2章 第1話 [海を渡りたい……]
「船がないのか… どうやってこの海を渡るんだ…」
慶一はさっきからどんよりと落ち込んでいる。
「慶一、本当にここは港なの?」
「港だよ、地図を見ろ。 てか、周り見たら分かるだろ…」
慶一にそう言われたシスは、周りを見渡す。
確かに停船場や、どこまでも広がる広い海が見える。 しかし、船が一隻も無い。 いつも人々で賑わっているということで有名なこの港は、静寂に包まれていた。
慶一達が此処に来る、三日、四日前までは沢山の人々と船の姿を見ることができただろう。
丁度、三日前に大きな台風がこの港に直撃したのだ。
「ちくしょ〜う! あの台風さえ無ければ…」
そう言いながら慶一は右手を強く握りしめる。
その時、背後から少し甲高く奇妙な話し方をした声が慶一のことを呼んだ。
「ちょぉ〜〜〜と、そこの、お • に • い • さ • ん ! 船が見つからないノォ〜〜〜? 」
慶一は話し手の方を振り返ると共に思った。
「誰だよォォォーー 、 このカマァァァ!?」
見た目はすごいゴリゴリの筋肉質で、顔はまるでモアイ像のようにゴツゴツとしている。 でも、可愛くなれるように何か努力をしているのか、何処と無く綺麗なお目目をしている。
そんな、オカマ様にシスはこう強く言い放った。
「誰よ、アンタ!」
シスは遠慮というものを知らないのか…? 俺と初めて出会った時の態度はどこにいってしまったのやら…? と、慶一は思いながら小さなため息をついた。
そんな中、生意気なシスにオカマ様は腰を曲げ、顔を近づけてニヤリと微笑んでこう言った。
「あら〜〜〜、小さくて可愛いお顔! 私のと取り替えてほしいわぁ〜〜〜!!! キャハ!!」
いや、オカマ様…ゴリゴリ筋肉質の身体で童顔なお顔だとどのようなお姿になるか想像してみてください…。 怖いですよ? それにモアイ像のようなお顔をしたシスを連れて旅をする勇気は僕には無いので、顔を取り替えるとか冗談でもやめてください。
慶一がオカマ様を凄い形相で睨みつけていると、殺気を感じたオカマ様は慶一の方を見てニッコリと歯茎をむき出して笑った。
「どぉ〜〜したの? そんな殺気だっちゃて?
この子へのヤキモチかなぁ〜〜?」
オカマ様はそう言いながらピシッ! と、シスを指差した。
行動一つひとつがなんかうざい…。
慶一とシスの気持ちが通じ合った。
「まぁ、それはそうと、自己紹介まだだったわねぇ〜〜!!! 私の名前は、“ビルカ” っていうノォ〜〜〜!!! こんなに短い髪型だからかしら? よく男に間違えられるの!!! 酷いわよねぇ〜〜〜! ウフフフ!!!」
スミマセン。 僕たちも男だと思ってました…。
二人は心の中で謝罪をすると、ビルカに自己紹介をした。
「そういえばあなた達、この海を渡る為の船を探しているのかなぁぁ〜〜〜??」
慶一は「そうですとも!」と、縦に顔を凄い勢いで何回も振った。
「やっぱり〜〜〜!!! あなた達、海が渡れなくて困ってたのねぇ〜〜!! それじゃあ、あ • た • し • の • フ • ネ • を……」
「船を…?」
二人はゴクリと喉に溜まっていた唾を飲み込んだ。
「あげるゥゥゥゥゥ〜〜〜〜〜!!!!!」
その一言に二人が喜んでいると、ビルカはこう言ってきた。
「ただし、条件があるわ! その条件は、あ • た • し • の、お願いを1つ聞くことよぉ〜〜〜〜!!!!!!」
二人は身体的なお願いでは無いようにと、祈った。




