戦後世界
戦後10年くらいしてからのお話です。
ヨーロッパではソビエトの脅威が無くなり、ドイツも大人しくなったことにより平和気運が高まっていた。
アンシュルスされたオーストリアは独立した。
各国とも平和なのは良いが、小国が多く経済的には苦しい国が多い。旧ソ連だった国々は、戦後の混乱をBFJR連合の助けによって何とか破綻しない程度には切り抜けた。
BFJR連合の負担は重いので早く独り立ちして欲しいのだが、いかんせん従来の体制から抜けきっておらず、すぐに専制国家になろうとする政治家や勢力が多い。その度にBFJR連合が文句を付けて解散させるのだが、油断ならない。軍事力を低く押さえつけているので滅多なことは無いはずだ。
こいつらが減るまでは監視の目を緩める訳にはいかない。勢い経済支援もと言う事になる。でないと言う事を聞かないので、仕方なくやっている。
西欧スタイルの教育を受けた新世代が政治家になるまでは無理だろうと言われる。
ソビエト共和国
牙は抜かれた。共産党やNKVDなどがやっていたことは白日の下に晒された。それでも懐かしがる者は多い。
軍事力は陸軍自体の数は減っていない。民衆からは心強い味方と見なされるようになった。空軍は1000機から予算不足により500機程度まで減った。ヘリコプターの導入を始めているので固定翼機は更に減りそうである。
*1000機と言うが航空撃滅戦により実戦機はほぼ無くなり、2線級の機体もほぼ無くなっている。終戦後BFJR連合が残していった2線級の機体がほとんどである。
海軍は沿岸警備隊になってしまった。潜水艦の建造能力は有るが造船所はバルト海と黒海にしか無く、黒海の造船所はロシアに渡ってしまった。バルト海の造船所も監視が厳しく民間船しか建造していない。ムルマンスクとアルハンゲリスクは可能性があるが、予算不足で大型艦用造船所は作れないだろうというのが当面の見通しだ。
ロシアは早く潰れてくれないかと思っているが、教育がしっかりしてくれば潰れないだろう。
ウクライナ
当初、ソビエトと同じだったが徐々に反ソビエトになっている。ついでに反ロシアにもなっているが。ロシアはかなり気を遣っている。
有数の食糧生産国で有り、ロシアへの食糧輸出も多い。
軍事的には、BFJR連合によって周辺諸国とのバランスを考えて低く抑えられている。そのため国境紛争があるポーランドやルーマニア、モルドバとは小競り合いも起きない。そんなこと起こしたら駐留軍によってあっという間に叩きのめされるだろう。
ロシアからセバストポリを取り戻したいが、現状では夢だろう。
ポーランド
東は敵。西は敵。南は敵。いずれも自国より強大である。この状態から脱却できてホッとしている。BFJR連合様々である。
基本農業国だが、工業化も進んでいる。
軍事力はやや多めだが、東側国境に集中している。ベラルーシの国内情勢が怪しいからだ。
BFJR連合は国外に脅威をもたらさない限り、国内情勢であるとしてほっといている。
ベラルーシ
民族紛争は無いが、共産党から比較的厚遇を受けていた関係で非合法化後も共産党関係者が地下で画策することが多い。何か有ればソビエト共和国では無くポーランドへ向かうだろう。BFJR連合も警戒してる国内情勢だ。
リトアニア
ごく普通の国になりつつある。ソ連時代の影響をできるだけ排除しようとしていている。
ラトビア
運の良いことにソ連時代に重工業を集中的に整備された。その遺産で喰っている。新技術に取り残されないように多くの国に留学生を送っている。
ロシア・ソビエト時代に送り込まれたロシア人が多く居住しており、民族問題になりかけている。
エストニア
ごく普通の国になりかけている。反ソ感情は強い。
チェコスロバキア
国内の民族紛争が絶えない。分割しようかとBFJR連合が目論んだが、民族や宗教のしがらみが大きいので諦めた。勝手にして欲しいと思っている。もちろん国外に脅威となるなら軍事力の行使も辞さない。
