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【書籍発売中】どうせ結末は変わらないのだと開き直ってみましたら  作者: 風見ゆうみ


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44  呼んでほしかったのですか?

 アデルバート様からはその日の内に手紙で返事がきました。次の日も学園なので、返事は明日だと思っていただけに驚きましたが、手紙の内容を見て、すぐに返事が来た理由がわかりました。

 ヴィーチがなんとアデルバート様に接触していたのです。しかも、内容が酷いものでした。

 ヴィーチは、アデルバート様にミルーナさんとデートしてほしいと言ったそうです!

 アデルバート様は、あまりにも驚いて『お前は頭が悪いのか?』と聞いてしまったと書かれていました。

 前々から思っていたようですけれど、口には出さないようにされていました。でも、デートしろなんて言われたら、この人は何を言っているのかと思いますし、本音を口に出してしまいたくなる気持ちはわかります。

 一体、ヴィーチは何を考えているのでしょうか。私に好きになってもらうことが無理だったから、アデルバート様をミルーナさんに会わせようとしたとかですか?

 一気に物事が動き始めて、頭の整理が追いつきません!

 時計を見ると、もう日付が変わりそうです。お肌が荒れてはいけませんので、とりあえず眠ることにしたのでした。


*******


 次の日、いつもよりも少し早い時間に登校し、私たちしかいない教室でアデルバート様と昨日の話をしました。

 アデルバート様の話によると、ヴィーチは誰かに頼まれたわけではなく、ただ、ミルーナさんを幸せにしたくて動いているだけだと言ったそうです。


「何で俺とミルーナ嬢がデートしないといけないんだと聞いたら、デートすれば必ず、ミルーナ嬢を好きになるからってさ。そんなわけないのにな」

「ミルーナさんは一部の男子には人気がありますし、マイクス侯爵令息も本当にミルーナさんが好きなのでしょう」

「人の好みに文句を言うつもりはないが、たとえ、ミルーナ嬢に良いところがあったとしても、それだけで好きになるわけじゃないだろ」

「そうなんですが、考え方が凝り固まっているんじゃないかと思います」

「どういうことだ?」


 前の席に座るアデルバート様が不思議そうにするので、例え話をしてみます。


「ヴィーチにとっては、ミルーナさんが最高の女性なんです。だから、その良さが他の人にはわからないはずがない」

「……わからないんだが」

「わからないことがおかしいというのが、ヴィーチの考えなんだと思います」

「このままだと、一生、平行線で終わるな」


 アデルバート様はうんざりした様子で言いました。


「どうせなら、ヴィーチが私に手を出してくれたら殴り飛ばして黙らせるのですが……、あっ!」


 つい、いつものようにヴィーチと呼び捨てにしてしまったので口を押さえると、アデルバート様は不満そうにします。


「マイクス侯爵令息は呼び捨てかよ」

「……どういう意味でしょうか?」

「俺はアンナの婚約者だよな?」

「はい!」

「なら、アデルでいいんじゃないか?」


 じぃっと拗ねたような顔で見つめられたので、ドキドキする胸を押さえて口を開きます。


「ア、アデル……さま」

「結局、様は付けるのかよ」


 アデルバート様……ではなく、アデル様はいっぱいいっぱいになっている私を見て微笑みます。


「まあ、いいや。昨日からイライラしていたんだが、アンナのおかげで直った」

「……もしかして、アデルと呼んでほしかったのですか?」

「呼んでほしかったっていうか、同性の友人はみんな、アデルって呼ぶからな。一番、親しいはずのアンナが呼んでくれないことは気になってた」

「も、申し訳ございません!」

「謝るなよ。アンナは何も悪くないって。嫌だったとかじゃなくて、呼んでもらえたら嬉しいだけだ」


 呼び方によって、受け取る印象が違ったりしますものね。私だって、ニーニャたちからレイガス伯爵令嬢と呼ばれるよりも、アンナさんや、アンナと呼ばれたら、親しい友人のような気がして嬉しいですし。

 でも、アデル様がそんな子供っぽいことを考えていたなんて、可愛らしいところもあるのですね。

 ニコニコしていると、「何がそんなに楽しいんだよ」と不満そうに言いつつも笑ってくれました。


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