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王子を不幸にしかしない婚約破棄

王子が不幸になる婚約破棄~転生ヒロイン破滅 編~

『王子が不幸になる婚約破棄~ ○×編~』と似たようなタイトルがありますが、それぞれが別の話になっています。


続きはありません。

「ユリーシア・クロワッサン公爵令嬢、貴様との婚約は破棄する!」

そう得意顔になって言ったロメオ・メロンパン王子を彼の母親は見限り、その場を後にした。

ロメオ王子に寄り添うのは妹のアイナ。

アイナはロメオ王子が私に婚約破棄を言った瞬間、勝ち誇った顔をした。

誰に見られているのか、考えもせずに。


はじめまして。

私は、ユリーシア・クロワッサン。

ロメオ・メロンパン第五王子の婚約者をしていました。

このメロンパン国では、『神々に愛されし少女』とか『神の祝福の能力の持主』とか言われています。

ちなみに、神の祝福というのは神が気まぐれに与えた能力が一度だけ発動することを言います。

実は私、転生者であらゆるゲームを制覇した廃人ゲーマーだったのです。

その中で、『乙女ゲーム』や『女性向け恋愛ゲーム』というのがありました。

そのゲームはルートによって、複数の男性を侍らすことができる『逆ハーレム』ルートがあったんですね。

私は、妹が常にその愛らしい容姿を利用してイケメンとか美少年とか呼ばれる男たちを唆しているのを見てきました。

そして、人の物を嬉々として堂々と盗む姿も。

私は、その時思いました。

「これって、あの乙女ゲームの逆ハーレムルートと同じ状況じゃない?」と。

なので、私が神々に愛されし少女と言う立場を利用して、王様に進言しました。

妹アイナが、複数の将来有望な上位貴族や王子を唆して侍らして国を傾かせるかもしれないと。

王様は少し考えた後、国で最も優秀な学者に尋ねました。

「そのようなことがありえるのだろうか?」と。

その学者は答えました。

「神々に愛されし少女が言うことなので、可能性としては絶対に無視してはいけない」と。

学者が言うには、過去の神々に愛されし少女が言ったことを世迷言だと無視した国はそこから影響される大災害に確実に遭ったらしいです。

なので、神々に愛されし少女の発言を無視しないことはどの国においても暗黙の了解だとか。


王様は尋ねました。

「第五王子ロメオ・メロンパン、お前が何を言ったのか理解して言っているのか?」

「もちろんです。俺には本当に愛する人ができた!俺は、ユリーシア・クロワッサン公爵令嬢との婚約を破棄し、彼女の妹アイナ・クロワッサン公爵令嬢と婚約をする。同じ公爵令嬢なら、なんの問題もないはずだ!」

これが前世の小説サイト内で読んだ小説で有名な「真実の愛(笑)に目覚めた」というやつですね。

婚約者に対して何の感情も持ってない私にとっては、失笑ものなんですけど。

さて、第五王子がなぜ王族でいられるのかという経緯と私の家クロワッサン家がなぜ公爵家でいられるかという経緯を王様が語りだしました。

まず、クロワッサン家が何もしていないのに公爵家でいられるのは『神々に愛されし少女』である私がいるからです。

神々に愛されし少女の生家なのに、下級貴族が家では外聞が悪いですからね。

もちろん、私のために使われるお金も国の税金から支給されています。

そして、第五王子がなぜ王族でいられるのか?

第五王子の母は、王家公認の『日陰の愛人』です。

これは、彼女の望んだこと。

第五王子の母はもともと小さな村の村長の娘でした。

彼女は王様が遠征した際、怪我をして動けなくなった王様(当時は王子様)の看病を懸命にしました。

そして、その様子に王様が惚れこんでしまったのです。

そして、王様は彼女に寵姫(のちに側室の一人)になるように権力を持って迫りました。

彼女の住む村は小さな村。

小さな村の村長が、国の頂点の権力を持つ方に逆らうことなんてできるはずがありません。

ですが村長はそれでも、互いに思い合って尊重する婚約者になった相手が娘にはいたので断ろうとしました。

それでも彼女は村に何か遭ったら、愛する人のいるこの村を守りたいという思いから、王様の申し出を受け入れるしか選択肢はありませんでした。

彼女はとても聡明で、自分では側室になるのは身の丈は合わないとして、日陰の愛人となることを選んだのです。

本来なら、日陰の愛人である彼女の息子は王族と名乗ることを許されません。

ですが、王様は溺愛する彼女のために息子を王族にしたかった。

彼女は、そんなこと望んですらいないのに...

息子を王族にするために、神々に愛されし少女である私と婚約をさせたのです。

それが、第五王子を王族にするための唯一の方法。

ロメオ・メロンパンは、自分が王族として存在する意味をその枷を自ら壊したのです。

彼は、その事実に青褪めました。

そして、母親に縋ろうとしました。

「母上、母上は!?どこにおられるのですか!?」

辺りを見回して、ロメオ・メロンパンは叫びます。

王妃様は答えました。

「第五王子ロメオ・メロンパン。あなたとアイナ嬢が今までしてきたユリーシア・クロワッサン公爵令嬢の数々の仕打ちに対しての責任を取り、王家公認の『日陰の愛人』という役職を彼女は辞めました。王様、彼女はもう十分に王家に尽くしました。これ以上、彼女を苦しませないでください。彼女との約束通り、決して彼女を追いかけてこれ以上縛ることは許しませんよ」

