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ここは日出ずる国  作者: 銀河乞食分隊
南海鳴動
26/60

仏印戦線 カムラン 停戦へ

停戦は外的要因ですね

 カムランに進出した日本軍であるが、本国より進撃停止と言う指示が出された。

 カムランを手に入れて、サイゴンが必要なのかという考えが増えたためだった。

 予想外にフランス軍の力が弱く、サイゴンに主力を集中しているのでは無いかという危惧もあった。これは偵察の結果からも判明した。おそらく航空戦が失敗し、仏印に上陸され足がかりを作られた時点で足止め以外はサイゴンに撤退したのであろう。

 本国の方針がぶれたのだ。あやふやなまま現地だけに任せるわけにはいかなかった。

 結局、交渉で妥結することとなった。


 交渉はスイスで行われた。

 日本側の条件は、

1.フランスだけでも即時の停戦。

2.フランスは英仏同盟を解消する。

3.日本に対する戦費程度の賠償。日本は領土を望まない事も伝えられた。

 他にも細々とした事項があったが、主な3要素はこれだった。


 フランスの回答は

1.停戦についてはやぶさかで無いが、英国との協議によるので時間が欲しい。その間、現地での戦闘行為の中止は認める。現地(仏印)のみであるが休戦を行う。

2.現状不可能である。

3.我が国は負けていない。

 他の項目も、現地の治安維持関係以外は概ね拒否された。だが、日本が実効支配している地域に関しては実効性を認めさせるのに成功した。

 これでカムランが自由に使えることになる。


 日本は交渉目的の最優先順位が現地での休戦だったので、文句は無かった。現地での休戦と、実効支配を認めさせる以外はどうでも良かったのであり、フランスもこれについては気が付いていた。すでに現地仏印では決着が付いたも同然であるし、フランス本国から増援を送ろうにも西がきな臭く躊躇していたのである。

 この申し入れはフランスにとっても都合は良かったのだった。





「終わった、終わった」


「何が終わりだ、シン」


「ん?ミッキーか。仏印での戦闘は終わったよ。先ほど司令部で聞かされた。休戦だと」


「ほう、もう戦闘は無いのか。しかし、イギリスがまだいるぞ」


「お前、この機体でイギリス領まで飛べるとでも?」


「相当な無理があるな。行ったら帰ってこれない」


「そういうことだ。もう陸軍航空隊の出番は無い。空母しか手を出せないよ」


「なあ、海軍では傭兵を募集していないか?」


「無いよ。なんでそんなに戦いたい?」


「そうだな。戦いたいのでは無く、空戦中のゾクゾク感がたまらないというか、帰ってきて着陸した後の安堵感が味わいたいとか。かな?」


「お前、軍人には向いてねー」


「自分でも思うよ。でも、戦いたいだけの奴よりはマシだろう」


「そんな危ない奴はいらん」


「でも戦いが終われば俺たちは不要だよな。首か?」


「それが首では無いんだな」


「「キッペン隊長」」


「新しい任地が有るらしいと言うか、出来る可能性があるそうだ」


「新しいですか?」


「うむ。ビールとソーセージには困らん」


「どこですか?そう言うと日本じゃなさそうですが」


「あ~、あれだ。俺たちは里帰りになりそうだ」


「ドイツですか?」


「そうだ。フランスが日本と休戦した理由の一つに西がきな臭いと有ったな?」


「はい、知っています」


「まさか、日本とドイツが組んで英仏と戦争ですか?」


「違う違う。なんでろくな軍備も無いドイツが戦争を起こさなければならん。日本も遠すぎるだろう。ここでさえ遠いと文句を言う奴がいるんだ。ソビエトだよ。ポーランドに侵入しやがった」


「「ソビエト」」



 日本がカムランを制圧する少し前に、ソ連が屁理屈を付けポーランドに侵攻を始めた。

 ソ連がその気になればポーランド程度一気に制圧で出来る気がするが、東方国境でロシアを警戒せねばならず全力にはほど遠かった。お得意の人海戦術は控えめにしてもポーランドが相手に出来る戦力では無い。

