第23話 [哀しい少女の物語]
「竜の巫女…?! 」
慶一が少し戸惑い気味にそう言うとシスは「そう…私は竜の巫女…」と小さく頷いた。
「竜の巫女」とは昔からこの世界に伝わる物語に登場する哀しい少女のことだ。
竜の巫女なんか物語の中だけの話で、現実の世界にいるわけがないと思った慶一はシスこう言う。
「でも、竜の巫女なんて…ただの……物語じゃないのか?」
するとシスは首を横に振り、「物語なんかじゃない…真実……」と呟くと口を開かなくなった…。
「真実…」。 その言葉で、慶一は昔に母から話してもらった、「竜の巫女」の物語をフッと思い出した。
確かこんな感じの物語だった気がする…。
ーーー昔、ある村に一人の少女がいたんだけど、その村には少女以外の子供が誰一人居なくて周りは大人ばかり…。
だから少女は信じあえる友達が誰一人居なかった…。 そして家族も…。
遊ぶときはいつも一人。村の大人達は仕事が忙しくて誰も遊んでくれなかった。
少女はいつも思っていた…。
「友達が欲しい…」
ある日少女が、村の近くにある森で遊んでいると不思議な音が聞こえた。
「グルルルルルゥゥゥゥゥグ……」
森の奥からだ。
怖くなった少女はすぐに村へと戻り、大人達に森で聞こえた音について話した。
すると大人達の顔は真っ青になり、数人がその森へと急いで向かって行く。
その日から少女は大人達にその森に近づけさせてもらえなくなった。
森は少女が唯一笑顔になれる場所だった…。
一ヶ月ぐらい経ち、もう一度森へと行きたくなった少女は深夜にコッソリと村を抜け出し、森へ行こうとした。
しかし、森に着くまであと一歩という所で大人達に見つかり、「もう村から出さない」とその瞬間から村にある小さな小屋に監禁された。
遊ぶ場所が無くなってしまった少女は「友達が欲しい」と言う気持ちがより一層強くなる。
そして大人達にどんなに晴れた日も、土砂降りも雨の日も少女は変わらず何も無い室内に監禁され続けた…。
そんな生活が一年半経ち、空が曇っている日の出来事だった。
「ヴァァァオォォォォーーーー!!!!!!」と小屋の外から、あの時森で聞いた感じと同じような音が聞こえてきた。
次の瞬間、曇りの所為で薄暗かったはずの外が急に赤い光で明るくなった!!!
少女の周りの大人達は急いで外へ飛び出した。
周りから大人達が居なくなり、自由になった少女は小屋の扉を開いて、久しぶりに外へと出る。
ーーー外は最後に少女が見た光景と大分違った。
炎が勢いよく燃えていて、人や家を燃やしている。
少女はその場で立ち尽くした…。
熱い…煙臭い…そんなことはどうでも良かった…。
少女は泣いた…。
そして笑った…。
ーーー自由を手に入れたと思ったからだ。
村の大人達全員は炎で燃え死に、少女が閉じ込められていた小屋は黒く焼き崩れた。
炎が燃える…。 勢いよく、熱く燃え広がる。
少女が笑う…。 今までで、一番の笑顔で笑う。
少女が甲高い声で笑っていると、曇っている空の雲が不自然に消え去り、「バサッ!、バサッ!」と天高くから何かが降りてきた。
そして、「ドゴンッ!!!」という大きな音と共に巨大な翼を持つ首の長いトカゲのような生き物が少女の目の前に立ちはだかった。
……竜だ。
竜は「ヴァァァオォォォォ!!!!!」と少女に咆哮を上げた。
森で聞いた音とこの竜の鳴き声が同じだと感じた少女は竜の脚に抱きついてこう言った。
「貴方、私の友達になってよ!」
少女はより強く、竜の脚を抱きしめる。
すると、怒り狂っている筈の竜が落ち着き、少女の顔に自分の顔をスリスリと擦り付けてきた。
竜のその行動に少女は無邪気にはしゃぎ喜んだ。
そんな時間を数十分過ごしていると、竜は頭を下げてきた。
首を伝って背中に乗れということだろう。
少女が背中に乗ると、竜は勢いよく翼を羽ばたかし、空へと舞い上がった。
少女は竜の背中から見る世界に感動した。
さっきまで居た村がとても小さく見える。
少女は竜と永遠に友達だという約束を交わし、遠い空へと消えていった…。
