19.奇跡
「ただいまー・・・」
イオンから実家まで運んできた、重たい荷物を玄関に置き、靴を脱ぐ。
妹はニート君を抱っこしたままサンダルを脱ぎ捨て、速攻でリビングへと消えた。
・・・・・ここまでの道のりを、
妹はニート君を抱っこしたり、
ニート君が歩きたがったら降ろして、手をつないで歩いたり一緒に鼻歌を歌ったりしていた。
それを数歩後ろから恨めしそうに歩いていた俺。
時おり、ニート君が俺の足の間をにゅんにゅんうろついていたのだけが、癒しだった。
「っあっっらーーーーーーーー!!!
いらっしゃーい。ニート君!!!!
今日はおいしーいおいしいっオサシミがあるのよー!!!
ほらおいでっ!!
あら、あらあら、ひんやりして気持ちいいわねぇ!ニート君!
まるで水饅頭みたいだわぁ。
・・・・ほらっお父さーん!!!
お父さんっ!クリオネ!!!
ニート君よニート君!!!!!」
家の奥から、母ちゃんのデカイ声がはっきりと聞こえてくる。
母ちゃん、いったい何デシベル出してんだ。
まじで、近所迷惑だろ。
リビングに入ると、ちょうど親父が恍惚の表情で、クリオネ君を抱き上げるところだった。
ニート君は、少し緊張している感じがするな。
『に、、、?にーー。にーーー?』
鳴き声がか細く、いつものようなキレがない。
『にっにゅーーーーーーー!!!にーーーーーにーーーーーー!!!!!』
ニート君が俺を確認すると、親父に抱きしめられながらも一生懸命俺の方に手を伸ばしている。
ニート君、最高。
「おお、、これがクリオネかぁ。」
「「ニート君だってば、お父さんっ!」」
母ちゃんと妹の声がハモった。
『ににゅーーーーーーーっ!!!』
「おお、おお! かわいいなぁ。にーと君。・・ほれっ」
親父、渾 身 の高い高い。
『にゅっ?!にゅーーーー♪♪♪』
ニート君、高い高い好きだからな。
ま、俺のほうがレベル高いぜ。
後でやってあげるかならな、にーと君!
「ヤダっ!お父さん!!ぎっくり腰でしょっ!!!」
まじか。親父、、大丈夫かよ。
無理しやがって。。
「・・・?いや。なんともない。
・・ぎっくり腰、治っちゃったかなぁ?お父さん。」
なんだって?!
・・・・・・・
ニート君を高い高いすると、ぎっくり腰も治るんだな。
ニート君、すげぇ。
しょっぱなから我が家に奇跡を起こすニート君だった。




