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ここは日出ずる国  作者: 銀河乞食分隊
平原騒乱
43/60

ナポレオンの後継者達

4/3 一部修正しました。

 軍備は整った。後は進軍のみで有る。ソビエト中南部ウクライナ方面に若干の不安が有るが、日本に掻き乱して貰いソビエト軍の航空戦力を分散させれば、航空優勢は圧倒的になり地上戦も非常に有利に進むだろう。

 もうソビエト軍の装備はボロボロだ。威力偵察で確認した程度で有るが、将校用軍靴の靴底がゴムでは無く革になっていた。もう行き渡るだけのゴムが無いと判断された。他にも有用金属の不足か材質が落ちていた。


 やはり我々は「クリスマスまでに戦争を終わらせることが出来る」そう連合首脳部は楽感した。


 進軍は開始された。目標は要衝リガである。バルト海はイギリス本国艦隊に支配された。最奥のレニングラード周辺だけがソビエトの支配する海域だ。商船がドイツはおろかポーランドのグダニクスまで護衛付きで行き交う。上空には常に戦闘機が陣取りソビエト軍機の接近を許さなかった。



『暇だな』


「中尉、無線で無駄話しないで見張りをしてください」


『でもな、ソビエト軍はどこに居るんだ』


「そんなことは、ソビエト軍に聞いてください」


 船団上空ではよくこんな会話がされていた。それほどまでにソビエト空軍は弱体化していた。地上支援に懸かりっきりで海上まで出てくる余裕が無いのだ。


 連合軍の進撃は順調だった。無人の野を征くまでは行かないが、抵抗は微弱だ。ソビエト正規軍が撤退すると地元住民で構成された地元軍はほとんどが降伏した。それどころか連合に加わりソビエト軍に攻撃するという事態まで起こる。

 これには敵味方識別が付かないとして、降伏した軍はしばらく地元の治安維持に当たって貰うことになった。

 問題はソビエト軍が撤退する時に焦土作戦を行っていることだ。略奪も当然やっている。困る連合。

 特に食糧の不足が問題視され、アメリカから急遽輸入する。


 ポーランド国境を越えた連合軍はリトアニアに入りリトアニア国内のソビエト軍を追い払うとラトビアのリガまで後少しという所まで来た。ミンスク方面からの横槍に注意しなければいけないが、そこはきちんと対応する兵力を置きソビエト軍が動きにくくしている。

 ドイツ・オーストリアの連合軍だ。ただ練度も装備も不十分で有り、予備兵力扱いだった。ウクライナ国境で威力偵察を繰り返し、戦力を誇示することでソビエト軍の関心を引きつけることが任務だ。

 レニングラードを目指している部隊ははイギリス・フランス・ポーランドを主力とし、各国の少数兵力が帯同していた。はっきり言って邪魔なのだが、連合内の協調性を高めるという理由で配備されている。


 リガを取りたいのは港だった。港が有れば輸送力は格段に向上する。近代戦では兵站=戦力と言ってもいいくらいだ。

 リガは驚いたことにソビエト軍が撤退した後だった。早い。もちろん食糧・物資は略奪されていた。

 市内に入った連合軍は歓迎された。冗談みたいだ。

 戦闘無く奪取できた事は喜ぶべきだが、連合軍首脳部は困った。地域防衛のために出撃するソビエト軍を逐次撃退し弱体化させることも目的だった。そのためにも非常に目立つ重要地点で有るレニングラード攻略に乗り出したのだ。レニングラードかモスクワに戦力を集めるのだろう。偵察機の結果からも明らかだった。

 リガの次はエストニアのタリンを目指すのだが、ろくな戦力は置いていない。タリンに一大集積地を造りレニングラード攻略は腰を据えて行うというもくろみは変えていない。変えていないが、無駄に損害が増えそうだった。もしレニングラードでソビエト軍が市民に紛れてしまえばやりたくない一手を打たなければいけないのだろうか。市街地に対する無差別絨毯爆撃という手段を。戦後の統治や外部からの評価が分かっているだけにやりたくなかった。綺麗に戦争をやることになっているのだ。いつの間にか。

