2章 第17話 [船の上の小さな冒険 ②]
「お、お前こそ、こんな薄暗くてカビ臭い部屋で何をしているんだよ!!」
倒れ込んでいる姿勢から立ち上がり、咄嗟に頭に浮かんだ言葉を使って言い返した。
するとシスは手に持っている紙切れを、慶一から死角になる背中の方に急いで隠し、初対面の人でも分かるような作り笑いをしながら言い訳を始めた。
「いや〜〜、何でもないよ……そういえばさっき途中で居なくなっちゃてゴメンねぇ……エヘヘヘヘ……」
このままじゃ答えを見出せないと思った慶一は、話を切り出す。
「なぁシス、その背中の方にある紙切れは何なんだ??」
「え!? バレてたの!?!?」
作り笑いが一瞬で崩れ、頰はぎこちなく忌避つりながら痙攣している。
嫌な所を突かれて動揺でもしているのだろう……。
「いやコレはね、この船を探索している時に落ちているのを見かけて一人コッソリと誰にも見つからないように拾ったわけじゃないし、コレがこの船に眠るすごいお宝の地図とかじゃないわよ!! だから期待なんかしても無駄だよ!!」
多分、最後の一言以外は本当のことだろう……いや、絶対に本当のことだ!!
最後の一押しの言葉を浴びさせる。
「シス、この船にお宝が眠っているんだな……そして、お宝の在り処はその手に持っている紙切れに印されているんだな」
そう言い終わると同時に、シスの顔を見てみるとトマトの一歩手前まで赤くなっていたので紙切れが宝の地図だと確信した。
「な、なんでわかったのぉ? 何、エスパーで私の心の中を覗いたとかぁアア!!?」
「いや、そんなスキルねぇよ」
慶一は、目を見開いて攻撃的な口調のシスにそう言うと手に持っていた地図を取り上げた。
「少し見せてくれ」
「いやぁアアア、取らないでぇえええぇ!!!!!!!」
「本当にちょっと見せてもらうだけだよ……何々、って読めねぇ!!」
その地図にはスキルの紙切れと同じ古代文字が書いていた。
「シス読めるか?」
「さっき解読している時に、慶一が邪魔してきたんだよ!!」
シスは顔を真っ赤にして怒り、慶一の手から地図を思いっきり引っこ抜いた。
「もう私の邪魔をしないで! あっち行って!!」
そうして俺は背中を押され、部屋から追い出された。
「はぁ、あの地図の宝が何か気になるなぁ……よし、こうなったら意地でも探してやる!!」
慶一は貯蔵庫の扉の前で、拳を硬く握り締め決意した。
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いくら探せど、どこを探せど、どこにもその宝らしきものは見つからない。
長い廊下で一人ため息をつき、一休みしようとその場にしゃがみ込む。
「ないなぁ……」
いつしかこの一言が口癖になっていた。
シスに部屋を追い出されたから五十分も探したが見つかる気配がないので諦め掛けていたその時だった。
『スタ スタ スタ スタ スタ 』
目の前の曲がり角から誰かが来るちいさな足音が聞こえたので、慶一は立ち上がり身を音の近くへと引き寄らせる。
(誰だろう……この小さな足音はモッフンかなぁ?)
俺は走って曲がり角へと着くと、身を捻り角を曲がった。
予想的中。 其処にはモッフンが居た。
(そういえば、船に乗ってからというもの、モッフンの姿をあまり見てなかったな)
そう思い慶一は通じもしない言葉で訪ねた。
「なぁ、モッフン。 お前一体どこに行ってたんだ?」
「ピョーーー!! んペャッ!!!」
モッフンは一回鳴き声をあげると、口から何かを吐き出した。
「ん? なんだこれ……鍵?」
慶一の足元には胃液で汚れた銀色の鍵が落ちていた。
俺はその鍵を拾いあげ、上から見たり、横から見たりと、多方向からマジマジと見ていた時だった。
「あ、それダァアアアアァァ!!!!」
シスが叫びをあげて此方に走ってきた。
「うお!? なんだよ、シス!?!?」
「それよ、それ!!」
走りながら俺の持っている鍵に指をさし叫ぶと、地図を両手で広げて見せつけてきた。
「この地図に書いてある宝ァアアア!!!!!」
「な、なんだと!? これは俺のものダァァアアア!!!!!」
慶一は手に持っている物がお宝だとわかった途端、ポケットの中に素早く鍵をしまった。
その行動を見たシスが声を張って言う。
「チョット、なんで隠すのよぉ!!!」
「いや、お前に取られたくないからだ!! 独り占めしてやる!!!」
と、言ってもこの鍵の使い道がわからないので、大人しくシスに鍵を差し出した。
「え、なんで? 私に鍵をくれるの??」
「いや、元はといえば……この宝を探してたのはシスだろ。 それに使い道わからないし……」
「け、慶一……」
シスは感激のあまり、涙腺が崩壊しそうになった。
「そういや、地図にはこの鍵はどんな使い道があるって書いているんだ?」
慶一は首を傾げて訪ねた。
しかし、なんの返答もなしにただ地図を見せられた。
「この鍵がお宝ってことまでしか書いていないのよ……」
「な、なんだと……!?」
慶一が顔を引きつらせて唖然としている時に、上の方から俺たちを呼ぶロゼの声が聞こえてきた。
「おい、少し予定より早いけどもうそろ着くぞ!! 上に上がってこい」
俺たちはその言葉に従い階段を駆け上った。
すると、海風に晒されながらあるものが視界に映った。
「おぉ、アレはもしや……」
慶一は思わず言葉を口から漏らす。
それに答えるようにロゼが言った……目の前に広がる光景に指をさしながら。
「そう、そのもしやは的中だ……アレが “エドキモノ大陸” だ!!!」




