第12話 [伝説]
ーーー泣いているとおじさんは慶一の目の前に立ち優しく頭を撫でた。
「悔しいか……?」
そう聞かれた慶一はコクリと頷いた。
「うん、悔しい」
涙を拭き、声を震わせながらそう答えた。
ーーーしばらく沈黙が続いた後、慶一の手を取り、立ち上がらせると「中に入ろう」と言い家に入っていった。
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「ーーーそういえば私はまだ名乗っていなかったね。」おじさんはそう言いうと椅子から立ち上がり、そのまま話続けた。
「私の名前は エドワン」
慶一はその言葉に耳を疑った。
「……エ、エドワン」
思わず口からその言葉が出た。
「おぉ、知ってるかい?」
逆に知らなきゃおかしい。
エドワンとは昔、大魔王を倒したという伝説のパーティーの一人だ。
慶一は人違いかもしれないとエドワンに質問した。
「すみません! エドワンってあの大魔王を倒した伝説のパーティーのエドワンですか?」
そう聞かれたエドワンは「そうだよ」と頷いた。
「な、なぜこんな所に?」またまた心の声が…。そして慶一は伝説のパーティーの一員を目の前にきょとんとした顔になる。
「色々あってね。まぁ一言で言うと“引退”だね。」
エドワンはそう言うと目の前にあるコーヒーが入っているコップを手に取り一口飲み終えると、再び話し出した。
「少し昔ばなしをしてあげよう。」
慶一は嬉しそうに頷いた。
「この話は丁度四十年前、まだ大魔王がこの世界で好き勝手やっていた時代だ。」
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「ほほ〜う。ここが誘惑の森かぁ〜。誘惑するものが一切無いじゃないか。」
そう言うと、その男は自分の少し伸びた顎髭を撫でた。
「いや、油断しない方が良いわよ……カミル」と少し危険なオーラを纏った美女がその男に言った。
分かったとは思うが、“カミル”とは“その男”の名前である。
そして今、カミルに話し掛けた美女は“サーラン”という名である。
そこに二人組みが遅れてやって来る。
「おい、遅いぞ! どうした! 」
カミルは少し切れ気味な口調で二人組に遅れた理由を聞いた。
「ハァ、ハァ、お前らが速すぎるんだよ。なぁ、エドワンもそう思うだろう〜」
「ハァ、コーダルの言う通りだ。ハァ、ハァ、カミル、俺達二人はお前らと違って馬鹿みたいに運動神経が良いわけじゃ無いんだぞ。」
エドワンのその言葉にカミルは言い返した。
「なんだと? 別に俺達は運動神経そこまで良くは無いと思うぞ? 逆にお前ら二人が普通より劣っているだけだ。」
エドワンは『カチーン』とブチギレた。
「今の言葉を訂正せい! カミル!!!!!」
「あっ、何だって? ……エドワン? もう一回言ってくれ」
エドワンとカミルはバチバチと睨み合う。
その二人の間にサーランが割り込んで一言。
「今は仲間同士……仲良くしましょうね」
二人はニッコリと笑顔を浮かべるサーランを見て寒気がした。
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エドワンとカミルは仲直りをし、森の奥へと進むと、とてもとても大きな樹が見えてきた。
「サーラン、あれが今回の目的地か? 」
カミルがサーランにそう質問すると、サーランはゆっくりとこう答えた……。
「そう、あの大樹が今回の目的地、世界樹“ヘブン”よ」
「ほ〜ぅ、あれが”ヘブン“か…なんか凄いゴツゴツしてるな……でも不思議だよなぁ、こんなに大きいのに森の外からは見えないなんて…」
エドワンは腕を組んでよ〜く考えるが、仕組みが全く分からなかった。
そんなエドワンを見て、サーランは「ふふふっ、」と少し遠慮げに笑い出した。
「エドワン、それを今から解明しに行くのよ。」
そんなサーランの言葉にエドワンは少し頰を火照らせながも「そうだな!」と照れを隠した。




