第21話 [ジャミル]
慶一達は世界樹を出るとすぐにさっきの男の姿を発見した。
男は慶一達に気付き「ちっ、」と舌打ちをすると、走るのをやめてその場で足を止めた。
「なんだよ、しつこいなぁ〜」と男が喋りだした。
そしてまだ男が何かを喋ろうとしている中、ユリシアは「氷結魔法! アイスワールド!!!」と言い、あたり全体を凍らせた。
それを見た男は「今日俺は闘う気がなかったけど、そんなに闘いたいのなら相手したあげても良いよ?」と上から目線でユリシアに言うと自分の名前を名乗り始めた。
「俺の名前は “ジャミル” …。 まぁ、覚えても仕方がないか…、お前らは今、この場で俺に殺されるからね…。」
ジャミルはゆっくりと赤薔薇を胸ポケットに入れると、右手を前に出しポツリとこう言った。
「雷炎魔法 黒柱」
ジャミルの掌から、雷を纏った円柱形の漆黒の炎が勢い良く噴き出し慶一達に襲い掛かる。
慶一達二人は、うまくかわした。
ジャミルの魔法を見たユリシアがこう言った。
「何なんだ! この魔法は!? 」
その言葉が聞こえたジャミルは一言真顔でこう言った。
「禁断の呪文。」
慶一はその隙に「ラムズ!」と攻撃した。
そして、雷がジャミルを襲う!
ジャミルは慶一の顔を見ながら不敵な笑みを浮かべると、タブレット状の薬をズボンのポケットから取り出し、口内に入れて噛み砕いた。
すると、両腕がブクブクと膨れ上がり、それに続き、足、頭、身体全体もふたまわり大きく膨れ上がった。
さっきまでのジャミルの姿は跡形も無くなり、見た目は肉団子の様になった。
体が支えきれなくなったのだろう、ジャミルは四つん這いになりノロノロと動いている。
「ゔッ、…王よ。 必ず、この私が…ヴッ!?、
ヴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!」
何がどうしたのか、ジャミルは急に龍のような咆哮をあげた。
あまりの声量に慶一達の身体がすくむ。
「ーーーーーーーーーークッ」
ジャミルはゆっくりと動き出した。
だが気付くと、もう慶一達の目の前に居た。
そして、ジャミルはのったりと右腕をあげ、慶一達に振りかざす。
「ーーーーーーなに!?」
見た目で油断をしていた…。
容姿とは裏腹にスピードがとても上がっていいる…。
ジャミルの攻撃を間一髪で避けた慶一達は、足元を見てゾッとした。そこには、まるで隕石が落ちてきたかのような深い穴が空いていたのだ。
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慶一はラムズの応用で、ユリシアは持ち前の速さを使いながらジャミルと奮闘している。
慶一がジャミルの気を引いているうちに、ユリシアは背後に回り氷結魔法で脚を固め、ジャミルの動きを止めた。
しかし、そんな苦労もあっけなくジャミルは身体の身動きを封じている氷を腕で叩き砕いた。
その光景を見てユリシアは「ダメか…。」と悔しがっていると、ジャミルは大きな腕を鞭のように使い慶一を薙ぎ払った。
慶一はユリシアの視界から消えてしまうほど遠くまで吹っ飛んだ。
慶一は空中で舞う中、「やばい、これ死んだな…」などと思っていたらユリシアの精霊が駆けつけ草木をクッションのように柔らかくし、身体を受け止めてくれた。
慶一は精霊にお礼を言うと、すぐにユリシアが居る闘いの場に戻った。
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さっきの場所に戻ったは良いがユリシアとジャミルの姿がどこにも無かった。
ユリシア達を探していると「危ない! 慶一!!!!!」と叫び声が聞こえた。
後ろを振り返ると、其処にはジャミルが居た。
そしてジャミルはまた、「ヴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!!!!!!!!!」と頭が痛くなるような唸り声をあげた。
その咆哮を目の前で聞いて居た慶一はすくみながらも、気絶しないようにグッと耐えた。
ジャミルの右腕が慶一の真上で天高く上がった。
「ーーーー慶一!!!、 逃げろ!!!!!」
ユリシアの叫ぶ声が聞こえたが慶一は足が震えて動けなかった…。
慶一はこの場から動かずに一撃から助かる方法を考え、思い付いたが実行するのに悩んだ。
しかし、悩んでいるすきにもジャミルの右腕は慶一に迫っている。
そして、慶一は「クッ、あまり使いたくない魔法だけどしょうがない……」と言うと、ユリシアにこう叫んだ。
「離れてください!!!!!」
ジャミルの腕が向かってきているの中だったので、言葉を短縮し過ぎてしまいユリシアには慶一が何故そのようなことを言ったのかが伝わらなかった。
「慶一、私はあなたを見捨てて逃げーーー」
慶一はユリシアが話す中、言葉をかぶせてこう叫んだ。
「早く、遠くに行けぇぇぇ!!!!!」
その言葉を聞いてユリシアは訳も分からないまま、慶一に言われた通りに遠くへと走りだした。
ユリシアが遠くまで離れたことを確認すると少し早口でこう言った。
「細菌魔法 ブリード!!!!!」
周りの草木が枯れる…。
そして、ジャミルにもすぐに異常反応が起き、その場で倒れ込んだ。
「我らが、王よ、ぉ、ゔッヴ… 、、、…」
そう言いながら、ジャミルの身体は焼け焦げたかのように黒くなり、白い骨だけを残してドロドロに溶けていった。
慶一は足元に転がっているジャミルの屍を見て何処か心が傷んだ。
「俺が殺ったんだ…」
そんなことを言っていると、ユリシアが慶一のそばまで来てこう励ました。
「慶一…。 さっきあなたが殺ってなかったら、確実に私達二人は死んでいたわ。」
慶一は頷くとジャミルの屍の側に落ちている赤薔薇を拾った。
「さぁ、シスちゃんの所まで急ぐわよ!」
ユリシアがそう言うと、二人はレヴィンチに向かって走り始めた。




