったのか。
本当にあのシャルールと知り合いだったのか!!?
でも何で……?
「なぁ、ちょっと話に割り込む感じで悪いんだけれど……何故シャルールと知り合いなの??」
ロゼの耳元で小さく呟くと、こう言われた。
「何故って……私とシャルールは同じ『ビルカ財団』の組織の者だからだが……? もしかして初耳だったか?」
は……? 『ビルカ財団』って言ったらこの世の金銭を牛耳っているとも噂が流れている程の世界最大の財閥の名前だが……ん、待てよ、ビルカって……え、ん……? ビルカ、ビルカ!!? ビルカって俺達に宝の地図と船をくれた人じゃないか!!!?
シャルールが『ビルカ財団』に所属しているというだけでも世界的大ニュースなのに……もう意味がわからなくなった。
俺の頭が混乱する中、ロゼとシャルールは会話をしている。
「そういえば、シャルール……何故こんな所に居るんだ?」
「あぁ? あー、チョっとした頼まれごとで……」
「頼まれごと……?」
「ん? あぁ内容は、簡単に説明すると『ゴースト退治』だ……この村でな」
そう言ってシャルールは目の前に佇む、村の門を潜って行く。
その後に何となく俺達三人も村へと脚を踏み入れた。
――村内に入ると、土で薄汚れた甚平を羽織る獣人の男達が汗水垂らして労働している姿が視界に映った。
それと気のせいだろうか……?
時刻は正午過ぎだというのに、村外と変わって辺りは妙に薄暗い印象がある。 闇というほどのものではないが、風景に薄膜がかけられているように見えるのだ。
本来は均等に降り注ぐべき真昼の陽光が、辺り一帯を漂う薄気味の悪い紫色の霧に遮られているからだろう。
見渡す限りに汗水垂らしてスコップを持ち土を掘り続ける男達、男達、男達、男達、それと老人が数人……不思議と女性・子供の姿が誰一人と見当たらない。
誰も俺たちの存在を気にせずに暗い表情で体を動かし続け……その様子は何者かに強制労働をさせられているように見える。
しかし、本当に信じられない状況は、そんなことではなかった。
「なんだ今の……!?」
不意に目の前に霧とはまた別の黒いモヤが過ぎり慶一が驚く。
形はハッキリしていなく大きさは分からなかったが……かなり大きい憎悪の念だということは感じ取れた。
今のが例のゴーストだろうか……?




