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ここは日出ずる国  作者: 銀河乞食分隊
平原騒乱
35/60

追加戦力

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 輸送船がロストクの港に着いた。ここからは鉄道でドレスデンを目指すことになる。周りを見ると盛んに地面を踏みつけている。自分も思わずやっていたことに気が付く。恥ずかしい。

 遠かった。日本を出て、海南島、コロンボ、アレキサンドリアと経由してようやくだ。

 パナマ運河はアメリカがおおっぴらにBFJR連合に手を貸していないため通過を諦めた。

 なんでバルト海までと思わんでも無いが、日本に割り当てられた港がここだった。ハンブルクやヴィルヘルムスハーフェンはイギリスが使うと言う事だ。どう考えても意地悪をされているとしか思えなかった。

 途中、ユトランド沖では戦没した艦と乗員に向けて黙祷と花束が捧げられた。


 陸軍航空本部第二部部長福井中佐が追加戦力第四便でやって来たのは、P-39の部品などがアメリカから直接届くようになるからだった。対米渉外担当と備品管理者として寄越されたのだった。立場は日本陸軍遣欧軍航空乙参謀であった。


「遠い。遠すぎる」


 勘弁して欲しかった。しかもここには駒井整備大尉と榊整備大尉の二人が揃っている。陸軍航空関係の管理職にとっては是非避けたい赴任場所でもあった。P-39に関わったのが運の尽きだろう。相方は完全な技術職だったが、自分は軍政だった。おかげでこちらに回されてしまった。


「辞めたい。無理だろうな」


 ため息しか出ない。幸せが逃げていくじゃないか。


「福井中佐、陸揚げされた物資の確認が終わりました。欠品は有りません。破損は途中の時化で荷崩れした箱がありますが、ドレスデンで開けないとどの程度かは分かりません」


 参謀付きとして副官をやっている中川中尉が報告する。


「よろしい。飛行戦隊も先ほど欠員は無いと報告があった。あと、30分か。列車に乗ろう。また揺られるのはたまらんが、ここからは地面の上だ」


 陸揚げされた物資は航空関係だけでは無かった。軍需品や民生品すべてだった。第四便の物資管理責任者でもある福井中佐は最後まで残って見届けていた。歩兵達は先の列車で既にドレスデンに向かっている。

 第三便で追加2個師団と若干の航空兵力と機甲戦力が追加された。

 第四便では、歩兵2個連隊、砲兵1個連隊、戦車1個連隊、支援1個連隊、航空2個飛行戦隊だった。これは追加戦力だけで、物資は補給品を含め日本軍とは思えない量を持ってきている。

 飛行戦隊では人員の他、新司偵12機、P-39はなんと180機が来ている。それも新型発動機だった。ようやく燃料噴射装置の設定が完了して試験も終わり、実機に採用されたのだった。機数が多いのは従来配備されている機体を更新するためだった。

 この機体の組み立て調整をあの二人を指揮してやると思うと、福井中佐は気が遠くなりそうな思いだった。



「福井中佐さんよう、ようやく発動機完成したみてえじゃないか。調子はいいんだろ?」


「榊整備大尉、もちろんだ。180機いつ頃組み立て終わる?」


「そうですな、いまいち腕前が不安な奴らを面倒見ながらだから1日10機ってとこですか。他の整備もしなきゃいかんので減るかも知れないですな」


「そうか。駒井整備大尉の所の方が腕前はいいのか?」


「こっちは自動車整備士まで含めた寄せ集めだが、向こうはベテランが揃っていやがる「20機はいけるぞ」などと、ほざいていやがりましたな」


「遅くても10日有れば大丈夫か」


「はい」


「新司偵は?」


「もちろん一番最初です」


「助かる」


「そうそう、搭乗員からだが、純戦闘機型、二型ですな。をもう少し増やしてくれないかと俺に言いやがった」


「うん?純戦闘機型か」


「どうも地上目標が減っているので、もっと進撃するのだろうと。そして、この先踏み込んでいくなら空戦も発生するだろうから、増やしてくれとね」


「そう言う要望は届いていない」


「だから、言い始めたとこさ。根回しって奴だ」


 面倒な人に話を持って行かれたな。搭乗員もよく分かっているじゃないか。こりゃ、明日辺り飛行団長から言われるな。


「その話は聞いておく。おそらく通ると思う。希望機数を言ってくれ。全機などと言ってもダメだぞ」


「そのくらい、わかってまさ」


「地上攻撃機型からの変更にはどのくらい掛かる?」


「いろいろ外すだけですから、通常業務をやりつつも1日20機は出来ると」


「分かった。とりあえず、1日10機やってくれ」


「了解」





------------------


 従来のキャブレターは基本的には、スロットル開度でメインジェットが動き燃料供給が調整され、それをベンチュリ効果による気化でシリンダーに送り込んでいた。大雑把な燃料供給調整量である。そう、大雑把である。またキャブレターの整備・調整も高性能エンジンとなれば1気筒1キャブであり、気筒数が多いだけ調整は大変だった。

 燃料噴射装置なら微調整は必要だが、最初に設定値が決められている。現場では整備が大幅に楽になる。キャブレターに比べて空気流路にベンチュリなどの障害物が無く流れが良い。吸気マニホールドの設計が吸入空気をよく流れるように設計できる。理論上は気筒ごとの燃料供給量のばらつきが無く燃料が均等に供給される、機体がどんな姿勢でも燃料が供給されるなど、様々な利点があった。


 P-39に搭載されたV1710はアレを付けた状態で1400馬力を超えたが、燃料噴射装置を付けることで過給圧を上げても燃料供給に無理が無く1700馬力まで上げることが出来た。これはアメリカ・アリソン社の協力も有ってのことで、更にアメリカからの航空用100オクタン燃料と航空用潤滑油との合わせ技だった。 

 アリソン社員はずいぶん真剣にアレと燃料噴射装置を見ていたが、燃料噴射装置はボッシュの特許で日本はライセンス権を持っているだけ。使いたければボッシュと話し合ってくれ。

 アレは戦後に公表するからそれまで待て。


 アメリカも戦後を見据え、国内で反対が強いため参戦は出来ないが、物資の提供で少しでも戦後の影響力を高めたいという思いもあった。日本だけでは無く、参戦国すべてに物資の格安での提供を申し出ていた。中立国のはずなんですがね。民間企業での輸出という形にしている。燃料供給に不安の有ったBFJR連合は戦後アメリカの発言力が大きくなりそうな事態であるが渋々受け入れた。

 


キャブレターについてはかなりたくさんの情報がネットに転がっていますのでそちらを見てください

個人的には可変ベンチュリのSUキャブが好きです。SSS乗ってたし、ダンパーオイルの粘度や量で吹き上がりや高回転の伸びが違うのも面白かったなと。


次回、更新日時未定

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