表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幼馴染が引きこもり美少女なので、放課後は彼女の部屋で過ごしている(が、恋人ではない!)  作者: 永菜葉一
幕間「むかしのはなし」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/217

第20話 第1話直前の幼馴染~恋する引きこもり~(唯花視点)


 あたしは部屋の窓際で息をひそめている。

 別に呼吸はしてていいんだけど、ついついこっそり気分になってしまう。


 だって、そろそろ奏太(そうた)が来る時間だから。

 引きこもり始めてから一年半。

 最近のあたしはこの時間になると、いつもこうして窓際に寄り、カーテンの隙間から外の道路を見つめている。


 あたしのために奏太が家に来てくれる。

 その姿を見るのが好きだった。


 もちろんこんなこと奏太は知らない。きっとずーっとゲームと漫画とアニメ漬けだと思ってるはず。まあ、間違ってないけど、この時間だけはぜんぶ横に置いといて、奏太のことを待ってるんだよ?


「奏太、まだかなぁ……」


 今日は奏太のバイト代が出る日。

 つまりはハグをしてくれる日。


「あうぅ……」


 意識したら恥ずかしくなってきた。

 窓枠におでこを押し付けて身もだえる。


 本当、あたしはなんでこんな習慣を作ってしまったんだろう。

 ハグをする度、気持ちはどんどん膨れ上がってしまう。子供の頃からずっと我慢してきたのに、今ではもう誤魔化せなくなってしまった。


「あたしは奏太のことが……」


 呟きかけ、慌てて口をつぐんだ。

 その先の言葉を言ってしまわないように。


 このまま一生、奏太に甘えてるわけにはいかない。どこかで解放してあげなくちゃいけない。あたしには未来なんてないんだから。


「……だから決めたの」


 今日からハグの度、奏太が告白してくるように仕向ける。普段はぜったいNGだけど、胸とかも思いきり押し付けてあげて、奏太に勇み足をさせるのだ。

 そして盛大に振る。奏太を解放するために。


 打倒、ヒーロー。

 引きこもりヒロインだって頑張るよ。


 ……そんな遠回しなことしてないで直接拒絶しろ、とかそういういじわることは言わないでほしい。ごめんなさい、これがあたしの精一杯なんです。だって奏太がいないと生きてけないんだもん。


 これが物語だったら、いつかどこかで復活フラグが立つのかもしれない。

 でも現実と物語は違うって、あたしはちゃんと知ってる。


「だから頑張るよ。大好きな奏太のために」


 と、情感たっぷりに呟いて……直後に「あれっ?」と思った。

 直近の記憶をリピート再生。そして絶叫。


「大好きって言っちゃったーっ! ずっと言わないようにしてたのに、流れで口走っちゃったーっ!」


 恥ずかしくなって床をゴロゴロゴロゴロッと転がる。

 ベッドにぶつかるまでゴロゴローッ、方向転換して、今度は勉強机にぶつかるまでゴロゴローッ。


 そんなことをしていたら、誰かが階段を上ってくる音がした。

 奏太だ。窓から目を離した隙に家に入ってたみたい。


「ちょ、ちょっと待って!? こんなテンションで顔合わせたら大惨事になっちゃう!」


 大慌てで布団をかぶり、ノートパソコンを起動。大音量でゲーム開始! これで精神を没入させ、平常心を取り戻す。我ながらカンペキな作戦!


「『いやぁ、見ないでぇ!』」


 重巡洋艦キャラクターを単独出撃させ、中破ボイスが鳴り響く。

 いいよいいよ、可愛いよーっ!



 ――と、いつの間にか本気で熱中してしまい、奏太に布団を引っぺがされてびっくりするあたしだった。



 その後、しばらくして、奏太が泊まった日を境にあたしはまったく別の方向で頑張り始める。

 諦めるためじゃなく、ちゃんと前に進むために。



 心の奥の本当の気持ちはまだ言えない。

 でも前に進もうっていうこの決意だけは……次に会った時、奏太に伝えたいって思ってます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] あれ?艦○れ(に限らずDMMのゲーム)って18歳未満利用禁止でh…気のせいか [一言] 今さらだが艦○れの課金なら母港拡張だろ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