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【書籍発売中】どうせ結末は変わらないのだと開き直ってみましたら  作者: 風見ゆうみ


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46  目の前から消えてください

 噂でしかありませんが、二人が喧嘩をした理由を聞いてみたところ、たまたま食堂を出るタイミングが同じだったようで、ミドルレイ子爵令嬢がミルーナさんに喧嘩を売ったようです。

 今回の喧嘩がきっかけで、ミルーナさんの本性がバレてしまいました。親の爵位が奪われ、可哀想だと同情の声もあった彼女でしたが、自分を助けてくれた人であり、婚約者でもあるロウト伯爵令息を裏切る発言をしていたため、ミルーナさんに軽蔑の眼差しを送る人が増えたそうです。

 それはそうですよね。婚約者がいるのに他の男性のことで喧嘩しているのですから。簡単に挑発にのってしまったのは、ミルーナさんもかなりのストレスが溜まっていたからなんでしょう。

 ……自分本位でわがままですから、自分のことを悪く言われて腹が立っただけかもしれませんが。

 放課後、ニーニャたちと一緒に馬車の乗降場に向かおうとしていると、後ろから声をかけられました。振り返って確認すると、声の主はヴィーチです。


「おい! レイガス伯爵令嬢!」

「……なんでしょうか」


 ヴィーチは怒りの形相で叫びます。


「どうして来なかったんだ⁉」

「……やはり、手紙の主はあなただったのですね」

「うるさい! 人を持たせるならまだしも、来ないなんてどういうことだ⁉」

「宛名も差出人も書かれていないんです。怪しすぎて行く気にはなりません」 


 そういえば、ヴィーチは屋上で私を待っていたから、ミルーナさんの件は噂でしか知らないんでしょうね。どれくらい待っていたのでしょう。ここは謝らないといけないのでしょうか。


「……アンナさん」


 憤っているヴィーチの後ろから、ミルーナさんが姿を現しました。外見の美しさは相変わらずですが、喧嘩をした時に引っかかれたのか、白い頬に3本の線傷があります。


「ごきげんよう、ミルーナさん」

「ご、ごきげんよう。あのね、わたしたち、仲直り、しない?」

「しません」


 私は迷うことなく答えました。

 この人たち、本当に自分のことしか考えていませんね!ちょうど良い機会です。これを機に、二人との縁を無理矢理にでも断ち切ることにしましょう。

 心配そうにしているニーニャたちに、先に帰るように伝えると、シェラルが小声で「アデルバート様がまだいるか確認してくるわ! もし、帰ってしまっていたら、先生を呼んでくるから!」と言って駆け出していきました。残ると言ってくれたニーニャたちにも一緒に行ってもらい、反撃する準備を整えました。

 これから、私がやろうとしていることを、彼女たちに見てほしくなかったのです。深呼吸してから、ミルーナさんに話しかけます。


「仲直りも何もないでしょう。仲が良かった時なんてないのですから」

「そ、そんな冷たいことを言わないでちょうだい。本当に反省しているのよ」

「そうだ! いちいち、文句を言うんじゃない! お前はミルーナ嬢の謝罪を黙って受け入れればいいんだ!」

「黙るのはあなたですよ」


 割って入ってきたヴィーチに言うと、彼は私に言い返されたことが屈辱なのか、悔しそうな顔をして言います。


「偉そうに言うようになったな」

「ありがとうございます。褒め言葉として受け取っておきます」


 ミルーナさんは私の態度に驚いた様子でしたが、笑みを浮かべて手を合わせます。


「アンナ、お願い。私を許してよ。悪いことをしたと思ってはいるわ。だけど、あれは子どもの頃の話よ。善悪の区別がつかなかったの。ほら、あれよ。両親のせいだわ」

「子どもだからといって、何をしても良いわけではありません。両親が悪いということは確かですが、あなただってある程度の判断ができる年になっていたはずです」

「……じゃあ、どうしたら許してくれるの?」


 ミルーナさんは目に涙を浮かべて尋ねてきました。許すつもりはないですが、一応、聞いておきます。


「どうして私に許してほしいと思うのですか?」

「あなたに悪いことをしたと思っているからよ」

「私に悪いと思うのでしたら、黙って目の前から消えてください」

「そ、そんな言い方しなくても良いじゃないの!」

「どうせアデル様に近づきたいから、私と仲良くしようとしているだけなのでしょう?」

「ひ、ひ、酷いわ!」


 うわあああ、と声を上げて、ミルーナさんは顔を覆いました。私にはすぐに嘘泣きだとわかりましたが、ヴィーチはそうとは思わなかったようです。


「ミルーナ嬢を泣かせるなんて許せない!」


 叫ぶと、私に向かって拳を振り上げたのでした。

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