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【書籍発売中】どうせ結末は変わらないのだと開き直ってみましたら  作者: 風見ゆうみ


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38  受けて立つことにします!

 その後、アデルバート様がご両親に相談してくれたところ、ミドルレイ子爵令嬢の出自を調べてもらえることになりました。一般的に個人的なことを他人が深く探るというのは良いことではありません。普通なら、ミドルレイ子爵令嬢の学園での付きまとい行為を権力で抑えつければ良いのですが、くだらないことに権力を使いたくなかったようです。でも、私のために堪忍袋の緒が切れたという設定で調べてくれるそうです。

 調べてもらっている間は学園生活に専念していたのですが、私も十六歳になるということで、社交界デビューをすることになりました。悲しいかな、今までの人生で社交界デビューをしたことは一度もありませんので、不安な気持ちもありますが、ここは開き直っていこうと思います。

 私たちの住んでいる国では、デビュタントの際のパートナーは婚約者がいる人は婚約者でもかまわないのですが、一般的には父親がすることになっています。ですので、私はお父様にパートナーになってもらうことにしました。アデルバート様もパーティーに出席するので、晴れ姿を見守ってもらえますし、良いですよね。ダンスの練習をしたり、礼儀作法を改めて覚え直したりとしている内に、デビュタント当日になりました。


「「うちの娘が一番可愛い」」


 お父様とお母様は白のドレスを着た私を見て、しまりのない顔になっています。


「ありがとうございます」


 今まで社交場で見てきた、どの令嬢よりも可愛いと褒めてもらい、お世辞だとわかっていますが、嬉しくて笑みがこぼれてしまいます。

 今日のパーティーは夜に行われますので、イブニングドレスです。シニヨンにした髪に大きめのピンク色の花飾りをつけてもらいました。

 今日はニーニャたちも来るので、正装姿を見るのが楽しみです!

 ただ、一つだけ問題がありました。このパーティーにヴィーチが来るのです。私の家は伯爵家ですので、侯爵家に招待状を送らざるを得なかったのです。そして、長男は出席せず、ヴィーチだけ出席すると返事が来た時は、断ってくると思っただけに焦りました。最近の彼が大人しい分、今回のパーティーで何か動いてくるかもしれません。


 どんなことをしてこようが負けるつもりはありません。私が強くなったことをヴィーチは知りませんし、今回はティアトレイという商品名のシルバートレイもありますから受けて立つことにします!


******


 パーティーが始まり、私のお披露目が終わったあとは歓談タイムになりました。シルバートレイは専属メイドに持っておいてもらい、アデルバート様の所に行くよりも先に、ニーニャたちの所に向かいました。

 私の姿を見た三人は目を輝かせて褒めてくれます。


「「アンナ、すごく可愛い!」」

「アンナさん、……す、素敵です!」

「嬉しいです! ありがとうございます! でも、皆さんも本当に素敵です!」


 ニーニャたちは落ち着いた色合いのドレス姿で化粧や髪形も学園で会う時とは違っていて、いつもよりも美人に見えました。


「ありがとう! それから、アンナ。社交界デビュー、おめでとう」

「ありがとうございます」


 ミルルンたちに拍手され、照れながらお礼を言うと「ほら、早く行けよ」「うるさいな。まだ話してるだろ」という会話が聞こえてきました。 

 聞き慣れた声なので、顔を見なくてもわかります。クラスメイトの男子も呼んでいるので、アデルバート様とクラスメイトの男子がじゃれ合っているようです。


「ルージン、あなた、アデルバート様で遊ぶんじゃないわよ! アデルバート様、申し訳ないんですけど、アンナをもう少しだけ貸してください!」


 シェラルに叱られたルージンさんは「悪い、悪い」と苦笑し、アデルバート様は「気にしなくていい。ゆっくり話せよ」と答えました。

 そして、すぐにアデルバート様はルージンさんの首を絞めながら、小声で言います。


「友人を優先させない男は嫌われるって本で読んだって言っただろ!」

「落ち着け、アデル! 優先させすぎるのも良くない! 束縛しすぎるのは駄目だってことだよ! ぐええぇぇ」


 ルージンさんが変な声を上げたので私は驚きましたが、アデルバート様たちを囲んでいるクラスメイトはみんな笑っています。ミルルンたちも吹き出したので、仲良しだからできることのようです。

 アデルバート様だって、本気で首を絞めているわけじゃないでしょうし、仲が良いのは良いことですね。

 特別クラスに入って本当に良かったです。入って一年目は変な人がいましたが、それからは良い人ばかりです。

 和んでいる私に近づいてくる人がいました。


「おめでとうございます」


 警戒を緩めていた私に話しかけてきたのはヴィーチでした。

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