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ここは日出ずる国  作者: 銀河乞食分隊
平原騒乱
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エカテリンブルクよ 我々は帰ってきた

 エカテリンブルク攻略は航空攻撃による陣地攻撃から始まった。

 だが、おかしい。対空砲火がほとんど上がってこない。

 九九式襲撃機が500メートル程度の低空まで降りて綿密に偵察をする。結果、同士討ちが始まっていると報告が有った。

 クラスノヤルスクと同じかと司令部では考え、部隊を突入させるか落ち着くまで待つか、意見が分かれた。

 問題はクラスノヤルスクとは人口の桁が違う。長引けば市民の被害も大きくなるだろう。

 結局、部隊を突入させることとなった。白いたすきを大量に用意して。敵味方識別のためで有る。白が一番大量に用意できたから白になった。医療用のサラシで有った。他に意味は無い。

 ロ日連合軍も白たすきをした。

 アメリカ製のトラックに乗ったロ日連合軍が強引に市内に突入した。味方とみられる勢力にたすきを渡した。付けない場合は敵と見て撃つと言って。

 

 先の見えない市街戦が始まった。いやこれは間違いであり、ある意味正しかった。

 レニングラード攻略戦と同じように1軒1軒確認して、敵は潰していく。多くの日本兵はロシア語が挨拶くらいしか話せない。日本兵が周辺警戒をして、ロシア兵が家を確認していった。家人に告げる内容もレニングラード攻略戦と同じだった。ロ日連合軍の方が兵数が少ないためレニングラードの1割と人口が少ないが大変だった。

 やはりエカテリンブルクでも食糧事情は逼迫している。レニングラードほどの補給力は無いが精一杯の支援をロ日連合軍は行っている。

 ここで活躍したのが各種輸送機だった。主力はロシア軍が運用するアメリカ製のDC-3(途中からC-47)で、その日本ライセンス版零式輸送機と日本陸軍の百式輸送機は機数から言って補助的だった。

 自然と日本軍向けは日本の機体、それ以外はロシアの機体と運用された。

 航空輸送は緊急を要する医療品と食糧が優先で、輸送の主力はシベリア鉄道だった。

 イルクーツクから進出後に整備されたクラスノヤルスク周辺の飛行場へ、そこからオムスクに飛び、オムスクからエカテリンブルクへの往復だった。あまりの酷使に短期間で重整備が必要になった機体も多い。

 

 エカテリンブルクも市庁舎と共産党支部の制圧で戦闘は終了した。要した期間は1週間。レニングラード攻略戦の終了に遅れること2週間だった。もっとも、敵味方識別に時間が掛かってしまい戦闘は大して発生していない。

 ここで問題になったのはエカテリンブルク市民30万人だった。補給路に強烈な負荷が掛かった。

 鉄道輸送される物資の中に、ガソリン、軽油、石炭の燃料が占める割合は20%にも上る。冬になる前に越冬用の暖房用燃料の確保も必要だ。更に負荷が掛かる。

 後方では懸命に機関車と貨車の生産をしているが、増える需要に辛うじて対処できているというのが実情だった。それに線路の保守回数も確実に増えている。いずれ破綻するのは目に見えていた。

 これ以上の進撃は補給の観点から言って無理だった。モスクワはあまりにも遠く、シベリアはあまりにも広大で厳しかった。

 ロシアも手をこまねいていたわけでは無い。シベリア鉄道敷設時の技術・能力では不可能だった直線をバイパス的に建設し、少しでも時間の短縮を目指している。これで機関士や車両に掛かる負担も減る。

 多くの駅では引き込み線の増設をしてその駅向け貨車はそこで切り離すなどの努力をしている。それでも足りないのが現実だった。


 それでもロシアはエカテリンブルクを取り戻したと世界に向けて発信した。

 ロシアではお祭り騒ぎだった。遂に母なるロシアの大地へ前進したと。


 ロ日連合軍がエカテリンブルク進出後始めたのは飛行場整備だった。ソビエト軍が造った飛行場を拡大することで工期の短縮を図った。また新たな飛行場も建設する。これにはエカテリンブルク市民に賃金を払うことで参加して貰い、人員を確保した。


 この時点で既にエカテリンブルクから撤収を始めている部隊もある。主に日本軍で派遣五個師団の内四個師団を後送する。彼らは、食糧と交換で貨車に積み込まれて帰って行く。その後でロシア軍も残存五個師団まで減らすことになる。とても補給が維持できないからだ。


 ロ日連合軍はもう前進は現実的で無いとして、新たな方策を選ぶことになる。

 連合軍に対して方策を示し理解を得る努力をし、何とか理解して貰った。特にトルコには慎重に接した。


 狂気の作戦「ソユーズ」ここに始まる。


 概要は簡単である。シベリアに展開している兵力を防御的な物を残し、残りを黒海へと回すだけだ。

 目標はヴォロネジ、次いでモスクワ。前代未聞な大兵力の移動である。まさに狂気だった。

 立案者は赤いナポレオンことミハイル・トゥハチェフスキー。彼も粛清で銃殺刑にはならなかったのものの、プグリノ送りになり凍死したことにされてロシアに逃げることが出来た人間の一人だった。


