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ここは日出ずる国  作者: 銀河乞食分隊
平原騒乱
49/60

Mへ至る道

短いです。

最後後味悪い表現がありますので、飛ばして貰っても良いです。

会話部分から後です。行間空けてありますのでわかると思います。

 ロ日軍がソユーズを進める一方で、BFRJ連合軍主力の英仏軍はレニングラードから南下を始めていた。作戦名[Mへ至る道]である。最終的に総戦力で歩兵80万人以上、戦車など機甲戦力3000両以上、航空機2000機以上という英仏の全力を挙げての作戦だった。

 目標は150キロ南方のノブゴロドである。ご多分に漏れず鉄道沿いしか進撃路を設定できない。新たに輸送路を設定するような時間的・金銭的余裕など無かった。

 もし来年の春以降までもつれるようなら戦費の枯渇でアメリカから多大な援助を受けなければいけなくなる。それに春になれば地面が泥濘となって進撃の邪魔をする。気候的にも経済的にも今しかなかった。今でさえ戦時国債をアメリカに買って貰っているのだ。これ以上戦費が増えることは、戦後アメリカの影響力が今以上に増大することになる。それは避けたかった。


 レニングラードからは主攻線であり、副攻線としてリガからベラルーシ北部のビテブスクを目指す集団もあった。こちらでも補給路の問題で鉄道沿いしか進撃路を選べない。

 こちらはポーランド軍始め少数戦力しか派遣できない国が一塊(ひとかたまり)になっていた。

 ポーランドはベラルーシのミンスクに圧力を加えており主力はそちらであった。ポーランドの他はドイツ軍・ベルギー軍・オランダ軍・デンマーク軍・スペイン軍であった。総力でも歩兵20万人、機甲1000両、航空機500機であり、無理は出来なかった。じわじわと東進している。機甲戦力と飛行戦力の装備はドイツ以外ほとんどがアメリカ製で有った。

 

 このなんのひねりも無い作戦名[Mへ至る道]は、モスクワ攻略戦が始まる前にあらゆる補給路を断とうという事が副次的な目標だった。既にバクーはトルコに奪われていて、石油が手に入らない。モスクワに有る備蓄だけでの戦いになる。食糧も絶とうというのだ。甘い観測なら[Mへ至る道]が完了した時点でモスクワは孤立。早期に内紛が始まり瓦解するのでは無いかという見方も立てられた。これはここまでの戦いの中で正規兵と物資を奪われた都市がかなりの割合で降伏してきた事例を元にしている。

 ただ、司令部ではいくらなんでも甘すぎると思っている。ある程度飢えさせた状態にしてから攻略戦を始める方が損害が少なくなると言う冷徹な方法論が主流だった。

 もちろん飢え殺しは考えていない。餓死者数百万人にもなる飢え殺し。そんな事をすれば勝っても国際的な非難を長きに受けるだろう。長期戦は戦費的にも考えられなかった。また信用を失う可能性も大きかった。世界の中心たるを自負している英仏にはそのような屈辱を受ける気は無かった。


 結局、最後はゴリ押しの地上戦になる。建物一つ一つが戦場で、一部屋ごとに敵が居る可能性を考えての戦争。

 もちろん徹底的な空爆で主要装備は吹き飛ばしてしまうが、地下に運び込まれた分と、いろんな場所に少数分散された物はどうしようも無かった。

 万人単位の損害が出ることは避けられないと考えられている。 




 英仏軍は順調に進撃している。ノブゴロドはさすがに抵抗はあったが、数の力でゴリ押しをしていく。圧倒的な航空優勢の前に隠れる所の無いソビエト機甲部隊は無力だった。多少の対空砲火では航空攻撃を抑えきれない。

 進撃を遅らせようと、モスクワ周辺から鉄道を爆撃しようと飛んでくるが分厚い迎撃態勢によって、成功率は高くない。成功しても、鉄道工兵隊が短時間で補修してしまう。

 次はヴィシニー・ヴォロチョークである。レニングラードから距離が有るので航空支援用にノブゴロドにあるソビエト軍飛行場を拡張して使う。


 一方、ビテブスクを目指す多国籍部隊だが、さすがに統制の取りようも無く進軍は捗らない。それでも抵抗が少なく、意外に早い。ミンスクからの攻撃はポーランド軍がミンスクに圧力を加えているために軍が出てこない。ここでもモスクワに人と物資を取られている。


 

 次々と航空攻撃で地上部隊を潰し進撃する英仏軍はヴィシニー・ヴォロチョークも落とした。ただここは中継点と言うだけで飛行場適地が無く、トヴェリに飛行場を確保すべく進軍をする。さすがにモスクワ前面だけ有りトヴェリの抵抗は厳しい。










「曹長。左前方民家、機関銃撃ってきます」


「戦車は?」


「他で使われています。10分後になります」


「10分か。いつまで10分後なんだろうな。おい、マリー1等兵とフィニョン兵長」


「「はっ」」


「おまえら迂回して手榴弾放り込んでこい。俺たちはここで引きつける」


「「了解しました」」


 数分後、弾が尽きたのか弾倉交換のためか銃撃が止まった時に手榴弾が放り込まれた。


「キャー」


 ドン!


「「「???」」」


「おい、今の悲鳴」


「女?」


 変だと思いながら慎重に窓から中を覗くと、そこには少女と少年がいた。二人とも手榴弾で死んでいた。だが兵士はいなかった。少年は針金で縛り付けられ身動きできないようにされていた。機関銃の引き金に紐でつながれたままで。

 少女は助けようとしていたのだろう。針金に手をかけたまま死んでいた。


「な、なんだよこれ!こんなこと無いよな」


「・・・・」


 捕虜にした政治将校やソビエト軍士官数名が脱走したとして撃ち殺されたのはその少し後だった。

次回更新未定。近いうちに

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