13.ボスとの対峙
部長に喫煙所に呼び出された。
付き合い用のタバコを出し、一緒にプカプカと吸っていると、
「・・山田君さあ、最近帰り早いよ、ね?」
きた。
きたきたきたきた。
いつか注意されると思ったんだけど、思ったより早く来たな。
「は、あの、業務時間中に終わらせるように頑張ってるんで。」
「いーやいやいや!
別にね、山田君がサボってないことくらい知ってるよ?
そぉーーーーじゃないんだよなぁぁ。」
「は、」
「やるべきことやって、終わったら帰る!
メリハリっ! い〜い事じゃな〜い!
・・だけどさぁ、、うちって残業するの当たり前みたいになっちゃてるとこあるじゃない?
そういうの直したいって社長もずっと言ってるんだけど、なかなかさぁ」
「・・・」
「そんでさ、残ってる人が多い中、早く帰ると目立っちゃうこともあるじゃない?
オレはね、その辺を心配してるの。」
「はぁ、、ですよね。。そういう事ありますよね。」
・・・終わった。
部長の言いたい事はこうだ。
みんな残業してるから、お前も残業しろってこった。
クソみたいな事を言われているが、圧迫的に行ってくる上司も他部署にはいるから
うちの部長は人道的なほうなんだ。
「でもさぁ、いっても今週に入ってから急にじゃない?山田君の早帰り。
だから理由とかもあるんでしょ?」
早帰りって・・・くそぉ、、、
「・・・はい、・・・あの、実は私、最近クリオネを拾いまして、、、あの、その世話で、、」
部長の目が変わった。
「へぇっ!!!???
クリオネ!?
クリオネ拾ったの?山田君!?」
「は、3日ほど前に。・・・それD」
「っかぁーーーーーーーーー!!!!!
そうだったかぁ!!!!・・・・っかぁーーー!
そういうことかぁ!
クリオネじゃぁなぁ!・・・っかぁーーー!!」
「仕事に支障は出ない様に、昼休み返上して残業しなくてもだいじょ」
「っあ!いいから!!
もういいよ、山田君!
ごめんね!」
「やっ、すいませ」
「いっやーーー、オレはね?!
なぁーんかあると思ったんだよ。
ちゃんとした理由がさ。
だけど高田とか浜野とか、ほらあのへんがうるさくってさ。」
「あ、そうなんD」
「あーー、言っとく、言っとく!
あいつらにちゃんとオレから言っとくから!
悪かったね仕事中!!」
「いえ、そんN」
「だーーーーいじょぶだから!ほんと、
頑張ってね!クリオネっ!!」
豪快に部長に肩を組まれ、バシバシ叩かれたのち、連れ立って職場に戻った。
喫煙所から職場までの道のりは、部長の飼ってる犬と俺のクリオネ(ニート君)の話だった。
職場に入ったとたん、部長が両手を叩きながら大声で
「 山田君さぁ、クリオネ拾ったんだってさぁ!!! 」
と言った。
職場は一瞬、静まり返った後
「「「「 わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!!! 」」」」
と盛り上がった。
その日から俺は、職場公認でだいたい定時に帰れるようになった。
正直、
クリオネ、すげぇ
ってマジで思った。




