第10話 [三大怪物]
ハレル村を出発して一日がたった。
レヴィンチを目指して走っていると何かが見えてきた。
「なんだアレ?」と言って慶一は目を凝らして見る。
何かがモゾモゾと動いている。
「シス、なんかアレ動いていないか?」
そう聞くとシスは何か恐いものを思い出したような顔つきになり叫んだ。
「慶一!! ダメ! 一回戻ろう!!」
しかしもう遅かった。
二人の目の前にはとてもとても大きな怪物がいた。
シスは急いで慶一に説明する。
「今、目の前に居るのは“三大怪物“の一つのミノタウロスで、強さは大まかに言うとこの間 戦った森の主の10倍以上だよ」
三大怪物なら慶一も知っていたが実際に見たのは今日が初めてだ。
「シス、三大怪物を見るの今日が初めてか?」
「いいや……今、目の前に居るやつは今日が初めてだけど前に違うやつを一度見たことがある……前に本でミノタウロスのイラストを見たけど、こんなに大きいとは思わなかった……」
シスはそう言うと慶一の服の袖を掴んだ。
慶一はこの状況をどう切り抜けようかと一生懸命考えるが何も思い浮かばない。
「ーーーーー畜生、」
慶一はそう言い下唇を噛んだ。
瞬間、ミノタウロスが攻撃してきた。
「ヴォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!」
そして雄叫びを上げた。
すると、周りからモンスターがうじゃうじゃと出て来た。
「慶一、もう周りを取り囲まれて逃げ場が無いよ」
シスはパニックになり泣きながら暴れだした。
「うわ〜ん!! もう死ぬんだ!! うわ〜〜ん!!!」
シスを見ていると自分まで頭がおかしくなりそうだと
慶一はシスから目を逸らした。
そして呟いた。
「まだどんな魔法かは分からないが、使うか……」
右手を空に向かって伸ばし慶一は叫んだ。
「細菌魔法! ブリード!!」
すると、慶一の周りのモンスターが溶けながら次々と消えていく。
その光景を見た慶一は急いでシスの居る方向を見た。
自分でも分からない内にコントロールが出来ていたのかシスは無事だった。
ミノタウロスの居る方を見ると脚だけだが、溶けかかっている。
動きが鈍くなっている内に二人はその場を離れた。
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「ハァ、ハァ、ここまで来ればもう大丈夫だろう」
そう言ってシスの方を見る。
そして、シスの様子が何処かおかしいことに気がついた。
「おい、シス! 大丈夫か!?」
返事が返ってこない。
いつもならすぐに返事が返って来るのに…。
心配になった慶一はシスの身体を揺らした。
「おい、シス返事しろよ! 嘘だよなぁ! 嘘だろう!」
そう言って慶一は泣き崩れた。
「ゔぅ……初めて信頼出来る仲間がやっと見つかったのに……」
「おいシス、いつも通り笑ってくれよ〜! なぁ、さっきまで笑ってだじゃないかよぉ〜」
慶一は両手でシスを抱えながら泣いている。
涙が一滴シスの顔に落ちた。
すると一瞬だがシスは目を覚ました。
「はぁ……はぁ……慶一……短い間だったけど……とっても楽しかった」
ニッコリと笑いシスはまた、目を閉じた。
シスをよく見てみると、細菌魔法で受けたダメージの痕が首の辺りにあった。
それを知った慶一は自分を怨んだ。怨む、怨む、怨む、怨む、怨む、怨む、怨む、怨む、怨む、怨む、怨む!!!!!!!!
そして今まで体験したことがないほどの悲しみが込み上げてきた。
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今の状態のシスだったらレヴィンチに行き治療して貰えば、まだ助かる。そう信じて慶一はシスの命を救うためにレヴィンチに急いで向かう。
しかし、途中にはさっきのミノタウロスが居るかもしれないことに気がついた。
それでも慶一はシスを背負いながらどんどん先へと進む。
ーーーしばらくすると、さっきミノタウロスと戦っていた場所まで着いた。
「ハァ、ハァ、良かった。 居なくて」
そんなことを呟きながらレヴィンチへと急いでいると、『ズドンッ!!!』という音と共に上空からミノタウロスが降ってきた。
慶一はシスをゆっくりと地面に置き、走ってミノタウロスを自分の所に引き寄せた。
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シスからだいぶ離れた所で慶一とミノタウロスは戦っている。
ミノタウロスの戦い方には全く隙が無い。
慶一はミノタウロスの目を目掛けてラムズを使った。
だが、擦りもしなかった。
「チッ、やっぱりダメか。」
そう言っている隙にも攻撃して来る。
「うわぁぁぁぁああああああああーーーー!!!」
慶一は間一髪でその攻撃を交わした。
『ドゴンッ』
その音と共に慶一の記憶は吹っ飛んだ。
ミノタウロスに殴られたのだが、慶一には何が起きたのかが分からなかった。
目の前が真っ暗になった。
その時、
『チリ〜〜ン』
森の主の時と同じ鈴の音が聞こえた。
そして慶一はその場に倒れた。
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ーーー慶一が目を覚ますと周りはもう真っ暗だった。
ミノタウロスが居ないことを確認するとシスの所に駆け寄った。
シスの症状はさっきよりもずっと酷くなっていた。
「シス、安心して良いよ。俺がレヴィンチに必ず連れて行くから」
そう言って慶一は傷だらけの身体でシスを背負い、三日間 何も飲み食いもせずにひたすらレヴィンチへと向かった。
「勇者がパーティーから外されたそうです」を読んで下さりありがとうございます。
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