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ここは日出ずる国  作者: 銀河乞食分隊
平原騒乱
33/60

独立第十八飛行団のある日

東は冬眠なので


 シベリアでソビエト人民共和国の闇におののいている頃、ヨーロッパではソビエト人民共和国の攻勢が息切れしたのか守勢になっていた。

 シベリアは寒すぎて戦闘にはならないが、こちら側はそこまで寒くないので戦闘になる。

 ソビエト人民共和国の攻勢はフランクフルト周辺だけで終わり、それさえも追い出されていた。今は東はモーデル川を、南はドイツ・チェコ国境を境に対峙している。

 これはBFJR連合軍もそこまで余裕がないためだ。この時期活躍するのはやはり空軍だ。現代戦では空軍抜きでは語れない。

 


「なあ、シン」


「なんだよ」


「最近敵がおかしい。動きが鈍い」


 そう言われれば確かに同じ型の機体でも動きが悪い。いいのはPe2だけだった。


「ミッキーよ。それはいい事じゃないのか」


「そうだぞミッキー。敵が弱いのはいい事じゃないか」


「グレッグまでそう言うのか」


「おかしい事じゃないだろ。相手が弱ければ俺たちの優位だ。それは生存性に繋がる。油断しなければだがな」


「ケツを簡単に取られる馬鹿もいたし」


 シン、ミッキー、グレッグ他の面々も誰かのところを見た。


「うるさいな。油断しただけだよ」


 ブッシュが言う。


「そばにキッペン隊長がいたから助かっただけだろう。お前、いつか落とされるぞ」


「うるせーよ」


 ブッシュは捨て台詞を吐いて食堂を出て行った。

 ブッシュは最近になって入ってきた新入りだった。2個飛行戦隊に拡張された時だ。アメリカ陸軍航空隊で輸送機に乗っていた前歴を持つ。戦闘機パイロットになれなかったんで傭兵となってここに来たと言う。

 独立飛行八十八戦隊創設当時だったら、面接ではねられていただろう。そう思えば初期の戦隊員は精神的に余裕を持つ者の集まりなのかも知れない。

 八十八戦隊が、九十九戦隊の増設と併せて独立第十八飛行団になった時、急な増員で外国人のパイロットや整備員が6割を占めるようになってしまった。名実ともに外人部隊に見える。増えたのは多くがアメリカ人で戦闘機に乗りたいと言う理由が多かった。整備員はベル社から出向?みたいな奴もいたが受け入れた。日本はもうアレを隠す気はないみたいだ。

 ソビエトが許せないという人間はマシだ。空戦がしたいという人間はミッキーみたく手綱を付ければ押さえる事が出来た。

 問題は単純に敵を撃つ事しか考えていない人間だった。ブッシュのように。

 彼らはその欲望をうまく隠して採用された。そして度々味方に迷惑を掛ける。

 中には危うい人間もちらほらと混ざっている。ブッシュもその一人だ。



「駒井整備長は居るか」


 熊田中佐が訪ねてきた。この人はキッペン隊長の前任者だが経験を買われて独立第十八飛行団の司令部付きになっていた。その時に昇進して中佐になっている。十八飛行団の実質的な指揮官であった。


「コマイだったら、飛行団長と一緒にベルリンに行ってる。聞いてないか」


 グレッグが答えた。よく知ってるなとシンは思う。


「そうか。連れて行かれたか。あの人はフランス語が多少出来るからな」


「フランス語ですか」


 シンが聞く。


「前の戦争の時、こっちで覚えたらしい。会話が出来ないと整備で困ったそうだ」


「何かご用でしょうか」


「うむ。風杜一飛曹。本土から九十九戦隊に正式な整備長が来た。顔合わせしてもらうかと思ったのだが、居なければ仕方ないな」


「九十九戦隊の整備長ですか?」


「そうだ。駒井整備長とは長い付き合いだそうだ。厄介払いをされたな」


「厄介払い、ですか」


「・クセがな」


「・・付き合いにくいとかでしょうか」


「はっきり言っておく。駒井整備長と、上官に対する態度が同類だ。おまけにやはり前の戦争の時こちらにいてドイツ語が少し分かるそうだ。戦争が終わった後、調査のために居残りがいた。その中の一人だ。航空隊上層部も駒井整備長同様、ベテラン過ぎて扱いかねているらしい」


「類が友を呼んだのでしょうか」


「そう言う事だ。ただ言っておくと、機械愛が強い」


「きかいあい?ですか」


「機械が愛しいそうだ。発動機を眺めながら一杯出来ると言っている」


「「「・・ええ?」」」


「お前達の反応は正しい。俺もそう思った。陸士を出て飛行課程に進んだ時の教育飛行隊の整備分隊長だった。いろいろ世話になった。頭が上がらん。頭が上がらん飛行士官は他にも居る。やりにくくなる」


「「「お疲れ様です」」」


「ありがとよ」


 そう言って熊田中佐は去って行った。



「オイ、柴「ヘイ、おやっさん」おお、どこに居やがった」


「ハイ、場内を見てきました」


「どうだった」


「整理・整頓・掃除は行き届いています。一部治具・工具に不足がありますが、今回持ってきた分で補充と予備が揃います」


「そうか。そら良かった。で?整備の腕はどうだ」


「八十八戦隊は問題ないです。さすがですね。九十九戦隊でも陸軍の整備員は問題ないです。他には、さすがにベル社の整備員は慣れています。ただアレに戸惑っているようです。他は叩き直しです」


「下手くそなのか?」


「武装を扱い慣れていませんね。あとは民間の自動車関連から入った人間も多いですから」


「そうか。先にいた奴らじゃあ教えきれんかったか。仕方ないが、早いとこ上手くなってもらわんとな」


「どうしますか」


「どうもせん。一通り見る前はな」


「おやっさん。止めてくださいよ。陸軍の若い奴相手じゃないんですから」


「おう、そんなこた分かってる。さっき司令部で名簿を見たが、教えた奴も何人かいる。そいつらをまずやるか。クックック」


「・・(冥福を祈る)」



東京湾の埋め立て地から出張ってきました

アレ好きなんですよ


次回、更新日未定

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