雷電
雷電です。史実ではエンジン出力不足、各種振動問題で一時本当に戦力化が危ぶまれた機体ですが、かろうじて戦力化。
日本を発った遣欧艦隊は、航海速力の遅い支援部隊と掃海部隊を先に進ませシンガポールで合流した。
まだ、イギリス海軍軍人からの目は厳しいものが有ったが、お互い任務として割り切っていた。
次の寄港地はコロンボで、何故か住民からの目は期待に満ちたものだった。
ついでジブチなのだが、ここで問題が起こった。航海中大型サイクロンに当たってしまったのだ。巡洋艦以上の大型艦はともかく、駆逐艦以下の船舶では大変だった。特に1000トンの海防艦と600トンの掃海艇では、乗員に業務に差し障りが有るほどの強度の過労や打撲・骨折などの怪我が多く発生。一部艦艇では要員数が足りなくなり、戦艦などの大型艦から要員を補充する始末だった。この怪我人達は大鯨で静養を図り、艦隊はそのままジブチを目指した。
イギリス海運当局から航路情報として天候の悪化が知らされていたのに、予備日が有ったにも関わらず日程を優先し航海を強行した司令部への風当たりは第四艦隊事件を思い出させるものだった。後日、艦隊司令部はその責任を問われ黒海に配備予定だった二式大艇に乗って飛んできた後任司令部員へと替わられた。
艦隊はジブチで静養と機材整備を図りたがったが現地に余裕が無く、補給を済ませたのみでアレクサンドリアへと向かった。なおここで本土から共に来た補給艦数隻が物資を艦隊に渡し終え帰国している。
無事スエズを通過しアレクサンドリアに間借りした遣欧艦隊は、大型サイクロンでの損傷確認を終えると訓練を始めた。電探アンテナの損傷が意外と多く、アンテナ基部やアンテナ自体の強度が問題となった。
幸い、持ってきた補修物資の中に電探アンテナも有りアレクサンドリアで修理となった。
一番目立ったのは、やはり大和だった。ついで二隻の空母。
長い航海で鈍った技量を艦隊運動や離着艦訓練を繰り返し取り戻す。水上機母艦も同じだ。ただ水上機母艦はカタパルトの火薬節約のため射出は全機1日1回で止め、現地静水面での離着水訓練だった。
この訓練中、ちょっかいを出してきたイギリス・エジプト軍のハリケーンのケツを零観が取るという場面があり話題になった。
訓練中に本土から新司令部員を乗せた二式大艇が到着。司令部員は交替した。
交替の艦隊司令長官である南雲忠一中将は困っていた。前任の高須四郎中将がアホなことをやり、引責更迭された後釜に放り込まれたのだ。あいつは海軍軍人でありながら第四艦隊事件を覚えていないらしい。自分は大和で平気だろうが、小型艦はたまらんだろうに。根っからの水雷屋である南雲は思う。
一応出発前にレクチャーは受けたし大艇の中でもいろいろ思考した。それでもいざ現実となると困る。大いに困る。
そんな中、1隻の貨物船がアレクサンドリアに荷揚げしたのは航空機だった。艦上機ではないので飛行場まで運搬して組み立て後、空路でトルコ経由ルーマニア行きと言う事だ。
「なんでここなんですか?ドイツ国内に拠点が有るじゃないですか」
「アレは陸軍の拠点だ。海軍の拠点では無い」
「かなり短期と聞きますが、それでも独自拠点は必要なんですね」
「海軍は、海が無いとな」
(そんな理由か~い)三菱重工名古屋製作所から派遣されてきた木島技師は呆れた。
(俺が理由なんて知るわけ無いだろ)空技廠審査部小野田中佐は適当に答えていた。個人的には陸軍と共同運用の方が利便性や作戦上の利点が有り、良いことだと思うのだが。未だに「海軍としては陸軍に反対で有る」の人も多いからな。
とりあえず陸揚げされた航空機は部品のままアレクサンドリア郊外のイギリス軍飛行場に運ばれ、間借りした格納庫で組み立てを始めた。
陸揚げされたのは、一四試局戦だった。外形はともかく発動機の出力不足と振動問題や不調でモノになるかどうか危ぶまれていた機体だ。
だが、ようやく実用化された小型宗方機関による出力増強で火星エンジンの軸出力は遂に二千馬力を超えた。
原型の試作機をベースにプロペラ延長軸を止めてそこに宗方機関を押し込んだ。また、不調の原因の一つで有る水メタノール噴射は使用中止となった。
強制冷却ファンも宗方機関導入によって廃止となった。これは、宗方機関と大して直径が変わらず効果無しと見られたからで有る。懸念される冷却で有るが、エンジンカウルの形状を大胆に変更。大開口部を四カ所設けて空気取り入れ量の大幅な増加を図った。形状的には単にカウリング外形に沿って開けただけで有る。後にこれでは流入空気量が不足気味と言うことと乱気流の発生が危ぶまれたのでインテーク形状の見直しがされた。
各部変更による重量増加でただでさえ前が重い飛行機が余計前が重くなってしなった。これには、発動機防火壁を後退させエンジン自体を後方に下げることで対応を図った。水メタノール噴射装置の撤去でメタノールタンクが不要になり、機首機銃の7.7ミリは効果無しとして外されたのでその分後方に下げる余地が出来ていた。それでも前が重かった。
振動問題は各部の強化とクランク周りの見直し、プロペラを新型にすることで実用レベルまで軽減された。
プロペラはハミルトンから購入した物で、中立国としての義務は?だった。もっとも対ソ戦開始後もP-39を継続して輸出している上に燃料や潤滑油も提供している以上、今戦争においてアメリカの立場はBFJR連合側と言う事になる。
十四試局戦増加試作型J1M2(仮称・雷電十一型)
全長 10.3m
全幅 11.2m
全高 4m
自重 2,760kg 全備重量 3,780kg
発動機
火星三三型 離昇出力 2,080馬力(宗方機関無しで1,600馬力)
最高速度 660km/h(高度6,800m)
航続距離 正規1,800km(増槽使用時2,400km)
武装
九十七式一号一型20ミリ機銃4丁 装弾数各百発 弾倉式
爆弾等 六番二発を左右主翼下計四発 胴体下は落下式増槽のみ装備
雷電24機が組み立てを終わり、飛行を始めたのは夏になってからだった。
戦線に間に合うのだろうか。
雷電は宗方機関収納スペースが有りますから、付けました。多分二式大艇も付いています。
プロペラはハミルトンから供給を受けます。
多分この世界ではVDMプロペラは有りません。ハミルトンかラチェが主流でしょうか。
次回更新未定、近いうちに




