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ここは日出ずる国  作者: 銀河乞食分隊
南海鳴動
22/60

仏印作戦 カムラン手前

進みません。キーボードを叩く指と共にカムランは遠い。

 カムランを襲った空母部隊は冷静だった。

 主要軍事目標のみを襲い、軍港周辺の砲台や軍関係の倉庫、兵舎を壊滅させた。実際は戦力不足でそれしか実行出来なかったのだが。それでも、仏印駐屯フランス軍相手なら完全なオーバーキルになる。

 海軍航空隊のサイゴン空襲も概ね成功した。飛行場と軍施設のみを破壊し経戦能力を奪う。後は出てきても少数の機体だろう。開戦以来、少なからぬ損害を出した二〇三空の陸攻隊はこれを最後に内地に帰り、戦力の復旧に努めることになる。


 拡張されたダナン飛行場には陸軍飛行八十八戦隊が進出していた。戦隊員は全員がおかしいと思ったが命令だ。更に補充のP-39が増えた。増加した機体は対地攻撃仕様とも言うべき機体で主翼下に爆弾懸架装置を追加。両翼下に百キロ爆弾各二発を懸架可能になっていた。主翼武装も復活し7.7ミリ機関銃が左右に二丁ずつ計四丁が装備された。これで7.7ミリ機関銃が六丁になった。対地攻撃では威力を発揮すると思われる。

 簡易ながら対地照準器を計器板左上、照準器の横に設け爆撃の参考になるようにした。

 重量が増し、離着陸時の安全を確保するため完全爆装時は増槽無しとされた。



「本日もサイゴンまでの陣地潰しか」


 ミッキーがぼやく。こいつボヤッキーと渾名を付けてやろうか。慎二は考えた。とても言い考えと思う。


「そう言うな。敵機もほぼ居ない。対空砲火も弱い。そこそこ安全だ」


「絶対安全がいい」


「訓練でも絶対安全は無いからな。それに俺たちは上空援護だ。対地攻撃は四中隊の役目だ」


「新しく配備された中隊な。機体が重いんで運動性は落ちたらしいな。主翼の機関銃が弾込みで重い。機体の切り返しがこいつに比べると大変だ」


「こっちは機首武装だけだしな。それよりもな、駒井整備長に聞いたんだがまだ後四百機近く日本に来るらしい」


「あ~。あの五百機作る法律か。使えないんで日本に格安で新品機体を譲ったら真面目に働いていると。後で調べに来るんじゃ無いのか」


「だから調べられてもいいように、ほとんど全機最前線だそうだ。数機は残すが例の装置は付けないそうだ」


「まあアレ無しでも二千メートル以下なら何とかなるし」


「対地攻撃機に使っていると言ってあるからな。新しい機体は全部今度の対地攻撃仕様だ」


「じゃあ、純然たる戦闘機はこいつだけか?」


「大事にしよう。結構いい機体だ」


「Yes、That's right」


「俺たちには一式戦やキ44は廻ってこいないしな」


「まあ、多目的に使うならこいつが良い。防弾もしっかりしている。地上から7.7ミリで撃たれてもたいした怪我はしない」


「整備長が怒るけどな。修理が面倒だと言って」


「仕事なんだから仕方が無い」


「そりゃそうだ。お!下では仕事が終わったぞ。お帰りだ」


「最後を付いていけばいいし、楽だな。今日も敵機は現れず。お散歩だ」


「疲れなくていい」


 外国人パイロットが負傷、長期離脱を余儀なくされたために外国人小隊に組み込まれた風杜慎二一飛曹はミッキーとバカを言いながら帰投するのだった。後で編隊長に怒られたのは言うまでも無い。



 その頃仏印派遣軍は、道路を閉塞するトラップを慎重に排除しながらゆっくりと進んでいた。焦る必要は無い。制空権は我にあり、カムランの地上兵力も砲兵部隊は壊滅状態という報告が来ている。

 少しでも進みたがる部隊の統制を取るのに反って手間取るくらいだ。

 最前線を進む歩兵を支援する戦車と装甲車が頼もしい。

 だが、フランス軍も意地を見せた。なんでこんな奴がここに有ると言うような戦車をぶつけてきたのだ。


 それはいきなりの発砲だった。ニャチャンを過ぎカムランまでおよそ十キロの海岸から離れたところだった。七十五ミリ野砲と思われる砲撃だった。始めは、まだ生き残っている奴がいた程度の認識だった。取り敢えず部隊を散開させた。それまでにかなり被害が出ている。

 どこに陣地を作っているのか。砲撃の方向が時々違い、複数の砲が有ることを窺わせた。

 それが間違いだったのは、偵察部隊が帰ってきてからだった。

 偵察に出ていた部隊によるとシャールと思われる戦車が中隊規模の歩兵と共に隘路に作った陣地に居るという。

 シャールがいた。フランス陸軍の装備に有ると言う情報は有った。第一次大戦の戦車だ。だが仏印に来ているという情報は無かった。あいにく天気の悪化で航空機の援護が出来そうに無いと言うことだった。

 それまでも機会は有ったが航空攻撃の可能性が有り、戦闘を避けていたのだろう。

 

 戦車部隊が前進を始めた。戦車には戦車と言う事で派遣軍も戦車を出した。これまで撃つことも無く歩兵の後を着いてきただけだった。戦いたいのだろう。

 相手は第一次大戦の戦車だ。楽勝なはずだった。

 歩兵達はもう戦車が行ったので安心したような顔をしている。それは間違いだった。

 九十七式チハ中戦車が次々と撃破された。

 チハは今の日本陸軍主力戦車で前面装甲厚四十ミリ、砲塔正面は更に十ミリ厚い。それが撃破されるのだ。

 シャールの横からは位置的に砲撃が出来ず、正面戦闘を強いられた。チハ五両が撃破された時点で戦車隊は後退。チハの四十七ミリ戦車砲では五百でも貫通出来ないという報告が寄せられた。

 そこで急ぎ後方から九〇式野砲を運んで勝負となった。十センチカノン砲は派遣軍には装備されておらず、師団砲、連隊砲で運用されている九〇式野砲が最大威力の砲だった。

 そこで問題になったのは、どうやって撃破可能な距離まで野砲を持って行くかだった。こちらは薄い防楯が有るだけだが相手は重装甲の戦車だ。

 困った。戦車が通用しない。撃破出来る砲は近寄るのも難しそうだ。

 

 幸い海岸から十八キロである。海軍に頼んだ。二十センチ砲で吹き飛ばして貰うのだ。

 海軍は愛宕を派遣した。海岸の地形が悪く複数艦の派遣は事故の危険が大きかった。それに小さい陣地で有り射撃管制上の問題からも一隻で十分と思われたからだ。

 付近の海岸は浅瀬や小島が有り安全のため目標から二万五千メートルと言う遠距離での発砲となった。


 愛宕が発砲した。

 



次回、また一週間くらい向こうかなと思います。

フランス戦車はシャール2Cです。四十七ミリ砲ではね。

この世界のチハは、チハ改に近いです。



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