 ポーランドが軍の奮闘で抵抗しているが、土台が違いすぎて少しでも敗北の日を延ばすのが精一杯だった。

 その状況下での日仏の仏印のみで有るが休戦だった。


 その日の夕食後、八十八戦隊の兵員が兵舎の食堂に集められた。


 キッペン隊長が始めた。


「みんな忙しい中、ご苦労」


 全員が答礼する。


「さて、集まってもらったのは他でもない。この隊の処遇方針について上から説明が有った。皆に知らせておく」


 静まる食堂。


「英仏とはいまだに戦争状況で有るが、フランスとは仏印のみだが休戦。イギリスも海上で行動するだけで攻撃行動を取らない。実質この仏印、いや英仏との戦闘は終わったと言うことだ」


「では解散ですか」


 誰だろう。みんなが気にする質問をしたのは。


「解散は無いそうだ。引き続き実戦試験部隊として行動するようだが、任地がここから遠い。希望しない者は離隊してもかまわない。なんのペナルティーも無い。日本人は原隊復帰となる」


「どこですか?」


 当然の質問が飛ぶ。


「ここだけの秘密だ。外部には漏らすな。公然の秘密という奴だ。わかるな」


「「はい」」


「ドイツ、またはロシア・ソビエト国境」


「「ウエ」」

「「やった。帰国だ」」


「まあ待て、実はもう一つ候補が有る」


「どこですか。まさかトルコとか言いませんよね」


「トルコならまだ良かったかも知れない。暖かいかなら。ここの暖かさというか暑さに慣れてしまった身には楽だろう」


「寒そうですね」


「寒いぞ。ドイツよりも寒い。フィンランドだ」


「「え?」」


「フィンランドだ」


「ドイツならいいですが、フィンランドですか」


「可能性は少ないが有るかも知れないと言うことだ」



 日本が英仏とともにドイツ防衛のため対ソ戦に踏み切る可能性は高かった。第一次世界大戦の後、日本の国際影響力は増しており、ヨーロッパに対する影響力も増えていた。ドイツ防衛は口実だが、実際ドイツへの投資はアメリカに次いで多かった。ソ連に踏みにじられ奪われるわけには行かない。

 また、ロシアがこの機会を絶好と捉え、今のソ連最東端で有るクラスノヤルスクの奪還。うまくいけばノヴォシビルスクまでを勢力圏としたいようだ。

 ソ連がポーランドを足がかりにドイツを狙っているのは、どう見ても覆らない現実だった。ソ連に金が無いのは国際社会では常識だった。おまけに侵略性の高い政権だ。ついに始めたかという見方が多い。東に来なかったのはロシアと戦うよりも、ポーランドとドイツの方が近く弱そうだった。実際、兵力は少ない。おまけにロシアの金庫は日本に近いとても遠いところだ。そんな所まで戦線を維持できる能力はソ連には無かった。ソ連は現実問題として、西へ。そして、片手間にバルカン方面へと。

 ソ連のポーランド侵攻は英仏の対日宣戦布告を受けての行動開始だろうという見方が強かった。


 数日後、英仏から停戦の申し入れが有った。ポーランド状況を見てのことだろう事は察しが付いたが、売られた喧嘩を先に売った側が降りたのだ。日本有利な条件での停戦となろう。

 対ソ戦は国際平和のためソビエトを制裁すると言う口実が有ったが、戦争当事国ではどの口が言うのかと言うことになる。戦争状態から脱却する必要があった。遠いアジアで日本の相手よりも、至近の脅威に対抗しなければいけなくなった両国の苦しい対応だった。


 

 後日、飛行八十八戦隊は、ドイツ・ドレスデンに移動することとなった。ロシア戦線と言われたら日本人以外全員が離隊する意向を見せたためだった。日本人隊員も原隊復帰を望んだ。陸軍航空隊は成果の上がっている部隊が解散してしまうよりも存続を取った。

 同時にアメリカ人隊員の活躍を宣伝することによって、アメリカを旨く引きずり込めたらという思惑も有った。

史実よりも小さく貧乏なソ連をみんなでフルボッコにするのでしょうか

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