Mが崩れる日 Ⅱ
短いです。
英仏軍がモスクワ市内に突入し、家1軒をソビエト軍と取り合っている。
混成軍は、パイパー戦車隊を前面に押し立てひたすらモスクワに向かう。
「発動機回せー」
「動翼異常なし」
機付き整備員からサインが出る。
「発動機、筒温・油温・油圧正常」
「チョーク外せ」
車輪止めが外された。
チョークが外され発動機が唸りを上げる。徐々に加速していく機体。ただ重い。延長された滑走路でも余裕は無い。
最初に離陸するのは先行して突入する部隊を引っ張る一式陸攻だった。しかし如何に2000馬力を誇る火星発動機双発とはいえグライダーを曳航しての離陸はきつい。一式陸攻は九六式陸攻よりも馬力が有ると言って牽引するグライダーは大型のク7だ。と言っても30機しか揃わなかった。後の機体と九六式陸攻は小型の四式特を曳航する。一式陸攻は四式特を2機連結して牽引する。
尾輪が浮いても機速が乗らない。滑走路の三分の二くらいでようやくグライダーから「浮いた」と連絡が有り、尾部銃手からも確認が取れた。
端まで後400メートルでようやく離陸速度になり徐々に上げ舵を取る。主脚が滑走路から離れた。ただこのまま我慢だ。まだ上昇角を上げると後ろに引っ張られて失速する可能性がある。
かなり時間をかけて高度を取る。
初撃で突入するのはグライダー50機に乗った1800名の勇士と九八式軽戦車4両だ。特に最初の数機は危ないだろう。
この日のために滑走路は態と破壊せずに残してある。気の利いた奴なら地雷でも埋めておくだろう。
ただこんな危険極まる先行部隊には志願部隊多数で、抽選だった。狂ってるとしか思えない。ロシア軍では後に最精鋭の突入専門部隊となっていく。日本軍でも第一狂ってる連隊と言われる第一空挺連隊になっていく。
50機のグライダーを曳航する一式陸攻部隊には護衛の戦闘機も当然付く。零戦と一式戦だ。通常200リットルだった増槽を300リットルの大型にして新規装備とし、航続距離を延伸させた。発動機の混合比を薄くしたり、プロペラピッチをいじったりで航続距離を伸ばす努力もした。その結果、通常増槽で3000キロから大型増槽装備時には3500キロまで巡航距離を伸ばすことが出来た。長時間操縦席に固定される搭乗員はたまらない。
後から来た新鋭の四式戦は巡航速度が合わず、ファイタースイープとばかりに先行。戦闘機が上がってこなければ地上への機銃掃射が命じられている。もっとも上がってくる戦闘機は破壊し尽くされていて無いので機銃掃射が主任務だろう。
ヴォロネジで止まってしまったロ日連合軍は若干焦っていた。混成軍がドイツ戦車部隊を戦闘にモスクワ目指して驀進していることを聞いたのだった。
「我々も行きたいが、遠いな」
「道なりに500キロ近くある。履帯が持たんぞ」
「篠原・泉。貴様ら、そんな根性でどうする。行けばいいのだ。戦車トランスポーターが有る」
「太田大尉、戦車トランスポーターの台数知ってるか?」
「はっ、後藤中佐。40台であります」
「40台だよね。他の戦車は自走だ。これでもトランスポーターはかき集めたんだ。それに行きたい奴は多い」
「では40台と、装甲トラックで行きましょう」
「当地の治安維持もしなければいけない。未だに共産党の残党が燻っている。全車は出せん」
「行ってのいいのですか」
「これだ」
ポンと出された書類綴じには[モスクワ突撃隊編成表]と書かれていた。
「行けるんですか。後藤隊長」
「行ってもいいけど、指揮は熊耳少佐が執る。命令違反はするなよ。時間が掛かるから、途中大休止を取る。休憩を入れて24時間でモスクワに到着だ。これはロシア軍との共同作戦だ。勝手に行動するなよ」
「もちろんです」
「勝手に撃つなよ」
「う・撃ちません」
ロシア戦車部隊が戦車トランスポーターで発進を始めた。
「第2中隊、発進」
日本戦車部隊も発進する。
戦車隊を戦車トランスポーター30台に載せられたロ日戦車部隊がモスクワ目指して出発した。
それに段列のトラックや戦車トランスポーターの乗せた戦車回収車、歩兵部隊を乗せた装甲トラックなどが続く。
「後ろのお客さんの要望で10機は別行動というのは聞いているな」
「はっ、聞いております。木村少佐」
「面白くねえな。そう思わんか。吉井中尉」
「そうですが、命令ですから」
「堅い、堅えよ。吉井「我々も行きましょうと」何故言わん。あんな面白そうなことから外されてつまんねえと思わんか」
「それでは作戦が「わかったよ。真面目に行こう」」
「はい」
別行動の6機はどこへ。予想される方も多いかと思います。モスクワ突入ですので。
ク7を3式特にしようかと思いましたが、そのままにしました。
次回更新未定。近いうちに。




