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踏み台令嬢はへこたれない  作者: 三屋城 衣智子
第一章

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55 脅しと躱し

 翌朝、お兄様と弟におねだりして、マリアと一緒に少しだけダンスのおさらいをした。

 登院する前に何か楽しい事をして気分を上げたかったのだけど――ほんとうに楽しかったわ。

 思い返しながら、今はマリアと馬車に乗っている。


「メルティ様、大丈夫ですか?」

「大丈夫よマリア。ルミナリクなんて何度来たって踏ん付けてぐりぐりしちゃうんだから」


 心配させたくなくておどけて言うと、効果があったらしくマリアは少し安心したようだった。




 学院に着くと、いつもと同じ空気感があってほっとする。

 けれど教室についてその感覚は霧散(むさん)した。

 入り口の前に、今一番見たくない人物が誰かを待っている様子で立っていた。


「……ルミナリク様、わたくしに何か御用がおありでして?」

()()()()だね、メルティ。君が入学したときいてね。旧交を温めたくて挨拶に来たんだ」


 にこりと相変わらず人好きのする顔で、彼はこともなげにこたえながら、さらに続ける。


「けど今日は時間がなくてね。ほんとに挨拶だけで申し訳ないけど、失礼するよ」


 そうして教室を出る際、すれ違いながらわたくしの肩に手を置き、


「リリッサとの解消が成立しそうだよ。()()()では、だけどね」


 と言って、前途を祝しに来たかの様に過ぎ去りながら、その手を上げひらひらと振った。

 極限に引き絞られたその声は、わたくしだけに、聞こえたらしかった。




 それからというもの、一日おきにやってきては、一線すれすれの話題で話しかけてくる。

 ……どうやらこれは、脅しにかかっているらしい。


「最終学年になると、御暇なんですの?」


 今日も食堂へ向かうメメットと一緒のわたくしに、彼は話しかけてきた。

 律儀にメメットには初めましての挨拶をしている。

 彼女がいるからか、今日は当たり障りがなさそうだ。


「あまり虐めないでくれ。……ただひたすらに君のそばにいたい、と心のまま振舞おうと決めた末の行動なだけだよ」


 全くもって当たり障りがあったわ……。


「リリッサの為にメメットやわたくしと仲良くなりたい、ということですのね。立派な心掛けですわ」

「……君はもう少し自分の身の振りを考えたほうがいい。()()()()()()()()で、直接関係のない誰かが困るのは嫌だろう?」

「何をおっしゃってるのかわかりませんわ。今日はメメットが忙しいそうですの、失礼いたします」


 衆人環視なこともあり、それ以上相手をしなくて済むようメメットとその場を離れた。

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