Mが崩れる日
短いですが。
モスクワは周辺を包囲され、石油類は入ってこない。また徹底した航空撃滅戦によって航空戦力は無く、戦車などの機甲戦力もかなり減っている。大きな陣地を必要とする重砲の類いはあらから潰されている。
しつこいほどの偵察で敵戦力の減少を確認したBFJR連合軍は11月下旬、遂にモスクワ攻略に乗り出した。
と言っても、主攻線は北からの英仏軍であり、西南北は圧力を加える程度の事しかできない。それでも味方は既に周辺にはおらず、増援は無い。この事から既に勝敗は決しているのであるが、問題は幾度降伏勧告を出しても、ソビエト政府が降伏しないという事だった。
BFJR連合軍は最悪都市への絨毯爆撃さえも考えた。
英仏軍は絶対的航空優勢の下、機甲部隊を前面に押し出し戦線を南下していく。時折建物の中に隠蔽されていた対戦車砲や野砲の攻撃を受けるが、圧倒的火力と航空支援に潰されていく。
ゼレノグラード周辺で激しい抵抗があったが、それも押し潰して前進する。
狙撃兵は弾幕で牽制している間に回り込んだ部隊で始末していく。
順調に進んでいる。おかしいくらいに。
その快進撃もモスクワ市内に入るまでだった。そこからはレニングラードと同じで建物一つ一つが敵陣地となり、制圧に時間が取られていく。損害も膨れ上がる。
絨毯爆撃でなぎ払いたいが、戦後の事を考えるとそうも行かない。アレは最終手段だ。
全体で見ればレニングラードで慣れた部隊が不慣れな部隊に教えながら(自分達の損害を抑えるためにも)1軒1軒潰していく。
疲れる戦術だった。
ソビエト軍も建物に固執すること無く、地下鉄や地下水路を使って移動している。英仏軍も地下に潜りネズミ叩きを始めた。
「ロンメル大佐いいのですか?」
「かまわない。作戦案は提出済みだ(返事は聞かなかったがな)」
「まあ現状ではモスクワまで届きませんからね」
「パイパー少佐ならどこまでも行きそうだが」
「如何に自分でも補給も無い行動は自重します」
「信じられんが」
「信じてください。補給さえ有ればどこまでも行きます」
「だから行け。補給はバイエルライン中佐が上手くやってくれる」
「あの人が担当なら信じます」
「私なら?」
「・・」 スッと目を逸らす。
「・・・」
「パイパー戦車隊出撃します」
「総員無事帰還することを期待する」
「期待に応えて見せます」「出撃だ!」
「「オオ!!」」
各車エンジンを始動する。
そこにはドイツの技術を昇華させた鉄塊が有った。
Ⅵ号戦車
56口径8.8cm kwk 36戦車砲を搭載
車体前面装甲厚 120mm 傾斜装甲
砲塔前面装甲厚 150mm
側面でも70mmの装甲を持つ化け物だった。
ペリスコープの開発に成功し操縦窓は前面装甲には無い。ただし対歩兵用として前面機銃窓はあった。
幅広のキャタピラは低い接地圧によって行動の自由度を増し、トーションバーサスペンションは不整地走行でも追随性が良い。
無敵に見えた。
惜しむらくはディーゼル発祥の地ドイツでも、60トン近い戦車に必要とされるコンパクトな大出力ディーゼルエンジンの開発が出来なかったことである。低速トルクに優れ燃費の良いディーゼルは大型車両向けに優れた特質を持っている。でも、無い物は無かった。
エンジンは航空用を転用した。倒立V12を正立とし、プラグを上にして整備性を確保しなければいけなかった。この苦労は並大抵の物では無かった。
そして700馬力が確保された。
ロンメル大佐はモスクワに向けて進む戦車隊を見送った。
スモレンスクからヴャジマまで苦労して前進した混成軍だが、そこは小さな軍隊の寄せ集め。限界が見えていた。そこで目立つ作戦を出せと軍内部に要望が出された。ロンメルの案が一番上手くいきそうだった。補給さえ有ればだが。
作戦案は戦車をただひたすらに進撃させるという強引なものだ。それに歩兵を乗せた装甲車やトラック、補給部隊、整備部隊が続く。
途中の物資は航空機から空中投下で補い、とどまるところ無く進撃し敵に隙を当てないという作戦だ。
そしてヴムコーヴォ飛行場を確保。飛行場を確保したのち、輸送機と爆撃機により兵士をピストン輸送し戦力の充実を図る。
無謀と言えば無謀。ただこれで最後と思うから出来るような作戦だ。
ロンメルの下には日本とロシアが大規模な空挺作戦を行うという情報が入っていた。どちらが無茶なのかわからない。ただモスクワ攻略を英仏軍だけに任せるのはしゃくに障るだけだ。
一方、南にいるロ日連合軍は息が切れていた。モスクワ攻略戦が有るのは知っていても戦力が少なすぎた。ヴォロネジで止まっている。モスクワはエカテリンブルクに展開しているであろう空挺に任せた。
次回更新未定、近いうちにできたらいいな。
戦車用ガソリンエンジンですが、マイバッハを忘れていましたよ。なのでこの世界線では存在しないことにしてくださいね。