潜在的工業力は高く、民族問題さえ解決できれば将来性は高い。
ハンガリー
些細な問題は有るが国内は安定している。
この国も工業力は高く、周辺が安定する限り問題ない国だろう。チェコスロバキアが面倒だと思っている。
ルーマニア
ソビエトの脅威が無くなりホッとしている。工業力はあるので自力で問題ない。ウクライナとは仲は悪く無い。
モルドバ
旧ソ連であり、農業以外の産業が無く援助が切れた今は苦しい。この国も旧体制に戻ろうと専制国家を目指すことたびたびである。BFJR連合としては頭が痛い。せっかく安定している地域にあって、小さいくせに問題を起こす。
アルメニア
小さく貧しい。特に問題の無い国でトルコが後見となっている。
アゼルバイジャン
トルコにバクー油田を押さえられ悔しい。チェチェン問題を始め国内に民族問題を抱えており、一丸となるのは難しいのをトルコに利用されている。独立したがしなかった方が良かったと思っている国民も多い。
グルジア
スターリン(シュガシビリ)の出身地であり、共産党員が多い。非合法化された現在でも潜在的な勢力を築いている。そのため治安は悪い。ソ連時代に重工業がもたらされたが、メンテナンスが出来ないので老朽化が激しい。
バクー油田からの地中海向けパイプラインの候補地となったが政治的に不安定であり、治安も悪いので候補から外れた。厳しくなるがアルメニアとトルコを経由する計画が現実的になっている。
これらの国に苦労するBFJR連合は互助組織としてヨーロッパ連合を造ろうとしている。
主役はイギリス・フランスだが反発する国も有り、前途多難。
アメリカは遂に経済が行き詰まる。戦時中に強気の設備投資をしたツケが回っていた。もちろんアメリカ政府の警告を聞き損害を免れた企業・資本家も多いが、それでも調子に乗って強気の投資をしてしまった企業が次々と破綻やリストラクチャリングをして小さくなっていく。国内経済は苦しい。それに伴い失業者が増えていく。失業率が10%を超え20%に近づこうとしている。
発電所や鉄道関係は宗方機関導入でスクラップビルドが進むが、その事業で失業者を吸収できる範囲を超えている。また、鉄道では蒸気機関車からディーゼルへの切り替えで逆に給炭や給水に掛かる必要人員数は減っている。炭鉱も鉄道需要の減少を受け、採炭量を減らしている。製鉄が低調なので製鉄に使う石炭も減りダブルパンチだった。
造船も同じだ。宗方機関導入船が次々と工事に入るが、それでも戦前と比べれば低調だ。経済の落ち込みは新規傭船の減少と造船量の減少を招いている。それでも新規の造船があるのは、造らなければ燃料消費の違いから運送コストで負け、仕事が無くなるからだ。
自動車も購入側の財布の紐が固いので、売れる訳も無い。各社、人員削減をしている。
このままでは拙い。アメリカ政府はいろいろ模索するも、他の国々ではアメリカの生産力を受け入れるだけの市場容量が無かった。BFJR連合関係の国は、いずれも戦時中に過剰生産にならないよう注意していた。
そこで、BFJR連合以外の国に目を付けた。BFJR連合の国は概ね経済的な結びつきが強くなっていて、アメリカが大きく割って入るのは難しかった。そのためドイツやアメリカは景気が良かったのだが。
目を付けた国というか地域なのだが、中華と朝鮮半島だった。ロシアも日本も「止めておけ」と言うのに手を付けることにしたようだ。数億人の人口は魅力的に見えるのだろう。
しかし足がかりが無かった。一番西がハワイである。フィリピンは保護国として治安維持以上の部隊を展開していない。大きな基地は無かった。
結局フィリピンには独立に向けての支援を大きく行うと言う約束で、フィリピン国内に大きな軍事基地を造ることを了承させた。
これが大陸進出への足がかりになる。
アメリカはどうする気だろう。
後1話で終わりにします。




