2章 第12話 [人形使い]
「なんだ、お前!?」
ロゼは、目の前に居る漆黒のローブを纏う者にそう叫ぶように聞いた。
「……お前には……用は無い……」
そう言うと、正体不明の其奴はシスの方目掛けて素早い勢いで突っ込んできた。
黒い霧が漂う中、辺り一帯何かがキラリと怪しく光る。
「シス、危ない!」
そう言うとロゼはシスの前に立ち、腰に下げていたサバイバルナイフを手に持った。
「フッ……無意味」
漆黒のフードに隠れている口からそう言葉を発した瞬間、ロゼの持っていたサバイバルナイフが何かによって弾かれたように地面に落ちた。
「な、何が……起こった……!?」
ロゼが驚く中、正体不明の其奴は長い袖を肘の辺りまでまくった。
血が通っているとは思えないほど、白くて細い腕だった。
しかし、その貧弱そうな腕とは裏腹に掌からは、見るからに強力な青白い雷が放たれた。
その雷はバチバチと巨大な音を立てながら、シスの居る方まで向かって行く。
「ラムズ!!」
慶一はその瞬間、ヤケクソで雷魔法を使ったが逆に飲み込まれて青白い雷は、より強力になってしまった。
ーーーもうダメだ……と三人が思った時だった。
パキンッ!! と音を立てながら目の前一帯が急に氷の世界になった。 そして、青白い雷は消えて無くなっていた…いや、誰かによって止められたのだ。
そして次の瞬間、この氷の世界を誰が作ったのかが分かった。
「そこまでだ!!」
その声、氷の世界を作って三人を助けた人の正体は、ユリシアだった。
ユリシアは高い屋根の上から、みんなを見下ろすと、ストンッ!と華麗に屋根から地面に着地した。
「危ないところだったな……」
ユリシアはそう言い慶一達に笑顔を見せると、どこかいかつい表情で漆黒のローブを纏う何者かにゆっくりと向かって行った。
「お前……久しぶりだな」
そう言いながら、ユリシアは正体不明の其奴から漆黒のローブを破り剥がした。
すると、シスがこう叫んだ。
「ジャ、ジャミル!?」
「え、ジャミル!!? この前、俺が倒したはずーーー」
そう驚きながら慶一はそのジャミルだという姿を急いで見たが、知っているジャミルの姿ではなかった。
「おねぇちゃん!! なんでここに居るの!?」
シスは目を見開きとても驚いていた。
「王宮からの命令だ…それよりもまず皆んなで協力してジャミルを倒すぞ!!」
慶一達は訳が分からずも、ユリシアの掛け声と共に戦闘態勢に入った。
「一応言っておくが、周りの糸には気をつけろよ…」
「ユリシアさん……糸って……?」
慶一は糸なんてどこにも無いとユリシアに質問する。
「周りをよく見ろ、黒い霧のせいで見えづらいと思うが、稀にキラキラと光るものがあるだろう!」
ユリシアにそう言われ、慶一は目を細めて辺りを見渡した。
「あ、本当だ! なんかキラキラ光ってます!!」
黒い霧が漂っているせいで糸が光を反射しづらくなり、見えづらくなっていたのだ。
そして、ロゼのサバイバルナイフはこの周りの糸に弾かれ地に落ちたのだろう。
「やっと見えたか……気づくのが遅いぞ……」
「すみません……」
「謝らなくて良い!! それより今はこの戦いに集中だ!!」
ユリシアはそう言って腰に下げている剣を抜き、ジャミルに突っ込んで行った。
「フフッ、そんな剣でまだこの私を倒せるとでも思っているのか……??」
「何を笑っている?! もう私は昔とは違う!!」
ユリシアはそう言い、指パッチンをした…すると突然、何も無い空間から慶一が前に世界樹で見たユリシアのお供の精霊が出て来た。
「フッ、精霊一匹召喚したごときで何が変わる?」
そう嘲笑いながらジャミルは自分の人差し指の爪を剥いだ。 そして何か呪文のようなものを唱えながら足下に血を何滴か垂らす。
その血が地にじんわりと染みて行く…すると突然!! その血が地面に線を描き出し、魔法陣になった!!!
ジャミルが呪文のようなものを唱え終わると魔法陣は赤く眩しく輝きだし、そこから無数の手が這い上がる様に出てきた。
「フフッ……ユリシア……この私の強さを忘れてしまったのか?? ならばまた思い出させてやろう……フフフッ……私は “バラクシア帝国” の “バラクシア • ハーフルナ皇帝” に忠誠を誓い “バラクシア四天王のジャミル”!!!!!!……又の名を “人形使いのジャミル”!!!!! うヒャャャャャャャ〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!」
狂気に満ちた笑い声があたり一帯に響き渡る…。