ーーーまぁ、この物語の意味を簡単にまとめると少女は竜の意思を操る者で、村人たちはそれを知っていて、森に居る竜に近付くと少女は無意識に意思を操ってしまうので、なんかの拍子で少女が村を焼き払ってしまうのを恐れて監禁していたら、逆に少女の竜の意思を操るチカラが強くなってしまい、竜を村へと呼び出したって感じだ。
この物語は誰が作ったのか分からないし、内容が何個もあるらしい…。
慶一が知っているのは母から教えてもらったこの一つだけだが…。
慶一はシスに母から教えてもらった「竜の巫女」の物語を教えた。
母はこの物語を話し終えるといつも欠かさずに「この物語は真実よ」とかって言っていた…。
シスも「真実」と言っていた…。
「でも、真実だったら…シスが結構な歳になっているから違う…」
慶一が独り言を呟いているとシスがこう言ってきた。
「多分だけど…慶一のさっきの話を聞く限り、物語の中の “少女” は私のひいお婆ちゃんだと思う…。」
いくらシスともいえど、慶一はその言葉を全く信じることが出来なかった。
シスは慶一に信じてもらえないと思いながらも、話し続ける。
「実は私、慶一とパーティーを組む前は監禁されていたの…。 “バラクシア帝国” という、不死身の皇帝が支配する国にね…。 監禁される前はユリシアお姉ちゃんと旅をしていたのよ… 古の竜を探す旅をね…。 でも旅の途中で、バラクシア帝国の四天王の四人に捕まっちゃったの…なんか、世界を変えるとかいう目的でね…。 ユリシアお姉ちゃんは一生懸命私を守る為に四天王と闘ってくれていたけど、全く歯が立たなかった…。 確か四天王、四人の名前は、“スージャス” “マエラン” “ミールス” “ジャミル”の四人だっーーー」
慶一は四天王の名前を聞いて叫んだ!
「おい! 今ジャミルって言ったか!?」
「う、うん…。」
シスは急にのことで戸惑う。
そんなシスの様子も御構い無しに「ジャミルは俺が倒したぞ!」と言い誇らしげに慶一は世界樹でジャミルと闘かった時の話をする。
シスは慶一の話を聞き終わり凄いと思う中、一部を不思議に感じた…。
「ユリシアお姉ちゃん、ジャミルの顔を覚えてなかったのかなぁ?」
シスはそう感じながらも、さっきの話の続きをした。
「それで、四天王達は“竜の巫女”である私だけを連れ去った…。 そして、バラクシア帝国の王宮の地下に監禁され続けられたの…。 でも三ヶ月ぐらい経った日に、昔、バラクシア帝国を出て行ったっていう姫が来て、内戦が起こったの…。 その時、警備は緩くなっていたから、やっとの思いでだけど国から抜け出すことが出来たの…。 それから、色々な街を転々と行き渡り、最近勇者がパーティーから外されて一人になったという噂をきいたの…。 そう、その勇者っていうのは “慶一”のことだよ…。 そして、慶一に守ってもらおうと近づいたの…。」
慶一はシスの無邪気さの裏に隠れていた過去を知ってしまい何も言えなくなった。
「私と一緒にいると良いことないよ…。」
そう言うと、シスは慶一に「またね。」と作り笑いで急に別れの挨拶をしてきた。
慶一は勇気をもってシスのその行動に物申す。
「おい、シス!!! 俺は、お前を護る!!!
どんなに強い敵がシスを狙いに来ても、俺が倒す!! その前に俺と約束しただろ!! 世界中に散らばる、スゲ〜魔法を一緒に全部探し尽くすって!!! 忘れたとは言わせねぇぞ!!!」
…慶一に初めて本気で怒られた。
そして、シスの瞳から大粒の涙が溢れでて来た。
慶一が怒ったから泣いたわけじゃない…慶一の優しさに泣いたのだ。
「ゔっ、なんで…? 今の私の話聞いてながっだの? 」
シスは青い瞳から涙を流しながら慶一に問うと返って来た言葉はこうだった。
「聞いてた。」
「ゔっ、ヒグッ! じゃあ、なんで!!」
「お前の仲間だからだよ!!! 仲間を守るのは当たり前じゃねぇ〜〜〜かァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!」
慶一はそう叫ぶとシスの近くまで駆け寄り、シスを強く抱きしめた。
その時シスは、慶一の目にも涙があることに気付いたが何も言わず、慶一を抱きしめた。