 黒海に送られた兵力はアゾフ海の海岸に上陸する。主にヤルタ周辺だ。30万人を上陸させようというのだ。狂ってるとしか言い様がない。30万人がエカテリンブルクの人口と同じだというのは偶然である。

 後に上陸作戦は縮小された。コンスタンツァに増援として送りハリコフ経由でヴォロネジにて合流という事になる。それでも計画は大きすぎた。

 では、オデッサ占領をしてオデッサに上陸はと言うと。

 連合軍はオデッサ市幹部や共産党と交渉するも「降伏は無く抵抗有るのみ」と言う答えを得る。

 オデッサを強襲しても日本軍の損害が増えるばかりで、相手は市民を盾にしてくるだろう。また市民も抵抗をするらしい。オデッサは攻めないことになる。



 この作戦はエカテリンブルクで事実上の行き止まりとされたロ日連合軍が選択した一つだった。

 極秘作戦は五ヶ国会談前に存在したが、条件が変わり実現が不安視されたために「ソユーズ」が次善の策として用意された。

 同時に、いずれ破綻するシベリア鉄道一本での補給体制を少しでも先延ばしにするためでもあった。


 ソユーズでは、まずシベリアに展開している兵力を3割程度まで減らし、減らした将兵を黒海まではるばる送ることが肝心だった。

 その基本となる展開済み兵力は歩兵45万人、重砲800門、野砲2500門、山砲500門、迫撃砲大小5000門、機関銃各種3万基、中戦車600両、軽戦車200両、装甲車2400両、他トラックやバス、クレーン車やブルドーザーなどの建設車両他補助車両36000台。

 航空機は戦闘機1800機、襲撃機や小型爆撃機が800機。中型爆撃機800機。輸送機600機。補助機300機以上(員数外を含むため不明)

 兵站要員は補給部隊と軍属まで含めて10万人近い。


 この内、歩兵15万人は防衛のため残すとして、黒海に送るのは30万人。これだけでもキチガイじみている。

 重砲は拠点に設営された砲が多く、移動可能な砲は少なく200門程度だ。持っていくか議論になったが、ヨーロッパで買い付けた方が弾薬の補給に問題が出ないとして必要数を買い付けることになる。

 野砲は基本がフランス製の弾薬が使用可能なので1000門を持っていくことにした。足りなければフランスから買い付ける。

 山砲は持ち出さず、迫撃砲で代用を図ることになった。

 戦車は中戦車400両、軽戦車は悩んだが100両持っていくことになった。

 装甲車は1200両を運ぶ。他は現地で他国の車両を使うことになった。比較されたのはドイツとアメリカのハーフトラックで、安さと走行性能からアメリカ製に決められた。多少の欠点は目をつぶる。

 航空機は戦闘機400機、襲撃機や小型爆撃機400機、中型爆撃機400機、輸送機100機。

 輸送機が少ないのは極秘作戦に使うからだった。

 他に河川交通用に大発艇多数。架橋機材を持っていく。

 トラックだが、もう国内メーカーが手一杯であり現地調達を図ることになった。それでも初期展開用に1000台持っていく。持っていく台数が少ないがシベリアでは常に不足気味で残された台数でようやく充足される程度だった。

 ここでもフランスは生産力と性能に欠け、アメリカ製が幅をきかすことになる。フランス製は皆フランス軍に回っていた。


 最終的に決定された「ソユーズ」に投入される戦力は 

陸軍 

 二十個師団  ロシア十六個師団。

        日本四個師団。日本は遣欧軍からの派遣を含む。

        ただし、初期は五個師団のみ。残りは継続的に投入される。

        逐次投入であるが、輸送力の限界であった。 

空軍

 作戦機 600機  日本遣欧軍からの派遣も有るので減らした。

     戦闘機100機、襲撃機や小型爆撃機300機

     中型爆撃機、偵察機、輸送機含めて200機

 これに兵站部門を含めると、空前の兵力移動となる。日本は自前の船舶でなんとかなりそうだが、ロシアは船腹量が決定的に足りず、各国の船舶を借り入れることになる。




 モスクワ攻略戦はモスクワに兵力が集中していることもあり、かなりの困難が予想された。都市閉鎖を出来るほどの戦力は無いので、兵糧責めも不完全になる。やはり徹底的な空爆で戦力を減らすしか無かった。

 予定では作戦開始は10月下旬。作戦終了が12月中旬。なんとしてもクリスマスまでに終わらせるのだ。

 よって、作戦開始前に航空撃滅戦は始めている。ソユーズなどは兵力展開がギリギリである。


 本当に「クリスマスまでに戦争を終わらせることが出来る」のだろうか。


ウラジオストックから黒海。

兵力移動できるのかなという疑問は、この世界では可能という事で。


次回更新未定 近いうちに

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