「ああ、分かった。約束しよう」

王様は不満げな顔をしながらも、そう答えました。

溺愛する女性が産んだ、それも自分の一番溺愛している息子がきっかけだからです。

さて、彼女と王様はロメオ・メロンパンと私が婚約する時に一つの賭けをしました。

「第五王子ロメオ・メロンパンが自ら婚約破棄をした場合、自分は元の村に戻ることを絶対確実永久に王様が保証する。王様や他の者たちが、める権利は存在しない」

というものです。

他にもあるけれど、重要なのはこれだけ。

そんなわけで、彼女はようやく本来住むべき場所に戻っていったのです。


そして、王様は第五王子ロメオ・メロンパンと妹アイナと私を生んだ両親に沙汰を告げました。

「第五王子ロメオ・メロンパンの申し出を受け、ユリーシア・クロワッサン公爵令嬢との婚約破棄そしてアイナ・クロワッサンとの婚約を認め、お前の希望通り王籍を剥奪する。

以後、貴様は王族を名乗るな!

アイナ・クロワッサン嬢、ロメオ・メロンパンと以外の人物と添い遂げることを禁止する。

それを破れば、即刻お前をこの地で公開処刑とする!

そして、クロワッサン公爵家夫妻。

そなたたちは、爵位剥奪。そして、本来ユリーシア・クロワッサン公爵令嬢のために使うよう国税から支給されたお金を本来使うべきではないアイナ嬢のために使ったという横領の罪を償ってもらう。

ロメオ・メロンパン、アイナ・クロワッサン、クロワッサン元公爵夫妻、お前たち四名はこれよりコルドクリメイティに向かい、その領地を管理せよ!」

コルドクリメイティとは、この国の最北にあり、領地経営に向かない極寒の地。

王族または上流貴族が犯罪を起こした時の流刑地です。

ぶっちゃけ、刑務所に入れられる方がマシ。

それほど、この地に住む者すべてにとって彼らの行った罪は重いのです。

それに対して、クロワッサン元公爵夫妻は反論して私のために使ったと言い張るのですが、クロワッサン元公爵夫妻が私のために国から支給されたはずのお金を妹アイナにすべて使ったということを執事のセバスチャンがすべて証拠をそろえて、王様にそれを差し出しました。

それを見たクロワッサン元公爵夫妻は、セバスチャンに我が家を裏切る気かと罵倒をし始めました。

クロワッサン元公爵夫妻が、執事のセバスチャンを自分たちで雇っていると思い込んでいるのですが、妹アイナを溺愛して私を蔑ろにすることを当り前だとしているので、そのことを心配した国が私の護衛としてクロワッサン元公爵家に送り込んだのです。

なので、私の妹アイナによる被害は最小限に抑えられています。

執事セバスチャンの正式な名前は、アルフレッド・バトラー・セバスチャン。

『セバスチャン』というのは、王家が雇う執事の名称です。

個人では、雇うことができません。

セバスチャンはというと、クロワッサン元公爵夫妻の罵倒を無視して、私が彼らからされた仕打ちを朗々とすべて告げていきます。

これには、元第五王子ロメオ・メロンパン、妹アイナ、クロワッサン元公爵夫妻以外のこの場にいる者たちが青褪めていきます。

そして、王様は彼らを衛兵に牢に連れていくように命じました。

流刑地に送る準備が整うまで、牢に閉じ込めておくためです。

連行される際、妹アイナは「私は愛されるために生まれてきたのよ!悪役であるあんたは私が幸せになるための踏み台にすぎないじゃない!大人しく破滅すればよかったのよ!なんで、私がこんな目に遭わなきゃいけないのよ!」

これ以上に、妹アイナは私を罵倒しようとしたのですが突然口が塞がれてしまいました。

というより顔から、口が無くなったという表現が正しいでしょう。

これは、神様たちがしたことです。

汚い言葉で、神々に愛された少女である私を傷つけないためにしたこと。

目の前で死体を見たくないので、妹アイナに忠告をしてあげました。

「まだまだ、私を罵倒し足りないのでしょうが、顔から鼻の存在を消したくないのでしたら、やめた方がいいですよ。まあ、流刑地に着けば口が元に戻るので安心してください。口がなくならずに、よかったですね」

と言って、あげました。

妹アイナはというと、信じられない物を見る目で私を見ました。

この後は彼らは大人しくなり、牢まで黙って連行されていきました。



第五王子の母はと言うと、故郷の村に帰ってかつての婚約者と結婚して幸せに暮らしたそうです。

○アイナ・クロワッサンは、イケメンたちに愛されたい欲求を持つ転生者。前世では、乙女ゲームが大好き。

○第五王子の母の元婚約者は、彼女が戻ってくるまでに誰とも結婚をしていません。

○神様たちは存在して、人間たちにも姿を見せています。

○神様たちは当初、アイナの顔から耳・口・鼻・目をすべて消し去ってしまおうと考えてましたが、ユリーシアの目の前に死体を置きたくなかったので、我慢して口だけを無くしました。

○第五王子の母は、王妃様や側室たちと良好な関係を築いています。

○『日陰の愛人』というのは、メロンパン王家限定で王妃や側室の仕事ができない王様の妻のこと。

第五王子の母を妻にするためだけに新たに作った役職。

それ以外の人たちにとっては、そのままの意味になります。



読んでくださり、ありがとうございました。

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