表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ここは日出ずる国  作者: 銀河乞食分隊
平原騒乱
38/60

ドイツ混乱

 ドイツは、ソビエト人民共和国の攻勢をBFJR連合の力で乗り切った。初動で押し切れなかったソビエトは、おそらくもうダメだろう事は明らかだった。ソビエトは欲をかきすぎたのだ。ポーランド以外目もくれずに侵攻すれば、ドイツも落とせただろう。

 そこで、問題が出てくる。

 ソビエトと組んでスペイン内戦に首を突っ込み兵器の性能試験やらをやったあげくに国庫の金塊を盗もうとして失敗。国際的に笑い物になった。

 オーストリアをアンシュルスし、絶好調だったヒムラーの最初の躓きだった。アンシュルスした後は中央ヨーロッパ諸国にゆっくりと影響力を高め、軍備増強をした後、強制的に併合路線をたどる予定だった。

 そこに、ソビエト人民共和国の侵攻だ。

 これを防ぐ力は無く、BFJR連合の力を頼ることになった。

 ソビエトをBFJR連合の力で撃退した後、誰が失敗したのかが問題となった。もちろん問題にされたのは、第1政党である政権与党ナチス党を率いるヒムラーで、これに強権を持って対処しようとした。

 だが、国内にBFJR連合軍が駐留しており弾圧された市民は、BFRJ連合軍を頼った。

 チンピラ上がりが多いナチス親衛隊と正規軍では能力に大きな隔たりがあり、BFRJ連合軍駐屯地に逃げ込んだ市民の奪回は望み薄だった。ナチス政権は引き渡しを要求するが、人道的に認められないとして拒否された。

 BFJR連合はナチスを助けたわけでは無く、ソビエト人民共和国にドイツが組み込まれるのを防ぎたかっただけである。WW.1で大きな損害を与えてくれた相手を犠牲まで払って助ける気はなかった。

 そこに、BFJR連合軍にドイツ防衛隊から秘密裏に接触があった。ナチス排除をしたいと。



 BFRJ連合軍ドイツ駐留軍司令官、アーチボルト・ウェーベル大将が言った。

 

「君は、ドイツ防衛隊の軍人だね。これはクーデターだよ」


「クーデターであることは間違いないでしょう。だが、今やらなければ機会が遠のくと思うのです」


 レオ・ガイヤー・フォン・シュヴェッペンブルク少将はこう返した。


「フム、面白い提案だが、現地の裁量で出来ることでは無い」


「では、本国に諮っていただけると」


「それは約束しよう」


「おお、ありがとうございます」


(確かにナチスを排除するには今は良い機会だが、焦っているのでは無いのか。戦争が終わった後で責任を追及すれば良いのでは?それに誰が主導権を握っている?目の前の人物で無い事は確かだな)

 そんなことをおくびにも出さず、その隻眼をドイツ軍人に向ける。



 発端は、ソビエト人民共和国の侵攻によってドイツ全土に非常事態宣言が出された事だった。次いで、ベルサイユ条約の縛りが解け、ソビエトに宣戦布告し大規模な軍備が可能になった事である。

 これによりナチスが強権を振るえるようになったのである。

 親衛隊が横暴を極めつつあったが、内政問題でありBFJR連合は忠告するにとどまっていた。

 だが、あまりの横暴に市民の怒りが爆発。BFJR連合軍ドイツ駐留軍の居る都市では暴徒となり、親衛隊を圧倒。だが親衛隊が火器を持ち出すと途端に離散。BFJR連合軍ドイツ駐留軍駐屯地に逃げ込んだのだった。蜂起した暴徒の動きは際立っていた。まるで計画されたように。

 


「日本としては、ドイツ国内問題に口を出す気はありません。ただ駐屯地に危険が迫れば排除するとしか」


「ロシアも同じですな。もっとも、ドイツには外交官と武官くらいしか居ませんが」


「ではこの問題は、我がフランスと英国に解決せよと」


「日本はこちらに詳しくないのですよ。手出しをする気はありません」


「ロシアは、エカテリンブルグを現在最重要目標にしていますので、こちらに手出しする余裕などとても」


 BFJR連合の会議はパリで行われていた。

英国

 ウィンストン・チャーチル首相、他数名

フランス

 ポール・レノー首相、他数名 

日本

 吉田茂全権大使、他数名

ロシア

 セルゲイ・ノバチェフ全権大使、他数名

トルコ

 シュクリュ・サラジオウル首相、他数名


 トルコは黒海出入り口を擁する重要参戦国であり、招待しないわけにはいかなかった。ただ、自分には関係ないとばかりに、だんまりである。

 チャーチルと吉田は何が面白いのか葉巻の煙を相手に向かって吹きかけるという、喧嘩売ってんのかとも取れる下品な行為をお互いにやって、ニヤニヤしている。

 レノーは胃を押さえている。


「ド・ゴール君、君はどうすると良いと思う」


 いきなりチャーチルが質問した。フランス語がしゃべれるのに英語でだ。


「そうですね。確かにナチスを潰すのには良い機会でしょう。ドイツ国内では高度に組織化された反ナチ組織が有るようですし」


 英語をしゃべれるのにフランス語で答える。


「フム。良いだろう。英国としては賛成します。レノー首相。どうですか」


「フランスとしては、問題ない。ただ相手の首謀者がはっきりしない。誰を相手にするというのだね」


「そうですな。もう少し協議したいと言って誘い出しますかな」


「出てくるかね」


「出てきて貰わねば」


「では出てきたところで、暫定政府代表にでもするかね」


「それも面白いですな」


 吉田、ノバチェフ、サラジオウルの三名は聞いていないふりをする。イギリスとフランスで勝手にやってくれと言う意思表示だ。


「では、この件についてはフランスと英国にお任せするとして、ソビエトですが」


 吉田が話題を変える。


「英国としては(社会主義は)危険なので徹底的にやりたいのだが」


「フランスとしては、クレムリンの(あるじ)にあの下品な奴らは望まない」


「ロシアは、ロシアの大地に帰りたいですね」


「日本としては、ロシアの後押しを続けます」


「ロシアが帰ってきて、再び南下政策をとらない保証は?」


「それにつきましては、ロシア皇帝ニコライ2世より親書を預かっております。サラジオウル首相にお渡しするようにと」


「ここでかね」


「公開するのはかまわないと、お言葉を頂戴しています」


「では、見せていただこう」


 ノバチェフは随行員からトランクを取り寄せ、中から封書を出した。封書は封蝋で留められていた。


「では、拝見する」


 サラジオウル首相は親書を読み、手を震わせる。顔も少し赤くなっている。


「むう。これは…。これで良いと?」


「詳細は存じませんが「今後、南下する意思の無い事を示す」と仰せられました」


「我が国以外にも教えて良いのだな」


「はい」


「では明らかにしよう。詳細は省くが、大きくは国境線は現在我が国が主張する国境線で確定。黒海艦隊は廃止。以上の2点。黒海には警備艇程度しか配置しないとも。黒海からカスピ海にかけての陸軍も大幅に削減する。他、細かい事が書かれていますが、ロシア回復後には恒久的な条約を結ぶと」


「大盤振る舞いですな」


 皆驚いた。ロシアがである。本気だと思った。


「では、このままソビエトは退場。いえ、消えていただくという事でよろしいですかな」


 チャーチルが言った。他の全員が賛成する。


「では、次いで戦線の動きだが……」


 会議は続いた。


次回更新未定、近いうちに。


最初の方でヒトラーとなっていますが、こっそりヒムラーに修正してあります。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 夢見る画家さんが居ないから統率も強くないのかな、ナチ政権は。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