 市街地に潜む敵集団を撃破するには急降下爆撃によるピンポイント爆撃が一番有効と思われた。軽戦車などで進入すれば対戦車ライフルの餌食になってしまう。少なくとも中戦車以上で無いと危ない。だが地上戦は最後の手段とされ、それまでは徹底的に航空攻撃で敵戦力を削るとされていた。

 ここに至って急降下爆撃部隊の配備を決めた。決めたが、出来る機体は限られていた。

 今までは平原の戦いで有り、急降下爆撃機の必要性は少なかった。なので考慮されていなかった。

 候補に挙がった機体はいずれも旧式で低速が問題視された。ソビエトの迎撃機はあまり問題とされなかった。既に実戦能力は機体の減少と共に落ちている。レニングラード攻略に先立ち航空撃滅戦を行うので、更に数は減るだろう。直衛機による上空警戒を密にすれば対応可能と考えている。

 問題は低速による接近から退避までの暴露時間だった、それだけ対空砲火にさらされることになる。意外と対空砲火は強力だった。シベリアなどでは精密な爆撃が出来る低速機が不用意に近づけば集中射を浴びてしまい損害もバカにならなかった。そのため高速機による爆撃で一旦対空砲火を弱らせてから低速の襲撃機が仕事を始める戦術も採られた。


 高速発揮できる急降下爆撃機は唯一彗星が在ったが、日本海軍でさえまだ練習機を含めても300機程度しか無い。月産も数十機位なのでとてもヨーロッパの前線で使う数は無かった。と言って、ドイツ辺りに生産させようかと言う話になるが、戦時で有りライセンス交渉はほぼ省略しても工場の立ち上げや資材の準備、新型機に対する教育などでどうしても数ヶ月先になってしまう。

 そこで、仕方なく現用機を集めることとなった。そこでまた問題が出た。イギリスのアルバコアは生産中止。日本の九九艦爆も生産中止。ドイツのJu97は開発中でとても間に合わない。日本の九九式襲撃機も有るが、シベリア方面の戦闘で必要で有り、いきなりヨーロッパに回せとも言えない。少数は回してくれるようだ。

 そして候補に挙がったのがSBDドーントレスだ。急降下爆撃機で有り爆弾搭載量も大きい。即採用で、アメリカとの短期の交渉の末、6月中に200機配備が可能になった。

 これを聞いたイギリス海軍はアルバコアを提供。日本海軍も彗星に交替する予定の部隊から九九艦爆を引っこ抜いて提供した。イギリス・日本とも、搭乗員・整備員も各国100機分程度であるが送られた。

 日本は泥縄で、現地二航戦の機体(輸送船の中にある予備機体も含む)と搭乗員・整備員まで差し出した。足りない人員は日本から空輸だった。艦爆の空輸は非現実的で、追加で船便が出る。

 ドーントレスのパイロットと整備員は100機分であるが哀れにもアメリカ海軍から退役させられ、フランス外人部隊へと就職先を変えられた。彼らは、アメリカ政府からかなりの好条件を示されたようである。


 これにより7月初旬には500機もの急降下爆撃機が揃うことになる。日米英の300機分を除く残り200機分の人員は現地空軍から選抜された。

 タリンに進出し無事集積地と航空基地を作り上げた連合軍は1944年7月中旬、レニングラード攻略を開始した。予定では2ヶ月で完了する。

 既に周辺で脅威となる飛行場はあらかた潰している。

 そしてレニングラード市内および周辺への小型機による対地攻撃が開始された。主要目標は対空陣地、砲陣地、機銃陣地、装甲車両、宿営地である。


 その中にはドーントレスに乗りご機嫌なドイツ人もいた。牛乳が大好きな御仁である。もちろん後席に乗せているのは愉快な仲間であろう。

 

 直衛機が上空警戒をする中、各機降下を開始した。




次回更新未定

この世界線ではドイツにベルサイユ条約の縛りがあり、攻撃性の高い爆撃機のような機体の開発は許可されていませんでした。ソビエトが怪しくなったので多少は緩和され、ソビエト侵攻で枷が外れましたが、開発から実戦配備までは時間がかかりますのでドイツオリジナル機体登場は相当先です。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >軍靴の靴底がゴムでは無く革になっていた。もう行き渡るだけのゴムが無いと判断された。他にも有用金属の不足か材質が落ちていた。 娯楽作品であり考証にこだわった物で無いのは理解しております…
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